錢形平次捕物控
怪傳白い鼠
野村胡堂




「親分は、本當に眞面目まじめに聞いて下さるでせうか、笑つちや嫌で御座いますよ」

やぶから棒に、そんな事を言つても判りやしません。もう少し順序を立てて話して見て下さい。不思議な話や、變つた話を聞くのが、言はゞ私の商賣みたいなものだから、笑ひも何うもしやしません」

 錢形の平次は、凡そ古文眞實くそまじめな顏をして、若い二人の女性に相對しました。捕物の名人と言はれてゐる癖に、滅多に人を縛らないから、一名縮尻しくじり平次ともいふ、讀者諸君にはお馴染なじみの人物です。

 二人の女といふのは本町三丁目の糸屋の娘おひなと、その女中のお染、お雛はまだ十七ですが本町小町といはれた美しさ。本當にき通るやうな江戸前の娘で、お染は平次の女房お靜のお針友達で、この時は二十一二、少し縁遠い顏立ですが、その代り口の方は三人分も働きます。

 根岸の寮に居るおひな主從しゆじうが、何か思案に餘ることがあつて、錢形の平次のたくを訪ねたのは、若菜時のよく晴れた日で、久し振りのお靜に逢つても、ろくに話もせずに、いきなり平次に引合せて貰つて、こんな調子に切り出したのでした。

「ね、親分。親分はお化とか幽靈とかいふものが此世にあると思ひますか」

 とお染。おぼんのやうな顏を緊張さして、果しまなこで詰め寄るのを見ると、義理にも幽靈がないなどとは言はれさうもありません。

「あるとも言ひ、ないとも言ふが、私は見たことがないから何とも言へませんよ」

 藍微塵あゐみぢんあはせを、膝が破れさうに坐つて、此時代では何よりの贅澤とされた銀の吸口すひくちのチヨツピリ付いた煙管で煙草盆を引寄せる平次は、若くて好い男ながら、何となく捕物の名人らしい貫祿くわんろくそなはつて居ります。

「そのお化が出るんですよ、親分」

「何處へ?」

「お孃樣と坊ちやまがいらつしやる、根岸のれうに」

「へエ──少しくはしく話して見なさるがいゝ。岩見重太郎のやうに、乘込んで退治といふわけには行かないが、事と次第によつちや、お化けを縛るのも洒落しやれて居るだらう」

「親分、冗談や、こしらへ事ぢや御座いません。これは、現に、私もお孃樣も見た話で、その爲に坊ちやまは、熱を出したり、引付けたりする騷ぎですよ」

 お染は自分の雄辯を試みる機會を狙つて居たやうに、勢ひ込んで話し始めました。

 本町三丁目の糸物問屋、近江屋あふみやといふのはその頃の萬兩分限の一人ですが、二三年前に主人あるじが亡くなり、續いて一年ばかり前に、母親が死んで、今は、主人の弟、友二郎が支配人として、店の方一切を取仕切り、娘のおひなと、その弟で四つになつたばかりの富太郎に、女中のお染と下男の六兵衞を附けて、根岸の寮に置き、もつぱら身體の弱い富太郎の養生をさせて居りました。

 友二郎は四十年配、先代の實弟じつていで、まことによく出來た人間ですが、何分店の方が忙しいので、滅多に寮を見舞つて居るひまもありません。それでも、三日に一度、七日に一度づつは、泊りがけにやつて來て、めひのお雛の美しくひ立つのと病弱な富太郎が、少しづつでも丈夫になるのを見て歸りました。

 お雛には先代が取決めた重三ぢうざといふ許婚いひなづけがあります。これは遠縁の者で、奉公人同樣店で働いて居りますが、お雛より八つ年上の二十五で、もう愚圖々々しては居られないのですが、何分お雛がまだ若いのと、母親が死んで一年も經たないので、祝言のさかづきをするわけにも行きません。併し、根岸の寮は無人なので、叔父の友二郎に差支さしつかへのある時はなるべく行つて泊まることにして居ります。

 女のやうに物優しい働き者で、お雛の叔父の友二郎にも信用があり、ことにお雛の弟の富太郎は、重三でなければ夜も日も明けないやうな騷ぎをしますが、何分店の方が忙しいので。毎晩根岸まで行つてやるわけにも行きません。

 おひなは娘らしい恥かしさのせゐか、重三とはろくに口もきゝませんが、いづれ母のいみが明けさへすれば、改めて祝言をさした上、別に小さい世帶でも持たせることになつて居りますから、嫌ひといふ程ではなく、從つて默つてその運命を待つて居る強でせう。

 かうして日は無事に過ぎましたが、何時の頃からか、總領の富太郎はむしがひどくなつて、夜分にひどくうなされたり、物驚きをしたり、時々は引付けたり、次第に糸の如く痩せ細つて、頼りない有樣になつて行くのでした。

「坊ちやまにお訊きすると、夜中にお化が出る、とかう仰しやるんですよ。染や、何とかしておくれ、重三、重三──と、時々はむづかりなさいますが、どんなお化が出るのやら、一向見當が付きません」

 お染はかう言ひながらも、をさない富太郎が、目に見えぬあやかしに惱まされて、夜と共におびえて泣き騷ぐ怖ろしさを思ひ出したものか、肥つちよの肩をすくめて、ゾツと身を顫はせました。

「その坊ちやんは、誰と一緒に寢て居なさるのかい」

 と平次。

「いえ、かんの強いお子さんで、そんなに物驚きをなさりながらも、どうしても誰とも一緒にお休みになりません。仕方が御座いませんので、お孃樣か私が、床を並べて、お佛壇ぶつだんの前に休んで居ります」

「お佛壇の前?」

「え、それにもわけが御座います。去年御新造樣がお亡くなりになる時、大事なものは私のたましひと一緒に佛壇の中に入れてあるから、お孃樣かお坊ちやまは必ず此處で休むやうと仰しやつたので御座います」

「フーム、大分話が面白さうだな。ところで、その坊ちやんがおびえるのは毎晩の事かい」

「いえ、時々で御座います」

「番頭の友二郎さんの泊つて居る時とか、手代の重三さんの泊つて居る時とか、決つては居ないのか」

「それが不思議で御座いますよ、親分。重三さんの泊つた時は何ともなくて、番頭さんの泊つた時に限つて、お坊ちやまはおびえなさるんです」

「──」



「お坊ちやまのせ細るのを見て居ると、お氣の毒でお氣の毒で、とても我慢が出來ません。お孃樣もひどく御心配なすつて、さう言つては惡いが、明神樣をだしに使つて、お願ひに上がつたやうなわけで御座います。親分、何とか工夫をしてやつて下さいませんでせうか」

 達辯たつべんにまくし立てるお染の蔭から、高貴な感じのするほど美しいお雛が、八丈のたもと爪繰つまぐるやうに、おど〳〵した顏で平次を見守ります。

「それは驚いたな、お染さん。しかし、たつたそれだけの話なら岡つ引へ來るより、醫者を頼むのが順當ぢやあるまいかネ。私におばけを縛らせるより、蟲下しを二三服呑ませた方が手つ取早く利きはしないかい」

 平次はさして驚く樣子もありません。

「いえ、親分。それだけなら、わざ〳〵此處までは參りません。四つになつたばかりのお坊ちやまのむづかるのは、當り前と言へばそれまでで御座いますが、捨て置き難いのは、お孃樣にも何か變なことばかり付きまとひます」

「と言ふと──」

「家の中に、お孃樣の命を狙ふ者があるので御座います。一度はお孃樣の御飯の中に、石見銀山いはみぎんざんの鼠取りが入つてゐたのを、重三さんが見付けて大騷ぎをしたことが御座います」

「重三──といふと、お孃さんの許婚いひなづけの?」

「えゝ」

 お雛はすつかりあかくなつて、お染の蔭に隱れて了ひました。

「どうして鼠取りが御飯の中へ入つて居ると判つたんだらう」

「それは判りませんが──何でも其前の晩は珍らしく番頭さんも重三さんもれうへ泊つて、朝はお二人にお孃樣と坊ちやまと四人で御飯を召上つておいでで御座いました。重三さんがいきなり、お孃樣の御飯が、變な色だから、と急に止めなさるんです」

「フーム」

「試しに猫にやつて見ると、猫は直ぐ死んで了ひました。御飯の中には、石見銀山の鼠取りが、うんと入つて居たんです」

「御飯は誰が炊くんだ」

「まア、親分。まさか私がそんな事をするとは思つていらつしやらないでせうね」

 肥つちよの癖にお染は女だけに、矢張り妙に氣が廻りますが、

「お前さんなら、石見銀山の鼠取りなどを入れるより、お孃さんをひねり殺す方だらう、私はそんな事を疑つてはゐない、安心しなさるがいゝ」

 さう言はれると、からかはれ乍らも、人の好ささうなお染は釋然しやくぜんとして了ひます。

「その他、お孃樣だけそとに居る時、物置の材木が倒れて來たり、少し薄暗くなつてから歩くと、變な男がつけて來たり、そりや怖いことがあるんです。親分、私のやうな物の判らない女が考へても、お孃樣とお坊ちやまを何うかしようといふ恐しい人間が蔭で糸を引いてるやうな氣がしてなりません。御苦勞でも、ちよいと、根岸までお出かけ下すつて、せめてお化の出ないやうな工夫だけでもしてやつて下さいまし。さうでもして頂かないと。何んな事になるかわかりません」

 お染の熱心な調子は、到頭平次を動かして了ひました。

「よし、はだいでみよう。ところで、今晩は外によんどころない用事があるから、明日出かけるとして──」

「親分、今晩は番頭さんが寮へ來なさる晩で、又どんな事があるか心配でなりません。出來ることなら、私共と一緒にいらしつて、寮へ一と晩泊つて見ては下さいませんか。お靜さんへは、私がよくお願ひしますから」

 お染はなか〳〵引きさうもありません。

「さうも行かない──かうしよう。家にゴロゴロして居る八五郎、大してかしこい人間ぢやないが、その代り毒のない、話の面白い男だ。それを連れて行つて、今晩一と晩用心棒にするがいゝ。智惠は大したことはないが、力だけは人の二人分もある」

「──」

 お染は何かに落ちない顏をして居りますが、さすがにこの上は爭ふこともなりません。

「ガラツ八、其處に居るのか」

「へエ──」

「お孃さんとお染さんについて、根岸まで行つてくれ。今晩は向うへ泊るんだ」

「へエ──、あまり智惠のねえ人間でも役に立ちますかい」

「馬鹿ツ、立ち聞きして居たのか」

 と平次。

「さういふ譯ぢやねえが、何しろお屋敷が廣いから、あんな大きな聲で話しや、何處の隅つこに居たつて聞えますよ。岡ツ引はよく人の話に氣を付けて聞くがいゝつて、日頃親分も言ひなさるし──」

あきれた野郎だ」

もつとも、あつしの惡口がはじまりさうになつた時は、聞いちや惡からうと思つて耳の穴へ指を突つ込んで見たんだが、こいつは長く續きませんや、氣色が惡くて──」

「馬鹿だな、お前は。まア何でもいゝやな、お孃さん方と一緒に出かけるんだ」

「へエ──」

「ね、親分。八五郎さんとかを一緒に行つて貰つては、お化にも惡人にも用心させるから、今晩そつと來て、寮へはひり込んで頂けないでせうか」

 とお染。

「成程、それも面白からう。さう言つちや何だが、お染さんは思ひの外軍師ぐんしだね」

「あれ親分、冷かしちやいけません」



 その晩、ガラツ八の八五郎が、根岸の百姓町にかゝつたのは亥刻よつ(十時)を少し廻つた頃、御行おぎやうの松の手前を右へ折れて、とある寮の裏口へ、忍ぶ風情に身を寄せました。

 平次に冷かされつけて居る狹いあはせ彌造やざうを念入りに二つ拵へて、左右の袖口が、胸のあたりで入山形になるといつた恰好は、『色男には誰がなる』と、言ひたいやうですが、四方あたりが妙に淋しくて、住む人も少いせゐか、ろくな犬も吠えてはくれません。

 八五郎は、裏口へ寄り沿つたまゝ、彌造の中から取つて置きの拳固げんこを出して、そうツと撫でるやうに、二つ三つ雨戸へさはつて見ました。それを待つて居たやうに、そつと中から開けたのは、寢卷姿のお染、まだ寢亂れては居ませんが、まづいながらも妙に娘らしくなまめきます。

「八五郎さんかい?」

「うむ、用意は?」

 引入れて雨戸を締めると、中は眞つ暗。手と手を握つた二人は、遠い廊下の有明を目當に、逢曳あひびきらしい心持で、奧へ辿たどりました。

「まだかい、お染さん」

「シツ、二階には番頭さんが泊つて居る、靜かにしておくれ。お前さんなんかを引入れた事が知れると大變なことになるよ」

「人間はそれつ切りか」

「裏の方には、爺やの六兵衞が寢てますが、これは離れて居るし、寢酒がきいて居るから、眼なんかめはしない」

「重三とかいつた手代てだいは?」

「今晩は本町の店に泊つて居るし、店卸たなおろしで忙しいとさ」

 これだけ話して居るうちに、廊下は盡きて、先代が信心と物好で、奧の一と間へしつらへた、大佛壇のある部屋の前に着いて居りました。

「お孃樣」

「お染かい」

 中から、これも待つて居たやうに、薄明りの廊下の中にすべり出たのは、美しいとも何とも、言ひやうのないおひなの寢卷姿。疋田ひつた鹿長襦袢ながじゆばんに、麻の葉の扱帶しごきを締めて、大きい島田を、少し重くかしげた、らふたけた姿は、ガラツ八が見馴れた種類の女ではありません。それはあまりに美しく、惱ましい姿だつたのです。

「八五郎さん、お坊ちやまが眼をお覺しになると惡いから、ソツと入つて樣子を見て居て下さいよ。今晩は番頭さんが泊つて居るから、きつと又、何か始まるに相違ない──」

「──」

 ガラツ八は默つて部屋の中へはひりました。六疊ばかりの佛間、正面に見事な大佛壇おほぶつだん、これは掛金がかゝつて、締つて居ります。その前に敷いた床が二つ。一つには、四つになる富太郎がスヤスヤと眠り、一つは今おひなが脱け出したまゝ、少しなまめかしく、紅い裏のかい卷をはね返して居ります。

 枕許には、水差しと湯呑、それに、有明の行燈あんどんが一つ、一本燈芯で、薄明くいてゐるといつた寸法でした。

「寒くなるか、睡くなつたら、その床へはひつて休んで下さいな。お孃樣がいゝつて仰しやるから」

 言ひ捨てゝ、お染は、お雛をうながすやうに、廊下を遠のきます。

「──」

 八五郎は暫く默つて、行燈の前に坐りました。富太郎はスヤスヤと眠つて居りますが、如何にも弱さうな少し發育の遲い子らしく、熱つぽい唇も、げた頬も何となく頼り少なく見えます。

 側に敷き放したお雛の床の、紅い掻卷かいまきの裏が、妙に惱ましく眼について、八五郎も暫くはモジモジして居りましたが、半刻はんときばかり後には、恐ろしい睡氣ねむけと、初夏の薄寒さにこらへ兼ねて、お染に言はれた通り、お雛の敷き捨てた床の中へもぐり込んで居りました。

 中には、まだほんのり娘のほとぼりが殘つて、若い女だけが持つ、不思議な分泌物ぶんぴぶつの香ひが、八五郎をくら〳〵させます。懷紙を掛けた、赤い箱枕はこまくら、八五郎には馴れない代物しろものですが、娘の髮の匂ひかみて、獨り者の八五郎には、これも妙に惱ましい代物です。

 暫く經ちました。何時いつともなくウトウトして居たらしい八五郎は、コトリといふ音に眼を覺したのです。何とも言へない不氣味さが、部屋の中一パイにみなぎつて、頭の上へ何やらノシかゝつて來るやうな心持がします。

 ひよいと見ると、何時、何うして開いたか、先刻まで嚴重に掛金をおろして居た佛壇の戸が、八文字に開いて、行燈の灯をうつした、金色の物具の中に、何やら、不氣味な青い物──。

 八五郎はゾツとして枕をそばだてました。まぎれもありません、佛壇の中、位牌ゐはいの前に現はれたのは、青黒い地に紅隈べにくまを取つて、金色の眼を光らせた、鬼女きぢよの顏なのです。

「怖い、怖いよう」

 不意に賑をさました富太郎は絶え入るやうに泣き叫んで、側に寢て居る筈の姉の懷へ飛込まうとしましたが、それが、思ひもよらぬ大男──しかも、あまり人相のよくない八五郎と見ると、二度目の驚きに、

「あツ」

 そのまゝ引付けて了つたのです。

「しまつた」

 八五郎は飛起せて子供を抱き上げましたが、眼を白黒にして、手足をヒクヒクさせるだけで、どうにもなりません。

 八五郎は、子供を元の床の上に置いて、夢中で廊下へ飛出しました。

「大變、お染さん、坊ちやんが引付けた」

 案内知つたお染の部屋の外から、もう、加減もなく聲を張り上げるのでした。



 おひなとお染が、八五郎と一とかたまりになつて驅け付けたのは、それからほんの三分、──昔の人の言ひやうをりて言へば、物の百も數へる間がありませんでした。

 開いたまゝの障子から飛込むと。行燈あんどんも床もその儘になつて居りますが、ツイ今しがたまで、ヒクヒクしながらも生きて居た筈の、富太郎の姿が見えないのです。

 床は二つとも空つぽ、その邊には、人間を隱すやうな場所もありません。

「富ちやん」

「坊ちやま」

 お雛とお染は、血眼になつてその邊を探し廻りました。

「あツ」

 佛壇の中を覗いて居たお染は、へびにでも噛み付かれたやうな悲鳴をあげて、飛退きます。

「何だ〳〵」

 見ると、八五郎も先刻驚かされた鬼女の顏──、行燈をげて近々と見ると、それは、佛壇の中にはあるまじき、恐ろしい鬼女の面に、かもじの毛まで冠せて、位牌ゐはいの前に据ゑてあつたのです。

「何うしたんだ、大變な騷ぎぢやないか」

 その時やうやく下の騷ぎを聞付けたらしい、番頭の友二郎は、少し寢亂れた恰好で、二階から降りて來ました。佛間のすぐ横は梯子段で、その上は友二郎の寢室になつて居たのでした。

「お坊ちやまが見えません」

「何?」

「あつと言ふ間に見えなくなつたんです」

 お雛とお染の説明を聞きながらも、友二郎の眼は、其處に立つて居る男──かつて見馴れない八五郎の上を離れようともしません。

「この方は何處の人なんだ」

「これは、あの、八五郎さんといつて、神田の錢形の親分のところにいらつしやるんです」

「さうか、何うして此處に居なさるんだ」

「あの、近頃こはいことばかり續くんで、私がお頼みして參りました。ツイ先刻いらしつたばかりです」

 お染のシドロモドロな辯解を、友二郎は世にも苦り切つた顏で聞いて居りましたが、御用聞、手先と聞くと、さすがに商人あきんどらしい弱さで、強いことも言へません。

「兎に角、手分けをして富太郎を探すんだ、家の外へ出るわけはないんだから。それから六兵衞は何うした?」

「呼んでも來ません。寢しなに番頭さんの御馳走で一杯やつたんですから、こんな事では眼を覺さないかも知れません」

 お染は飛んで行つて、家の反對側、お勝手の隣の下男部屋から、爺やの六兵衞を叩き起して來ました。どんなに眠かつたか、素肌の上に半纒はんてん一枚羽織つて、胸毛むなげと一緒に、掛守りと、犢鼻褌ふんどしが、だらしもなくはみ出します。

 年はもう六十恰好、お酒を頂くと、疳性かんしやうで、素裸でなければ眠られないといふ厄介な親爺、これも遠縁の飼ひ殺しで、こんな時役に立つやうな人間ではありません。

 それから手分けをして、家の中をすつかり探しましたが、富太郎は影も形もありません。曉方近くなると、出入りのとびの者や、近所の百姓衆も來てくれましたが、床坂を剥ぐやうに探しても富太郎が見えないのですから、これは神隱しに逢つたとでも思ふより外には考へやうもなかつたのです。

 一同がつかりして、元の部屋──佛壇ぶつだんの扉も、二つの床もそのまゝにしてある佛間へ引返しました。

「あツ、お坊ちやまが──」

 お染が一番先に、元の床の中に、樂々と寢かされて居る富太郎に氣が付いたのです。

「どれ〳〵」

 雪崩なだれ込んだ五六人、誰ともなく富太郎を抱き上げましたが、

「あツ、死んでゐる」

 驚いて床の上へ落して了ひました。可哀さうに富太郎は、この時もう冷たくなつて居たのです。



「右の通りだ、親分。こいつはあつしの手にをへねえ、根岸まで行つて見ておくんなさい」

 雨戸を開けると、翌る日の朝日と一緒に飛込んで來たガラツ八、飯を食ふ暇もなく一夜の恐ろしい冒險を報告しました。

「成程、そいつは念入りだ。ガラツ八兄さんぢや目鼻が明くめえ、飯でも濟ませて、一緒に行つてみるか」

「そんな暢氣のんきなことを言つて、親分」

「まア、いゝやな、逃げも隱れもする下手人ぢやあるめえ。それに、一番怪しい鬼の面は、ちやんと取つて置いてあらうし」

「それがいけねえ。親分、子供が死んでゐるのに氣が付いた時見ると、佛壇にも部屋の中にもめんはねえ──」

「さうだらう、それも筋書通りだ。さう來なくちや話が面白くならねえ」

 と平次。

「いやに解つたやうな事を言ひなさるが、親分。その面の行方が、此處から見通しだとでも言ふんですかい」

「まあ、そんなところだ」

「それぢや出かけませう」

「待ちなよ、飯を食はなきア、戰が出來ねえ──。それから二つ並べて敷いてあつた床は、その儘にしてあるだらうな」

「いゝえ、大勢はひつて來て、邪魔じやまつけだから、娘の方の床は上げて了ひましたよ」

「あ、しいことをした」

「何か、あの床の中に證據になる物でもあつたんですかい」

「うんにや、手前が好い心持になつてもぐり込んだといふ、紅裏べにうらの娘の掻卷かいまきと、その床が見て置きたかつたんだよ、後學の爲に」

「チエツ、いゝ加減にして下さいよ」

「さア、出かけよう」

 冗談を言ひながら仕度をした平次。ガラツ八を案内に、風薫かぜかをる根岸へやつて行きました。

 寮へ着いたのは、彼れこれ巳刻よつ(十時)、まだ何も彼もその儘ですが、物好き半分、近所の衆や店から驅け付けた人達で、家の中は押し返しもならぬ有樣です。

「ガラツ八、これぢや、おばけの方で驚いて逃げ出すだらう。用事のないものは、外へ出て貰はうぢやないか」

「合點」

 ガラツ八は勢ひ込んで飛上がると、

「さア、錢形の親分がやつて來た。下手人の疑ひを掛けられたくない者は、皆んな外へ出て貰はうか。その邊にマゴマゴして居ると、縛られるかも知れないよ」

 精一杯に張り上げると、驚いた有象無象うざうむざう雪崩なだれ落ちるやうに外へ飛出して了つて、後に殘つたのは、おひな、お染、友二郎、六兵衞、それに本店から驅け付けた手代のうち、一番縁故の深い、お雛の許嫁いひなづけの重三だけになりました。

「なるほど、疑はれてもいゝといふ人達ばかりだ。親分、何から手を付けませう」

 平次は默禮したまゝ、家の中へはひると、何より先づ佛間へ入つて、まだ小さい、床の上に寢かして、枕許にしきみと線香だけ立てたまゝの、富太郎の死體を見せて貰ひました。

 八五郎が言つた通り、四つにしては小さい方で、發育も智惠も遲れてゐるやうですが、姉のお雛に似て、玉子をいたやうな可愛らしさ。それが、顏一面に苦痛の色を浮べ、眼も口も大きく開いたまゝ、冷たくなつてゐる痛々しさに、物馴れた平次も思はず顏をそむけました。

 身體には針で突いたほどの傷もなく、黒血一つ溜つては居りませんし、のども滑らかに白大理石のやうに無傷で、絞め殺した跡などは夢にもありません。全身の美しい色澤いろつや、口を開いて、舌を少し出して居る樣子、苦惱の色こそありますが、毒殺でないことは、素人の平次にもはつきり判ります。

 何うして死んだか──又は殺されたか、これでは全く解りません。耳の穴や肛門こうもんまでも丁寧に檢査して見ましたが、どうしても、病氣で死んだか、引付けたまゝ死んだとしか思はれない樣子に、平次もさすがに腕をこまぬくばかりです。

 死體解剖などのない時代に、これ以上誰が見てもわかるわけはありません。平次は一たん裸にした子供に、元の通り着物を着せると、グルリと家の外を一と廻りして見ました。外から曲者の入つた樣子はもとより殘つては居りません。

 それから、家族の一人々々に逢ひました。おひなとお染は顏馴染かほなじみ、別に聞くこともありません。番頭の友二郎は、しつかり者の四十男で、金儲けや商賣には拔け目のないやうな人柄ひとがらですが、昨夜は少しばかり晩酌ばんしやくをやつて、亥刻よつ(十時)そこ〳〵に二階へ上がつた切り、便所へも起きなかつたといふのは疑ふ餘地もありません。

 爺やの六兵衞は、近江屋の遠縁の者で、年を取つてから轉げ込みましたが、先代や友二郎が同情して一生飼ひ殺しの寮番にして置く位ですから、別に害意のある樣子も見えません。若い時には隨分いろ〳〵の事もやつたやうですが、それだけ人間がめて、如才なくて、器用で、お雛や重三には好い相手だつたのです。若主人の坊ちやんが死んで、これはオロオロするばかり。

支配人ばんとうさんの晩酌を別けて頂いて何にも知らずに眠つて了ひました。知つてさへ居りや、こんなことをさせはしません」

 年寄らしく無駄なところで齒ぎしりをして居ります。

 お雛の許婚の重三は、十年越し店に勤めた忠義者で、女のやうに優しい感じのする、物柔かな好い男、近江屋にはこれも遠縁に當るさうですが、それよりは、眞面目まじめな勤め振りと、人柄を見込まれて、先代がお雛の許婚に定めた位の若者です。

「何とも申上げやうがありません。昨夜は棚卸たなおろしで、店の方がやけに忙しかつたので、氣になりながら四五日此方は見廻り兼ねて居りました。今朝暗いうちに使が來て、本當に驚いて了ひました。坊ちやんは、一番よく私になついて居りましたが、何といふ奴の仕業しわざで御座いませう──」

 氣の弱さうな重三は、もう涙含なみだぐんでさへ居りました。

 平次はこれだけ調べると元の佛間へ歸りました。もう一度、念入りに富太郎の死體を見ると、何處にも傷はないと思つたのは間違ひで、右手も、左手も、生爪なまづめが少しけて、爪際から血がにじんで居るのです。併し、それだけのことです。引付け際に苦しがつてその邊をきむしつたとしたら、これ位のことはある可き筈です。



「親分、あの鬼のめんは何處へ行つたでせう」

 ガラツ八はたうとう切り出しました。

「フーム」

「あの面を隱して居る奴が下手人に決つたやうなものぢや御座いませんか」

「それは何とも言へないな。だが、ガラツ八」

「へエ──」

「面だけなら、直ぐ見付かるよ」

「だから、何處にあるんで」

「二階の押入おしいれか、天井裏か、包の中を探してみな。其處になかつたら、俺は十手捕繩をお上へ返すよ」

「へエー、本當ですか。親分」

 ガラツ八は段々を二つづつ飛上がつて二階へ行きましたが、間もなく、凱歌がいかをあげて、逆落さかおとしに降りて來ました。

「あつた〳〵、ありましたよ、親分」

 さう言ふ右の手には、かもじを冠せた、すさまじい鬼女の面が、青い地、赤いくまに、金色の眼を光らせて居ります。

「さうだらう、それは定石ぢやうせきだ」

「これだけ判りや、下手人は何奴です。親分、早く繩を打つて引立てませう」

「騷ぐな、八。そのめんは何處にあつたんだ」

「二階の部屋の隅にある風呂敷包の中ですよ」

「あツ」

 それを聞くと、側に居た番頭の顏は眞つ蒼になつて了ひました。

「お聞きの通りだ。風呂敷といふのは、お前さんの持物でせう」

 と平次。ない調子と言ふよりは、已むを得ないと言つた口調で顫へ上がる友二郎をかへりみます。

「さうですよ、親分。どうして、そんなところにあつたんでせう。私には判らない」

「いや、私にはよく判る。氣の毒だが番頭ばんとうさん、子分の者に送らせるから、暫く八丁堀の笹野樣の役宅へでも行つて居て下さい」

「私は何にも知りやしません。親分、それや何かの間違ひでせう」

「いや、面が二階の包にあるやうぢや、それより外に私にはさばきやうがありません。八、誰か來てゐるだらうな」

「え、二三人來てゐますよ」

「友二郎さんを送るんだ──。お前だけ此處に殘つてくれ」

「へエ──」

「親分、番頭ばんとうさんはそんな事をなさる方ぢや御座いません。これには何か間違ひがありませう、どうぞ──」

 心配さうな顏を出す重三ぢうざを振りもぎるやうに、

「どうも仕方がありません。默つて見てゐて下さい」

 平次は劍もほろゝにそつぽを向きます。



 何時の間にやら日は暮れました。

 富太郎の死體の始末をして、お通夜つやが始まる騷ぎですが、錢形の平次と、その子分の八五郎は、まだ歸らうとしません。

「お孃樣の身の上に、何か危いことでも?──」

 お染が心配して訊くと、

「大丈夫だ。そんなことはあるまいが、俺はどうしてあの子供を殺したか、それが知りたいんだ。岡つ引き冥利めうりだ、心配することはないから、放つて置いてくれ」

 平次は事もなげに言つて、相變らず、佛間から、二階、階段、納戸なんどなどを、根氣よく調べ廻つて居ります。

「この白鼠しろねずみを飼つて居るのは誰だい、お染さん」

 暗い納戸の中に、かなり大きなかごの中に入つて、精巧せいかうな車を廻して居る五匹の白鼠を見付けると、平次の好奇心は火の如く燃えます。

「爺やですよ」

「ちよいと呼んでくれないか」

「へエ──」

 お染と入れ違ひのやうに、爺やの六兵衞はもみ手をしながら入つて來ました。

「この鼠を飼つてゐるのは、お前さんだつてネ」

「へエ──」

「結構な道樂だネ、お前さん生物いきものは好きかい」

 平次の調子はさり氣ないので、六兵衞もツイなめらかに舌が動きます。

「へエ──、そんなわけでも御座いませんが、白鼠と、小鳥を少し飼つて居ります。馴れると、これが飛んだ可愛らしいもので、へツ〳〵」

「さうだらう、こんな生物を可愛がる人は、矢張り佛性ほとけしやうなんだよ。ところで、八、お前は此處で見張つて居てくれ、俺はちよつと隣の部屋へ行つて來るから」

 平次は納戸なんどの外へ出ましたが、ほんの暫くすると歸つて來て、天井の壁際かべぎはに少し出て居る、細い糸を引つ張ると、それを白鼠の籠の外へ出て居る、車の心棒にかたく結びました。

「親分、何をなさるんで」

「まアいゝやな、外へ出て見よう」

 平次はガラツ八と六兵衞をうながして、佛間へ取つて返しました。平次の樣子のたゞならぬに不安を感じたか、六兵衞はしきりにソハソハして居りますが、側にガラツ八が引添つて動かしません。

佛壇ぶつだんは昨夜もこの通り締つて居たんだね、八」

「へエ──」

「昨夜の樣子と、今の樣子と、少しも變りはないか」

「ありません。昨夜の通りですよ、扉は締つて居るし、掛金はかゝつて居るし──あツ」

 八五郎が驚いたのも無理はありません。嚴重に掛けられた筈の掛金が、誰も手を加へないのに、獨りで上へ吊上つりあげられて、カチヤリとはづれると、佛壇の扉は、中から押されるやうに、サツと八文字に開いたのです。

「どうだ、八。この通りだつたらう」

「え、どうしてこんな事が、親分」

「後で話す。あツ、そのおやぢを逃すなツ」

 形勢不穩ふをんと見て、其場から逃げ出さうとする六兵衞。早くもその後ろから平次の手が延びて、佛壇の前で雁字がんじがらめにされて了ひました。

「八ツ、もう一人、あの手代をつかまへろ、重三とかいつた」

「よしツ」

 八五郎は横つ飛びに飛び出しましたが、間もなく裏の方から、

「親分、大變。親分」

 とわめき立てます。六兵衞を引つ立てて、飛んで行つて見ると、おひなを小脇に抱へた手代の重三、女のやうな優男やさをとこに似氣なく八五郎を大地に叩き付けて、起き上がらうとするのへ匕首あひくちが──。

 一髮のところへ、平次得意の投げ錢が飛びました。二の腕の關節くわんせつ永樂錢えいらくせんに打たれて、思はず匕首あひくちを取落したところへ、飛込んだ平次。好い鹽梅に飛んで來てくれたお染の加勢で、この兇暴きようばうな手代をキリキリと縛り上げて了つたのです。



「親分、どうして、六兵衞と重三が惡者とわかりました。少し繪解ゑときをしておくんなさい」

 二人の繩付を送り乍ら、夜の道を、八五郎はかう話しかけます。

「子供のおびえるのが、番頭の泊つた晩に限ると聞いて、これは番頭に疑ひをかけようとする者の仕業だなと氣が付いたんだよ」

「へエ──、こちとらとは物の考へやうがまるつきり違ふね」

「娘さんの飯に毒の入つてるのを、重三が見付けたと聞いて、いよ〳〵重三がくさいと思つた」

「益々わからねえ」

 とガラツ八。

「さうぢやないか、おひなさんと坊ちやんを殺してまうかるのは、先代の弟の番頭友二郎だ。それに重三はあんな綺麗な許嫁いひなづけを殺す筈はないから、番頭に疑ひをきせるには、坊ちやんばかりでなく、お雛さんにも何とかしなきアなるまい。毒を入れて見い出したのは皆んな重三の細工だ」

「成程」

「ところで、重三は、お雛さんと一緒になつたところで、精々小さい店を一つ持たされる位のことだが、坊ちやんを殺せば、お雛さんのむこで近江屋の跡取になれる」

「なあーる」

「で、親爺の六兵衞と共謀ぐるで、いろ〳〵細工をしたのさ」

「親爺」

「さうだよ、顏を御覽。六兵衞と重三は年こそ違へ瓜二うりふたつだらう。六兵衞は身持放埒はうらつで、若い時分は近江屋へ出入りも出來なかつた爲に、せめて伜だけは眞人間にしたいといふので、名乘りをしない約束で丁稚でつちに頼みこんだんだ。その後六兵衞も轉げ込んだが、二人は、深いたくらみがあるから表向は他人のやうに暮したんだよ」

「天眼通だね、親分」

「天眼通ぢやない。それだけは、番頭の友二郎さんから聞いたんだ」

「白鼠の仕掛けは?」

「あれは、ゑさをやつて居る白鼠は、夜になると腹ごなしに車を廻す、根氣の良い生物いきものだ。それから思ひ付いて、車の心棒へ細い糸を手繰たぐらせ、壁の上の穴から隣の佛間へ持つて行つて、佛壇の掛金を引かせたんだ。俺はすぐ開くやうにしたが糸を長くすると、半刻位かゝるから、六兵衞が仕掛をして自分の部屋へ歸つて、皆んな寢ついた頃佛壇が開くんだ。獨りで扉の開く仕掛けは、くじらひげが一本ありやいゝ。中から突つ張らせて置くだけの事さ。鯨の鬚は御丁寧にも大佛壇の中にブラ下げてあつたよ。誰にも氣が付かないのは不思議さ」

 平次の明察は疑ひをはさむ餘地もありません。

「で、親分。子供はどうして殺したんです」

「それには俺も首をひねつたが、生爪なまづめが痛んでるのを見て解つたよ。あれは、お前が飛出した後へそつと入つた六兵衞が、掻卷かいまきへ包んだまゝ、目を廻した子供を佛壇の下の抽斗ひきだしの奧へ入れたんだ」

「えツ」

抽斗ひきだしはあの通り大きいから、奧へ突込んで、手前へ佛具ぶつぐのこはれを詰めると、少し開けた位ぢやわからない。それに氣が轉倒てんだうして居るから少し位抽斗が重くなつても氣がつかなかつたんだらう。──二刻もたつて頃合を見て出した時は、すつかり冷たくなつて居たのさ。後で氣が付いて見たが、あの抽斗の奧には、可哀さうにひどくきずがあつたよ」

「へエ──」

「憎い奴等だ」

「太い畜生だ、二つ三つなぐつてやりませうか」

 先へ行つた繩付を追はうとする、ガラツ八を押へて、

「止せ〳〵、どうせお處刑しおきになる身體からだだ。それより、俺は、お前に丁度いゝ嫁を見付けたよ」

「へエ──あのおひなさん?」

「馬鹿。お染の方だよ。當つて見ようか」

 平次はカラカラと笑ひました。

底本:「錢形平次捕物全集第十三卷 焔の舞」同光社磯部書房

   1953(昭和28)年95日発行

初出:「オール讀物」文藝春秋社

   1932(昭和7)年6月号

※題名「錢形平次捕物控」は、底本にはありませんが、一般に認識されている題名として、補いました。

入力:特定非営利活動法人はるかぜ

校正:門田裕志

2014年514日作成

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