三好達治



拔足差足 忍び寄つた野兎は 蓆圍ひの隙間から 野菜畑に跳びこんだ

とたんに係蹄わなに引かかる 南無三 とんぼがへりを二つ三つ

力まかせに空を蹴る 月を蹴る 月は 山の端にいる

やがて兎は 寢てしまふ 白菜たちが眼を醒す

底本:「三好達治全集第一卷」筑摩書房

   1964(昭和39)年1015日発行

底本の親本:「定本三好達治全詩集」筑摩書房

   1962(昭和37)年330

初出:「改造 一八卷一號」

   1936(昭和11)年1

入力:kompass

校正:大久保 知美

2018年426日作成

2019年810日修正

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