詩論
中原中也
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芸術とは、喩へば金鉱発掘の如きものだ。金鉱を発掘する人は、親や妻子より遠く、山中に分け入るのだ。そのやうに、芸術とは、自分自身に忠実であることだ。
何を描くべきか?──描くべき何物もない! 芸術とは、自分自身の魂に浸ることいかに誠実にして深いかにあるのだ。即ち自分自身であるための誠実が自らなる基準となつて、折にふれて歌ひたくなるものの謂である!
自分自身であるといふことは、嘘をつかないことであり、自分自身であることは意志的であることである。
そして人が、自分自身であること、徒らに迎合的でないことではないか? かの造型性とは!
智識でも慈善事業でも其の他何物でもない、断じてない!
芸術とは、自我を愛することの、誠実であることの、褒賞である!
底本:「新編中原中也全集 第四巻 評論・小説」角川書店
2003(平成15)年11月25日初版発行
※底本のテキストは、著者自筆稿によります。
※()内の編者によるルビは省略しました。
※底本巻末の編者による語注は省略しました。
入力:村松洋一
校正:noriko saito
2015年9月1日作成
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