感想
中原中也


 地方の詩のグループも多いことだが、どういふものか、ずつと以前から大連と神戸にだけ面白いものが見られるのだつた。京都は嘗つて小生自身二年間ゐて、詩人にとつては有難い土地だと思つてゐるので、京都あたりからもつと面白いものが出てもよかりさうなものだと、かねがね思つてゐたが、仲々出なかつた。所が今年になつて「新生」を受取るやうになつてから、漸く出たなとおもつた。

「新生」がいいのは、第一に素直な点である。そしてまた肉感的な濃密さがいい。なんだか瓜の肌でも見るやうだ。ただ此の上とも希望したいことは表現の完璧といふことである。つまり簡潔といふことである。このことが果される時に詩は初めて「作品」として通用するのだと思ふ。

底本:「新編中原中也全集 第四巻 評論・小説」角川書店

   2003(平成15)年1125日初版発行

初出:「新生」

   1937(昭和12)年1月号

※底本のテキストは、筆写稿によります。

入力:村松洋一

校正:noriko saito

2015年217日作成

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