一度
中原中也



結果から結果を作る

飜訳の悲哀──

尊崇はたゞ

道中にありました


再び巡る道は

「過去」と「現在」との沈黙の対坐です


一度別れた恋人と

またあたらしく恋を始めたが

思ひ出と未来での思ひ出が

ヲリと享楽との乱舞となりました


一度といふことの

嬉しさよ

底本:「新編中原中也全集 第二巻 詩」角川書店

   2001(平成13)年430日初版発行

※底本のテキストは、著者自筆稿によります。

入力:村松洋一

校正:鳩

2017年1025日作成

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