南浦紹明墨蹟
北大路魯山人



 南浦紹明なんぽじょうみょう(大応国師)は、宋の虚堂きどう法嗣はっす大燈国師だいとうこくしのお師匠さん、建長寺の蘭渓道隆らんけいどうりゅうの門に参じたことがあり、宋から帰って後に筑前の崇福寺におること三十年、関西を風靡した。延慶元年臘月ろうげつ、七十四を以て示寂じじゃく

 南浦の法統は女子の開悟を期するを以て特色としており、悟りに徹するには女も知らねばというわけで、その点、徹底しているともいえる。一休いっきゅう沢庵たくあんなどは、その出色で、一見エロ僧みたいだが、禅もここまで行かねば話せんと悦ぶ人は随喜する。南浦も、この派の傑僧だから、これで世事にもなかなか通じてすみにおけないところがある。その書は入宋しながらやわらかい和風を特色とし、大燈と好対照をなしている。「独歩」の二字よく彼の面目を表わし、その語、また大丈夫の所信として肝に銘ずる。

(昭和二十七年)

底本:「魯山人書論」中公文庫、中央公論社

   1996(平成8)年918日初版発行

   2007(平成19)年925日3刷発行

底本の親本:「魯山人書論」五月書房

   1980(昭和55)年5

入力:門田裕志

校正:きゅうり

2018年1124日作成

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