(ダダイストが大砲だのに)
中原中也



ダダイストが大砲だのに

女が電柱にもたれて泣いてゐました


リゾール石鹸を用意なさい

それでも遂に私は愛されません


女はダダイストを

普通の形式で愛し得ません

私は如何せ恋なんかの上では

概念の愛で結構だと思つてゐますに


白状します──

だけど余りに多面体のダダイストは

言葉が一面的なのでだから女に警戒されます


理解は悲哀です

概念形式を齎しません

底本:「新編中原中也全集 第二巻 詩」角川書店

   2001(平成13)年430日初版発行

※底本のテキストは、著者自筆稿によります。

※()付きの表題は、作品の冒頭をとって、底本編集時に与えられたものです。

※()内の編者によるルビは省略しました。

入力:村松洋一

校正:きゅうり

2019年830日作成

青空文庫作成ファイル:

このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。