錢形平次捕物控
二人濱路
野村胡堂




「親分、面白い話があるんだが──」

 ガラツ八の八五郎は、妙に思はせ振りな調子で、親分の錢形平次に水を向けました。

「何が面白くて、膝つ小僧なんか撫で廻すんだ。早く申上げないと一帳羅ちやうらり切れさうで、心配でならねエ」

 さう言ふ平次も、この頃は暇でならなかつたのです。

「親分が乘り出しや、一ペンに片付くんだが、あつしぢやね」

「大層投げてかゝるぢやないか」

「折角頼まれたが、どうも相手がいけねエ」

大家おほやか借金取か、それとも叔母さんか」

「そんな不景氣なんぢやありませんよ。イキの良い若い娘なんで、へツ」

 八五郎は耳のあたりから首筋へかけてツルリと撫で廻しました。餘つ程手古摺てこずつた樣子です。

「成程そいつは大家より苦手だ。若い娘がどうしたんだ」

「朝起きて見ると、娘が變つてゐたんで。姉樣人形のやうに、人間の首が一と晩で摺り替へられるわけはねえ。そんな事が流行はやつた日にや──」

「待ちなよ八、さうまくし立てられちや筋が解らなくなる。何處の娘が變つて居たといふのだ」

「斯ういふわけだ、親分」

 八五郎はやうやく落付いて筋を通しました。

 小日向こびなたに屋敷を持つてゐる、千五百石取の大旗本大坪石見いはみ、非役で内福で、此上もなく平和に暮してゐるのが、朝起きて見ると、娘の濱路はまぢがまるつきり變つて居たといふのです。

 濱路は取つて十九、明日はいよ〳〵、遠縁の三杉島太郎次男要之助を婿養子に迎へる筈で、大坪家は盆と正月が一緒に來たやうな騷ぎ、當人も何んとなくソハソハと落付かぬ心持で床へ入つた樣子でしたが、翌る朝──といふと、丁度昨日きのふの朝、愈々今日は婚禮といふ時になつて、婆やのおしのが顏色を變へて主人の大坪石見に耳うちをしたのです。お孃樣の樣子が變だから、一寸お出でを願ひ度い──と。

「それから大變な騷ぎだ。ケロリとして顏を洗つて、身支度をしてゐる娘は、年恰好も濱路と同じくらゐ、武家風でツンとしたところのある濱路に比べると、下町風で愛嬌があつて、優しくて、ちよいと鐵火で、負けずおとらず綺麗だが、人間はまるで變つてゐる」

「それから何うした」

 話のくわいさに、平次もツイ吐月峰を叩いて膝を進めました。

「何しろ、色は少し淺黒いが、眼が凉しくて、口元に可愛らしいところがあつて、小股こまたが切れ上がつて、物言ひがハキハキして──」

「そんな事を訊いてるんぢやねえ、それからどうしたんだよ」

「役者のこしらへを話さなくちや、筋の通しやうはないぢやありませんか、──そのちよいと傳法なのが滅法界野暮つ度い、武家風の刺繍ししう澤山なお振袖か何んかよろつて、横つ坐りになつて、繪草紙か何んか讀んでゐるんだから、親分の前だが──」

「馬鹿野郎」

 ガラツ八の話のテンポの遲さ。これが親分をらして、自分から乘出させる魂膽こんたんと知り乍らも、平次はツイ斯う威勢の良い『馬鹿野郎』を飛ばしてしまひました。

「先づだまされたと思つて、逢つて見て下さいよ。相手は武家屋敷だが、これが表沙汰になると、大坪家の家名にかゝはるから、用人の小峰右内といふ人が、持て餘してそつと、あつしに頼みに來たくらゐだ。旗本の大身に御機嫌を取らせるのも、滿更惡い心持ぢやありませんよ」

あきれた野郎だ」

「大事の〳〵一人娘が行方不知しれずになつたが、その代りのニセ首を、成敗することも突き出すこともならねエ」

「フーム」

「娘は何處へ行つた。お孃樣を何處へ隱した──とヤハヤハと訊くと、『私が濱路でございます』と、ニコニコして居るんだから手の付けやうはねえ。あんな時は、親分の前だが、綺麗な娘はトクだね。同じニセ首でも、こちとらのやうなのだと、いきなり縛り上げて拷問がうもんにかけられる」

 ガラツ八の話は遊び澤山で、要領から遠くなるばかりですが、兎に角、千五百石取の大身の一人娘が、祝言の前の晩、一夜のうちにり替へられてゐたことだけは間違ひありません。

「どりや、その綺麗なニセ首でも拜んで來ようか」

 平次も到頭御輿みこしをあげる氣になりました。



 平次とガラツ八が、小日向臺こびなただいの大坪家へ行つたのは、山の手の町々が、青葉の香にムセ返るやうな、四月の美しい日盛り。

「小峰さんは居なさるかい。錢形の親分をつれて來たが──」

 お勝手口から、心得顏に入るガラツ八の顏へ、

「あ、八五郎か、大變なことになつたよ。まア入つてくれ」

 當の小峰右内は、せつかちらしい言葉を叩き付けるのです。

「どうしました、小峰さん」

「どうもうもないよ、先づ見てくれ」

 平次とガラツ八は、不安と焦躁せうさうに眼ばかり光らせてゐる雇人の中をお勝手から納戸へ、奧の方へと通ふ廊下をみちびかれます。

「これだ」

 とある部屋の障子を開けると、中には五十年輩の女が一人、不自然な恰好で、床の上にこと切れて居るのです。

「婆やさんぢやありませんか」

 とガラツ八。

「今朝殺されてゐたんだよ。下女が見付けて大騷ぎになり、兎も角も首に卷き付けた細紐ほそひもだけをはづして、一應介抱して見たが、もう冷たくなつてゐるんだ。息を吹き返す道理はない。婆やの伜が品川に居る筈だから、大急ぎで人をやつたが、まだ來ないよ」

 小峰右内は、武家の御用人らしくもなく、少し顛倒てんだうして居りました。

「親分」

 八五郎は後ろから跟いて來た平次に場所をゆづりました。

 婆やのお篠は、五十前後の巖乘な女で、いざとなつたら、相當力もありさうですが、不思議なことに大してあらそつた樣子もなく、床から半身をのり出しては居りますが、至つて平穩に死んで居るのです。

「八、少し起して見てくれ──お前は足の方を持つんだ──あツ噛み付くぜこの佛樣は」

 平次は死骸の頭を抱へて、床の上に眞つ直ぐに起し乍ら、そんな事を言ふのです。

「親分、おどかしちやいけません」

 ガラツ八はドキリとした樣子で振り返りました。

「首を起したはずみで、齒が鳴つたんだよ。心配することはねエ」

「あんまり結構な人相ぢやないから、ツイドキリとしますよ」

ばちの當つたことを言ふな。──この紐は少し華奢きやしやなやうだが」

「その代り丈夫ですよ、眞田紐さなだひもだから」

 平次は兇器に使はれた、萌黄もえぎの眞田紐を取上げました。

「こいつは何に使つた品だらう。刀の下緒さげをぢやなし、前掛の紐ぢやなし、ひどく新しいが──」

 平次は萠黄染料の匂ひを嗅ぎ乍らそんな事を言ふのでした。

「お孃樣の御道具の箱を縛つた紐だ」

 小峰右内は以ての外の顏をして見せます。

「その孃樣は、何處に居なさるんで?」

「逢はせませう。が、その前に、一寸訊いて置き度いが──」

 と小峰右内。

「へエ、──どんな事で」

「これが表沙汰になると、お家の瑕瑾かきんになる。奉公人の一人や二人死んだのは、急病の屆出ですむが、お孃樣が變つたとなると、これはうるさい、──萬事呑込んでくれるであらうな」

「それはもう、御用人樣。あつしは町方の御用聞で、御武家屋敷のことには、立入る筋ぢやございません。御老中、御目付などの御歴々と、あつしの仕事とは、何んの關係もないのでございます」

「よし〳〵、さう判つてくれると大變有難い」

「大層お困りの樣子ですから、お孃樣をさがし出してあげた上、町人や奉公人に惡いのがあつたら、それは容赦をいたしません」

「ぢやう來てくれ」

 右内は二人を案内して、また幾間か先へ暗い廊下を進みました。

「此處だ」

 小峰右内の開けた唐紙の中を見て、二人は顏を見合せました。婆やの死骸とは比べものにならない、其處には刺戟しげき的なものがあつたのです。



 それは、八五郎が口を極めて讃美した、變へ玉の娘でした。いよ〳〵一と責めする氣になつたものか、燃え立つやうな赤い扱帶しごきでキリキリと縛り上げ、嫁入道具のおびたゞしく取散らした中、箪笥たんすの引手にそれを結へてあつたのです。

 ドカドカと入る三人の姿を、娘は顏をあげてうらめしさうに眺めましたが、直ぐまた眼を伏せて、きかん氣らしい唇をキツと結びました。ガラツ八がすつかり有頂天になつて、手持の語彙ボキヤブラリーを總仕舞にしただけあつて、惱ましき情景の中にゑるにしては、此上もない妖艶さでした。

「どうしたことです、これは?」

 平次は娘と用人の顏を等分に見比べました。

「この娘が怪しいとでも思はなきや──」

 右内は苦りきつてゐるのです。

「それは?」

「見も知らぬ人間が、明日は祝言といふお孃樣の代りになつて居たり、何にか仔細しさいを知つて居さうな婆やが殺されて、首に卷いてあつた細紐が此部屋から出た品だつたり、疑へばいくらも變なことがある。殿樣がこの娘をめて見ろと仰しやつたのも無理はあるまい」

「御尤もですが、こんなにひどく縛つちや可哀想です。どれ」

 平次は娘の後ろに廻ると、小手と首を締め上げた扱帶しごきを解いて、その前に片膝を突きました。

「さて、改めて聽くが、お前は何處の誰だえ? 誰に頼まれて此處へ入つて來たんだ。──人殺しの疑ひを受けてゐるから、用心をして返事をするが宜い。──默つて居ちや、言ひ譯の出來ないものと思はれるかも知れないよ」

「──」

 娘はチラリと平次の方を見ましたが、相變らず默りこくつて、唇を開かうともしません。

「錢形の親分だよ。お前の爲に惡いやうにして下さる氣遣ひはない。知つて居ることを皆んな言ふが宜いぜ」

 ガラツ八は横から長ンがい顏を出しました。昨日も一度逢つてるんで、これはいくらか心易立てです。

「申しますワ、錢形の親分さんなら」

 娘は顏をあげました。長い瞼毛まつげが濡れて、眞珠のやうな涙が豐かな頬にこぼれます。

「それが宜い。──お前が正直にしてくれさへすれば、この俺が引受けて、惡いやうにはしてやらない」

 平次はさう言ひ乍ら、もう一度立上がつて、娘を縛つた扱帶しごきを、皆んな取拂つてやりました。後ろの方で、小峰右内がむづかしい顏をして居りますが、平次はそれを振り向いても見なかつたのです。

「私は矢張り、此處のうちの子なんです。濱路といふのは、私の名前に違ひありません」

 娘の言葉は平次にも豫想外でした。

「それはお前、本氣で言つてゐるのか」

「え、──もつともそれを知つたのは、ツイ一と月前のことだけれど」

「それまでお前は何んと言ふ名だつたんだ」

せきと言ひました。草加さうかの百姓午吉うまきちの子といふことで育ち、淺草に引越して、もう十年にもなります」

「もう少しくはしく話してくれ。その草加で育つたお前が、どうしてこの大坪樣の子だと名乘つたんだ」

 お關の話は、少なくとも平次とガラツ八には奇つ怪なものでした。

 それは、今から十九年前のこと、旗本大坪石見の奧方は、娘濱路を産んで間もなくくなり、嬰兒えいじは草加の百姓午吉夫妻に預けられて、三つになるまで育ち、それから小日向こびなたの大坪家へ歸されたのですが、お關に言はせると、午吉夫婦は自分の娘お關が、里子の濱路はまぢと、よく似てゐるのを幸ひ、娘をゆく〳〵大旗本の跡取娘にするため、人知れず取換へて育て上げ、濱路をお關にして手許に留め置き、お關を濱路として、三つになる時小日向のお屋敷へ返した──といふのでした。

「私も、そんな事とは知らず、午吉夫婦の娘のつもりで、淺草で小さい荒物屋の店を出して居るにせの兩親のところで育ちましたが、今から一と月前、母親が病氣で死ぬとき、──これは一生言はないつもりだつたが、默つて死んでは冥途めいどさはり、何がどうあらうとも、言はずに死ぬわけには行かないと、父親の留守中に、そつと私に話してくれました」

 あまりの事に、平次もガラツ八も、用人小峰右内も、開いた口がふさがりません。

「母親が死んだ後、父親の午吉は年にも耻ぢぬ放埒はうらつで、家へ寄り付いてもくれません。思案に餘つて、昔からの知合で、私を里子に出す時世話をしてくれたといふ、此お屋敷の婆や──おしのさんを呼出して相談すると──」

「──」

 話の重大さに、聽く方がツイ固唾かたづを呑みました。お關の濱路は、何んの作意もなく靜かな調子で續けます。

「お篠さんに話しをすると、最初はひどく驚いてゐましたが、急に乘氣になつて、──お孃さんの婚禮が明日に迫つて、今更どうしやうもないが、實はお孃さんはひどくこの祝言を嫌がつてゐる。無理に三杉さんの御次男を迎へたら、三日經たないうちに、お孃さんは自害じがいをするに違ひない。急場のしのぎが付いたら又何んとかならう。お前が本當に此屋敷のお孃さんなら、丁度仕合せだから、今晩そつとやつて來て、お孃さんと入れかはつてくれといふ頼みでした」

「──」

「私に否やのあらう筈もありません。今では何處へ行く當てもない私、淺草の荒物屋へ歸つたところで、明日の暮しの工夫もつかない私ですもの。お篠さんの頼みの通り、お孃さんと入れ換つて、翌る朝、お篠さんに見付けられたやうに仕組みました」

「お孃さんは何處へいらつしつたんだ」

 右内は我慢がなり兼ねて口を狹みました。

「それは判りません。私は庭木戸の外でチラと見たつきりですもの。──でも、其處には、若いお侍が待つて居る樣子でした」

「若いお侍? 顏を見なかつたのか」

「何んにも見ません。背が高くて眞つ直ぐにシヤンと立つて居たことだけは氣がつきました。縁側の戸を開けて、お篠さんが呼んでゐるので、大急ぎで入つたんですもの」

 お關の濱路の言葉はあまりにも常識のけたを外れますが、こと〴〵く作り事にしてはあまりによく筋が通ります。十九年前この屋敷の奧方が亡くなつて嬰兒えいじ濱路を草加へ里子に出したのも事實、その濱路が十九になつて、婿選むこえらみといふ段になつた時、父親の氣に入つた三杉の次男要之助をひどく嫌つてゐたことも事實です。

「右内、困つた事になつたのう」

 唐紙を開けてズイと入つて來たのは、五十を幾つか越したらしい立派な武家──主人大坪石見でした。

「殿樣、さぞ御心配なことで。──私は神田の平次でございます」

 平次は丁寧に膝を直しました。

「御苦勞だな。──近頃神田の平次といふと大層な評判だから、右内が兎や角言ふのを、私から頼むやうに言つてやつたのだよ。御目付衆の耳にでも入ると面倒だ。何んとか宜いやうに頼むよ」

「かしこまりました。御當家の落度ではございませんから、決して御迷惑になるやうな事はいたしません。ところで──」

「何にか訊ね度いことがあるのか」

「お孃樣が三つで里から歸られたとき、何にかう──變だな──と思召したことはございませんでせうか」

「忘れたよ、平次。奧でも生きて居れば、又何にか思ひ付くことがあるかも知れないが、その頃私は甲府かうふの御勤番でな」

「御尤もで。──もう一つ承はります。三杉樣御次男との御縁組は變更は出來なかつたので御座いますか」

「早く婿を欲しいと思つてツイ娘の氣も知らずに運んだ私の落度だ。が、武士と武士との約束は容易に變更の出來るものでない。娘が嫌だと申しますからと言つて縁談を斷わるわけに行かないよ」

「若し、御孃樣が御無事でお戻りになりましたら、矢張り元の縁談をお進めになるおつもりで──」

「娘の病氣と言つて祝言を伸ばしてあるが、下人げにんの口がうるさいから内々三杉家では承知して居るかも判らない。向うから斷わつて來れば一番無事なのだが──」

 武士たることの惱み、人の子の父たることの惱みに、大坪石見は分別らしい顏を伏せました。



 平次とガラツ八は一應屋敷の中に居る人間全部に逢つて見ました。男は用人の外に中間、小者、庭掃にははきの爺、女はお小間使のおのぶ、仲働のお米、外にお針に飯炊き。それからもう一人、主人大坪石見のをひで、宇佐川鐵馬といふもつともらしい四十男が、小峰右内の手傳ひをして、十年越し此屋敷のかゝうどになつて居ります。

「私は宇佐川鐵馬、──平次殿か、何分宜しく頼みます」

 薄髯うすひげを生やした、少し無精らしい角顏の背の低い男──何時でも眠さうで、無口ですが、そのくせ仕事には至つて忠實で、障子も張れば、水も汲むといつた肌合の人間です。

「お孃樣をつれ出した若い背の高い侍といふのに御心當りはありませんか」

 平次はそんな事から始めました。

「いや一向──私は滅多に濱路さんとは口をきかないのでな」

 宇佐川鐵馬は照れ臭さうに笑ひます。腹の底から女をあきらめてゐさうな男です。宇佐川鐵馬は、本當は三十を越したばかりですが、誰の眼にも四十過ぎとしか見えない無精男です。

「お孃さんの代りになつてゐる、あのお關とか言ふ娘はどうです」

「お關と言ふのかな、あの娘は。先刻まで私は眞物ほんものの濱路だなんて言ひ張つて居たが──もつともそんな天一坊氣取りさへなければ、飛んだ良い娘だ。下町育ちで解りが早いから」

 鐵馬はそんな事を言つて他所事よそごとのやうにニヤニヤするのでした。

「ところで八」

「へエ」

「お關の親父の午吉うまきちは、淺草で荒物屋をして居る樣だ。町所を訊いて、搜し出してくれないか」

「へエ──」

「萬事はその午吉が知つてゐるに違ひない。多分安賭場やすとばか何んかへ潜り込んでゐるんだらう。愚圖々々言ふなら、しよつ引いて來るが宜い。親父が口を割りや、一も二もあるまい」

「へエ──」

 八五郎は氣輕に尻を端折りました。少し花道を驅け出すやうな調子ですが、文句のないのと氣の早いのと、そして鼻の良いのがこの男の取り柄です。

 平次は一とわたり奉公人に逢つて見ましたが、何んの得るところもありません。少し綺麗なお延も、氣性者らしいお米も、中間も、小者も、皆んな一季半季の奉公人で、大それた事をする理由を持つて居さうなのはなかつたのです。

 用人の小峰右内は五十少し越したらしく、ひたひの上の光り具合、少しわしになつた赤鼻、金壺眼かなつぼまなこ──など、あまり結構な人相ではなく、慾も人並には深さうですが、主人大坪石見の頼んだ平次を、自分の思ひ付きのやうに見せかけたのと、お篠を絞め殺した眞田紐を、何んの躊躇ちうちよも無く、嫁の道具を縛つた紐と言ひきつたのが、少し變と言へば變ですが、その外には別に怪しい節もありません。大坪家に二十年以上も住んでゐる人間ですから、渡り用人並に、少しくらゐは溜めて居たところで引拔いて大伴おほともの黒主などに化ける氣遣ひは先づなささうです。

 尤もこの屋敷のもので、一番背の高いのは右内で、これで夜目に若い侍と間違へられる見込みがあれば、少しは疑ひの圈内に入るかもわかりません。

 平次は女達一人々々に、濱路の身持を訊きましたが、婿金に定まつた、三杉の次男坊を嫌ひ拔いてることは事實ですが、さうかと言つて、言ひ交した男があらうとは思はれず、若い娘らしく、いろ〳〵奉公人達と話はして居たが、さして執着しふぢやくした名前はなかつたといふことに一致するのでした。

 此處まで來ると、平次の探索たんさくもハタと行詰ります。この上はガラツ八が午吉を見付けるのを待つ外はないでせう。

 平次は最後にもう一度、婆やのお篠の死骸を見舞ひ、それから押入の中に首を突つ込んで、徳利とくりが一本隱してあるのを見付けました。婆やはことの外酒好きで、そつと寢酒をやることは奉公人達も知つて居ましたが、徳利は綺麗に洗つて酒の匂ひもありません。



「親分、驚いたぜ──」

 ガラツ八が歸つて來たのは、中一日置いて三日目の晝過ぎでした。

「何を驚くんだ。御用聞が往來を飛んで歩くと、世間樣の方が驚くぜ」

 平次は何にかかう、くさり拔いて居たのです。一向他愛もないやうに見えた大坪石見の屋敷の騷ぎが、その後少しもらちがあかず、お關の濱路と、用人右内と睨み合つたまゝ、何うにもならぬ日が續いて居たのでした。

「親分、こいつは驚くぜ。荒物屋の午吉──草加から出て來て、安賭場やすとばを泳いでゐる男が、土左衞門になつて大川橋から揚がつたんだ」

「何?」

「それね、親分だつて眼の色を變へるんだもの。それを見たあつしが、大川橋から此處まで驅けて來たに不思議はねエ」

「で、死骸に變りはなかつたのか」

「大變り、お篠の傳で、三尺で絞められてゐるんだ。今度は眞田紐ぢやねえが、水の中でふやけて居るから、瓢箪へうたんのやうにくゝれて居やがる。見られた圖ぢやあねエ」

「何んて口をきくんだ。佛樣を見たら、念佛の一つもとなへて來い、馬鹿」

「へエ」

「それつきりか」

「それつきりならお代は要らねえ。腹卷に呑んだ財布に、小判が三枚」

「大層持つてやがるな」

「──その上この十日ばかり、張つて〳〵張りまくつたさうだから、三文博奕ばくちにしても、五兩や十兩はつて居るさうですよ」

「よし〳〵それだけ聽けば澤山だ。茶漬でも一杯掻込んで、一緒に來ないか」

 平次はもう外出の支度をして居りました。

「何處までも行きますよ。一日や半日食はなくたつて、なア──ニ」

 お勝手へ飛込むと、手桶からいきなり柄杓ひしやくで水を一杯──

「あれ、八五郎さん、御飯の仕度をして居ますよ」

 お靜は驚いて、その鯨飮振げいいんぶりを眺めました。

 二人が小日向こびなたへ驅け付けたのは、その日が暮れかけた頃。

「あの娘に逢はせて下さい」

 右内の案内も待たず、平次はお關の濱路の部屋に飛込みました。

「ま、錢形の親分」

「親分ぢやねエ、太てえ阿魔あまだ」

 平次は日頃にない亂暴な口をきいて、お關の前へヌツと立ちました。

「あ──れエ」

「お姫樣らしい聲を出したつて、驚くものか。なア、お關」

「──」

「お前の父親が、殺されたんだぞ」

「えツ」

「十九年間の育ての親だ。お前の生みの親でなくたつて、仇くらゐは討つ氣になつてもよからう」

「本當ですか、親分、それは」

 お關の表情も、さすがに強張こはばつて行きます。

「何處から入つたか、十五六兩の金を持つて賭場とばを泳いでゐるうち昨夜ゆうべ、三尺で首を締められて、大川へ投り込まれたんだ。死骸の上がつたのは今日、八五郎が見て來たんだから、嘘ぢやねエ」

「まア」

「可哀想に引取り手がないから、まだ大川橋の袂に、むしろをかけて投つてあるぜ」

 八五郎は横合から口を出しました。

「──」

「お前の父親を殺したのは、お前を此處へおびき寄せた人間だ。──お前の父親の口から何も彼もバレさうになつて、八五郎の先廻りをしてむごたらしいことをしたんだ」

「──」

「お關、芝居はもう澤山だ。お前が此間話した、嬰兒あかごと嬰兒を取換へるといふのは、一應筋になりさうだが、實はさう容易く行く藝當ぢやない。草加の百姓へお孃さんを里に出して、立派なお旗本が三年も投つて置く道理はないし、三年經つて歸つて來た僞首を屋敷中の者が皆んな氣が付かない筈はない」

「──」

 平次の論告に壓倒されて、お關の濱路はタジタジとなつて了ひましたが、それでも頑固に口をつぐんで、實は──と言つてくれさうもありません。

「お前は默つてゐさへすれば、宜いつもりだらうが、默つて居ると、婆やのお篠を殺した罪を背負つて、處刑臺しおきだいに、その綺麗な首をさらすかも知れないよ。それも承知だらうな。この細工を引受けたのは、お屋敷の中では婆やだ。婆やが死んでしまへば、お前の乘込んだ經緯いきさつを、知つてる者はなくなる──」

「──」

「その婆やが、お前の部屋にある眞田紐で絞め殺されたんだよ。あの晩お前の部屋へ入つて眞田紐を持つて行つた者がなきや、下手人はお前だ」

「そんな、そんな、親分」

 お關はさすがにあをくなりました。

「よく考へて見るが宜い。俺は四半ときはかり、屋敷の内外を見廻つて來る」

 平次はお關を一人置いて八五郎と一緒に外へ出て了つたのです。



「親分、──お關は本當に婆やを殺したでせうか」

 八五郎は庭から木戸へ出る平次の後ろからそつと聲をかけました。

「そんな事があるものか」

「だつてさう言つたでせう」

「あれはおどかしさ。──若い娘が、寢て居る大女を絞め殺せるものかどうか、考へて見るが宜い」

あつしもさう思つたんだが──」

「それにこれを御覽」

 平次は紙入から銀の小さい耳掻みゝかきを出して懷ろ紙に挾んで見せました。

「黒くなつて居ますね」

「いつか、お篠の死骸を起した時、──噛み付きさうだ──つて言つたらう」

「へエー」

「あの時、この耳掻を死骸の口の中に入れたんだ。歸る時そつと拔いて見ると、此通りいぶしたやうに眞黒になつて居る」

「──」

「あの婆やは石見いはみ銀山で毒害されたんだよ。婆やが寢酒を呑むことを知つて居る人間の仕業だ」

「それなら、眞田紐は餘計ぢやありませんか」

「一寸お關の方へ疑ひを向けて、その間に婆やをはうむらせるつもりさ。自分の方へ疑ひの來ないやうにする計略だよ」

「惡い野郎だね」

「野郎だか女だか解らない。──おや?」

 平次はギヨツとした樣子で立ち止りました。

「親分、何んで?」

「あれを見るが宜い、惡人には不思議に手ぬかりがあるものだ」

 指さしたのは、お勝手寄の壁に立てかけた竹竿たけざをの切れつ端、六尺くらゐもあるのに、一尺程の曲つた横木を持つた十字形のものでした。

「あれは何んで?」

「あの棒に着物を引つ掛けて、上へ團扇うちはか何にか差したのを、木戸の外の下水の縁へでも立てて置くと、面喰つた若い娘は、眞つ暗な晩だつたら、背の高い男と見るやうなことはないだらうか」

「成る程ね」

「さうでも思はなきや、あの十文字の使ひ道が判らないよ。それに横木は人間の肩くらゐの勾配こうばいで、下へ流れて居るのは、手數のかゝつた細工ぢやないか」

「すると」

「背の低い人間の細工だ」

「シツ」

「人が來たのか。よし〳〵、もう一度お關のところへ行つて見よう」

 二人が入つて行くと、お關はもう觀念しきつた姿でした。

「親分さん、私が惡う御座いました。どうぞ縛つて下さい」

 打ちしをれて疊に手を突くと、この娘は飛んだいぢらしくなります。

「よし〳〵、皆んな言ふが宜い。惡いやうにはしない」

「皆んな誰かの細工さいくです。父さんがお金を貰つて、私に此役を勤めて見るが宜いつて言ふんです」

「フーム」

「私も、何時までつても浮ぶ瀬のない貧乏暮しに、すつかりイヤ氣がさして居ました。夏になつても冬になつても、着物一枚買ふことの出來ないやうな──」

「──」

「お前くらゐのきりやうなら、立派に旗本のお孃樣で通る。向う樣では祝言が嫌さに、どうでも家を飛出し度いつて言ふんだから、これほど功徳くどくなことはない。──それに殿樣はさう申しては惡いが、無類のお人好しで、どんな事があつたつて、お手討などになりつこはないし、こんな面白い狂言があるものかつて言ふんです」

 お轉婆で、無法で、冒險好きな下町娘は、果てしもない貧乏にみきつて、到頭こんな飛んでもない役を買つて出ることになつたのでせう。

「それつきりか」

「え」

「お前は大變な間違つたことをして居るとは氣が付かないだらう。──俺は人樣に意見をするほどの年寄ぢやねえが、お前が馬鹿な事をしたばかりに、婆やさんとお前の父親が死ぬやうな事になつたぢやないか」

「親分さん」

「泣いたつて追つ付くことぢやない──この上、此お屋敷のお孃さん──濱路さんに間違があつたら何んとする」

「親分さん、どうしたら宜いでせう」

「お前は本當に、父親に金をやつて、こんな事をさせた相手を知らないのだな」

「え、私は何んにも知りません」

「本當か」

 平次は暫らくこの飛上がりな娘と睨み合ひました。すつかり自尊心を失つて、時々痙攣けいれん的に顫へては居りますが、蒼白く引緊ひきしまつた顏は旗本屋敷などにはない不思議な魅力です。

「親分、勘辨してやつて下さいよ。可哀想に」

 ガラツ八はたまり兼ねて助け船を出しました。フエミニストの八五郎は此上お關の困惑するのを見ては居られなかつたのです。

「馬鹿ツ」

「へエ──」

「お前は外へ行つて見ろ。先刻さつきの十文字になつた竹は、もう隱された頃だ。あの竹が見えなくなつたら俺を呼べ」

「へエ──」

 八五郎は飛んで行きました。

「お關、今お前の父親の仇を討つてやる。見て居るが宜い」

「──」

 そんな事を言ふ間もなく、外から八五郎の恐ろしくでつかい咳拂せきばらひが聽えます。



「御用ツ」

 平次が飛付いたのは、かゝうどの宇佐川鐵馬でした。

「あツ、何をするツ」

「宇佐川鐵馬、御用だぞ。お篠を殺し、午吉うまきちを殺したのはお前だ」

「何を馬鹿なツ」

 宇佐川鐵馬は小さい身體ををどらせると、苦もなく生垣を越えて、四角な顏をみにくく歪めたまま、逃げ腰乍ら一刀の鯉口こひぐちを切ります。

「殿、御用人、──惡者は此野郎ですよ。繩付を出して構ひませんか。それとも追ひ込んで、槍玉にでも上げますか」

 縁側へ出て來た、大坪石見と、小峰右内の方を見乍ら、平次は用心深く斯う言ひました。

 人の好い大坪石見はハタと當惑した樣子です。繩付を出す不面目を考へないわけではありませんが、手一杯に暴れられると、大坪石見いはみの手でこの男を成敗などは思ひも寄りません。

「それぢや縛つて了ひませう。人別を拔いて、午吉うまきち殺しで處刑しよけいすれば」

 平次は先の先まで考へ乍ら、ジリジリと生垣に迫ります。何時の間に廻つたか、ガラツ八の八五郎は、鐵馬の退路を斷つて、後ろから十手を光らせて、機會を待つて居るのです。

「畜生ツ、どうするか見やがれ」

 宇佐川鐵馬は一刀をギラリと拔くと、一氣に縁側へおそふ樣子を見せましたが、平次の構への並々ならぬを見ると、諦めたものか、いきなり肌をくつろげて、ガバリとその切尖を自分の腹へ──。

「あツ」

 驚き騷ぐ人々、それを尻目に、宇佐川鐵馬は聲をしぼりました。

「えツ、寄るな〳〵。腹を切つてやるのが、せめてもの志だ。手一杯に働けば一人や二人は斬れたが──」

「待て、待て、鐵馬」

 縁側の大坪石見の頭には、咄嗟とつさに隱された娘の行方の事がひらめいたのです。

「その代り、俺が死んでしまへば、濱路は誰も氣の付かぬところで飢死うゑじにだぞ。──この鐵馬といふ近い身寄があり乍ら、大坪家の跡取りにも、娘の婿にも考へなかつたばちだ。へツ、へツ、へツ、へツ」

 凄慘せいさんな血の笑ひが頬にこびり付いて、そのまゝ死の色が上へ刷かれて行くのです。四邊は次第に暗くなりました。

「鐵馬、それは罪が深いぞ──鐵馬、頼むから、濱路のゐる場所を教へてくれ」

 縁側から跣足はだしのまゝ飛降りて、大坪石見は生垣いけがき越しに、死に行く甥に聲を掛けました。

「へツ、へツ、へツ、親も親なら、娘も娘だ──思ひ知るが宜い」

「鐵馬」

「十何年間冷飯を食はして、散々コキ使ひ乍ら、それで恩をほどこしたつもりで居るんだらう。雇人ならとうに飛出して居る」

「鐵馬」

「見るが宜い。濱路はどうせ、この俺と一緒に死ぬのだ。いや、俺よりおくれても、一日とは生き伸びまい。──あんなに弱つて居るんだから、へツ、へツ、へツ、へツ」

「鐵馬、頼む、濱路を助けてくれ」

「嫌だ」

「鐵馬」

「──」

「鐵馬」

 大坪石見が生垣を押破つて飛付いた時は、宇佐川鐵馬は、喉笛のどぶえを掻き切つて、こと切れて居りました。

 その後の騷ぎは大變でした。後始末もさし措いて、あと一日とは生きないといふ、娘の濱路の行方を、必死になつて搜したのです。

 宇佐川鐵馬の出廻る先は、夜中ながら一軒殘らず手を廻しました。隣近所は、耻も外聞もなく訊き歩かせました。が、何處にも居ません。土藏も物置も、天井も床下も、わけても宇佐川鐵馬の居間は、めるやうに搜しましたが、娘一人隱すほどの場所もなく、かんざし一つ、紐一本落ちては居なかつたのです。一と晩の努力も空しくて、夜は白々と明けました。

「平次、何とか相成るまいか、濱路は當家のたつた一と粒種だ。千萬金を積んでも、此石見いはみの命に替へても搜し出さなければならぬ」

 大坪石見は、平次の前に手を突いて頼み込んだのです。

あつしでも、此上の搜しやうはありませんよ。宇佐川鐵馬さんのうらみだ。十何年も居候をして居た人ぢや、變な氣にもなるでせう」

「どうすれば宜いのだ、平次」

「よくとむらつて上げて下さい、──それつきりの事ですよ。ところで」

 平次は深々と腕をこまぬきました。

「親分」

「お前は默つて居ろ」

あつしは變な事を考へたが」

 と八五郎。

「何んだ」

 平次はガラツ八の方をヂツと見ました。

「お孃さんの隱された場所が判つたやうな氣がするんです」

「俺も判つたやうな氣がする」

「二人で書いて見ませうか」

「面白からう」

 紙にもすゞりにも及びません。平次は火鉢の灰へ、八五郎は縁の下の柔かい土へ──。

「ひイふのみ」

 火鉢と縁の下と、位置を變へてのぞくと、二人共、

──長持ながもちの中──

 とう書いてあつたのです。

 それつと飛んで行つて、お關の居る部屋の隣。嫁の道具を一パイに積んだ下から、長持を引出して蓋を拂ひました。

「あツ」

 中には娘濱路が滅茶々々に縛られた上、猿轡さるぐつわまで噛まされて、息も絶え〴〵に、半死半生の身を横たへて居たのでした。

        ×      ×      ×

「八、どうして長持の中と判つた」

 歸り路、朝の清々すが〳〵しい風に吹かれ乍ら、平次は訊きました。

「唯何んとなしに、そんな氣がしましたよ」

「心細いなア」

「ぢや親分は」

「長持の蓋の角に生々しい傷があつて、穴があいて居たことに氣付いたんだ。祝言前の嫁の長持に穴があるわけはない。あれは息拔きに違ひないと氣が付いたのさ」

「なアーる」

 八五郎はピタリと額を叩きました。親分の推理に、兎も角直感で追ひ付いた自分が嬉しかつたのです。

「ところであの居候は可哀想だね」

「あんな惡い野郎が?」

「十何年も給料のない奉公人並に扱はれて、氣が少し變になつたのさ」

「それから、あのお關も可哀想ぢやありませんか」

 ガラツ八は臆面おくめんもなくこんな事を言ふのです。

「精々親切にしてやるが宜い。親父が殺されて、たつた一人になつたんだから心細からうよ。しよんぼりと歸つて行つた姿が目に殘るぜ。尤も顏は綺麗だが心掛はあまり結構ぢやない」

 そんな事を言ひ乍ら、二人は妙に物足りない心持で神田へ急ぐのでした。

底本:「錢形平次捕物全集第二十卷 狐の嫁入」同光社磯部書房

   1953(昭和28)年1115日発行

初出:「オール讀物」文藝春秋社

   1940(昭和15)年5月号

※題名「錢形平次捕物控」は、底本にはありませんが、一般に認識されている題名として、補いました。

※「萌黄」と「萠黄」の混在は、底本通りです。

入力:特定非営利活動法人はるかぜ

校正:門田裕志

2016年610日作成

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