大衆闘争についてのノート 宮本百合子 Guide 扉 本文 目 次 大衆闘争についてのノート  神奈川県足柄郡下足柄村十三部落   七月十三日夜  小田原町の有力者が人をひくために小田原町会、足柄村会を動かし、足柄村のかんがいに一番大切な用水土地を掘る! そして、上水道に向けることにする。  あたみへの直通道路京浜国道の延長のイギその軍事的性質  飯田岡、蓮生寺、堀之内の青年幹部が主唱、部落会議。蓮生寺境内で富永消防組の小頭会議をひらき、シュー撃ときまり、警鐘を乱打し、ガソリンポンプと四台の手押ポンプを押し出し試掘事務所をめちゃめちゃにし、中山村長宅をおそった。  三百数十名のケン挙。  試掘中止の歎願書。ハネつける。村民は大衆行動にたち、先頭隊として大のこぎり隊、小のこぎり隊を編成、駐在所と警察の連絡電話を切り、試掘事務所に藁をつんで火をつけ、これを合図に「火事だ」警鐘を乱打し、村民は消防着で武装して大衆行動をソシキし、試掘不可能にした。これで三百余人とられ、野菜作物は四割だめ、麦納入不能。  毎日、女連が押しかけて半数を奪還した。  この直後ケン庁は調停にのり出し、カンガイポンプ二台でおさめようとしたがきかず、村会に圧力を加えて採決反対を決議さす。小田原では又やりはじめたので、試掘を中止させ、闘っている。  ブル新は足柄村民と小田原町民との対立だとデマるが、小田原八千の失業者は農民を支持している。  神奈川地区では、「米をよこせ、救済補助金を出せ! 種子をよこせ。排水ポンプをつけろ。救貧土木事業を起せ! 借金取立を待て。小作料、税金の免除、ギセイ者の即時釈放、家族の生活保証」のスローガンで、隣村との共同闘争、全農全会の拡大。漁民の組織化のために。  革命的大衆団体は神奈川地方団協、全協地区委員会は湘南小地区のモップル、××組合、××××は協同して実況調査。第一回の訪問隊をソシキ。  隣近六ヵ村の人々をといて共同闘争に立たせようとしている、農村ヤチェイカの確立の方向  千葉茂原町の演習宿泊拒絶  演習中の野宿反対  人家に迷惑をかけず宿やにとめろ  宿舎のない演習なんかやめたがいいんだ。 ○江東地区の一人、暗闇夜、自転車をとばして地区のデンタンを電車・乗合自動車のうしろに十数枚はりつけた。 ○大衆闘争の中から大衆闘争の戦術を学べ。 ○国鉄と麻布三連隊の兵士  赤坂一レンタイと市電労働者の共同懇談会が持たれた。 ○青年印刷工 六十九銭ぐらい。  一人の仲間は、「活字中の漢字という漢字を知って居り」その人を先にたてて皆のあつまる会をつくり、会の金を出すためにその男はゴミ箱から緒の切れた板うらを出して来てはいた。会は雑誌とデッドボールと、バリカンとカミソリを買い要求に応じて全工場にグループをつくり、大衆的に組織して行った。  十二月の忙しい最中。毎晩十一時、十二時まで。夜勤料は四割引、十時間で六時間分である。それで体をこわすような労働強化はやらぬことときめている。文選十六人は彼を入れすぐ立ち、六時の夕飯三十分の休みに、文選十六人はベン当箱をもって一つところに集り、きめた以上の仕事はしないこと、きめた以上は監督のところへ突かえしにゆき残業させぬようにしようと決議して就業。「ガンばれ」「うら切るとゲンコだぞ」「皆でカントクを睨みつけろ」等文句を綴って活字の一列はカエシをしている皆の間に、順にまわされた。十一時に終業すると、文選場で一同勢ぞろいをして、カントクのところへ残りの仕事をひっつかんでデモで押しかけた。これでかって、十八人になり、二人の文選長も入った。(文選場は青少年のみ)  次に夜業四割引反対の闘争のために、全員をまき込むことを考え、親睦会の自治化をはかる。幹事改選に壮年のSを当選させる。そして、大衆的懇談会で革新有志二十人をつくる。 国鉄。 (一) 一般に官業だから政府のつぶれぬうちは従業員の生活は保証されていると考えている。十五ヵ年間以上つとめると一時金なら二千円以上   年金なら一時千円で以下毎年金が下りるので、おとなしい専一。   娯楽設備一年二回観劇。改造さえよめぬ。労救に関係出来ぬ。 横浜ドック   従業員二千人。ギマン政策として日給三円以上は二十銭、二円以上十銭、二円以下六銭のね上げをしたが、日給を時間制にしたので、仕事がないと一文にもならぬ。 底本:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社    1981(昭和56)年5月30日初版発行    1986(昭和61)年3月20日第2版第1刷発行 初出:「多喜二と百合子 第三号」多喜二・百合子研究会    1954(昭和29)年4月発行 入力:柴田卓治 校正:磐余彦 2004年2月15日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。