空林
三好達治


山毛欅の林 楢の林 白樺の林 ひと年私は山に住ひ 彼らの春の粧ひと

彼らの秋の凋落を見た けれども彼らの裸の姿 雪の上のたたずまひこそ

わけても私の心にしみる 何故だらう そのことわけを問ひながら

今日もまた林に憩ふ やうやく私のものとなつた この手足この老年が珍らしく

底本:「三好達治全集第一卷」筑摩書房

   1964(昭和39)年1015日発行

底本の親本:「定本三好達治全詩集」筑摩書房

   1962(昭和37)年330

初出:「文學界 三卷五號」

   1936(昭和11)年5

入力:kompass

校正:大久保 知美

2018年828日作成

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