歓喜
中野鈴子


思っただけでも胸がおどる

裸一貫のわたしらが堂々と乗りこんでゆき


おお

このわたしら

わたしらのタコだらけの手

真黒に焼けたおでこ


ただ一つの心臓

二本の足

二本の腕に

あらゆる権力と最上の美しさを打ちたてる日

働いて笑える

働いて肥える

おお

その日、その世界よ

思っただけでも胸がおどる

底本:「中野鈴子全詩集」フェニックス出版

   1980(昭和55)年430日初版発行

入力:津村田悟

校正:夏生ぐみ

2018年1124日作成

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