58号の電車で女郎買に行つた男が)
中原中也



58号の電車で女郎買に行つた男が

梅毒になつた

彼は12の如き沈黙の男であつたに


腕 々 々

交通巡査には煩悶はないのか

自殺せぬ自殺の体験者は

障子に手を突込んで裏側からみてゐました

アカデミッシャンは予想の把持者なのに……

今日天からウヅラ豆が

畠の上に落ちてゐました

底本:「新編中原中也全集 第二巻 詩」角川書店

   2001(平成13)年430日初版発行

※底本のテキストは、著者自筆稿によります。

※()付きの表題は、作品の冒頭をとって、底本編集時に与えられたものです。

※表題は底本では、「(58号の電車で女郎買に行つた男が)」となっています。

入力:村松洋一

校正:きゅうり

2019年222日作成

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