錢形平次捕物控
匕首の行方
野村胡堂
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「八、居るかい」
向う柳原、七曲の路地の奧、洗ひ張り、御仕立物と、紙に書いて張つた戸袋の下に立つて、平次は二階に聲を掛けました。よく晴れた早春のある朝、何處かで、寢呆けた雄鷄が時をつくつて居ります。
「誰だえ、人を呼捨てにしやがつて、戸袋の蔭から出て、ツラを見せろ」
八五郎の長んがい顎が二階の窓へ出ると、滿面に朝陽を浴び乍ら、眩しさうに怒鳴るのです。
「大層な見識だな、八」
「あ、親分ですかえ、こいつはいけねえ、又町内の餓鬼大將が、作り聲でからかつてゐるのかと思つて、──」
八五郎は面喰つて、階子段を二つづつ飛降りて來ました。
「本所の二つ目まで附き合はねえか」
「何處まででも附き合ひますよ」
「それぢや大急ぎで朝飯を濟ましてくれ、此處で待つて居るから」
平次はさゝやかな四つ目垣にもたれて、芽を吹いたばかりの貧乏臭い草花などを眺めて居ります。
「それには及ぶものですか、朝飯なんざ、昨日も喰ひましたぜ」
「あんな野郎だ、──面は洗つたことだらうな」
「それはもう、鹽磨きで、水の使ひやうが荒過ぎるつて、大家さんから小言をくひましたよ、何しろ若くて獨り者で、良い男だ」
「呆れた野郎だ」
「親分が一緒なら氣が強いや、いづれ歸りは幾代餅か、毛拔鮨か、──もゝんじい屋は少し時刻が早いが──」
「下らねえことを言はずに、空き腹を覺悟ならついて來い、だが、叔母さんが見えないぢやないか、家を空つぽにして出かけても大丈夫か」
「ちよいと隣へ頼んで行きませう、尤も泥棒に狙はれるやうな不心得な奴は、このお長屋には住んでゐませんがね」
八五郎はお隣の女房に留守を頼んで、平次の後を追ひます。
「ところでお前は、相生町の坂田屋といふ酒屋を知つてゐるのか」
兩國を渡ると、平次は思ひ附いたやうに、こんなことを訊くのでした。
「其處へ行くんですか? 親分」
八五郎はひどく驚いたらしく、往來の眞ん中に立ち止りました。
「それが何うしたんだ、相生町の坂田屋に何んかあるといふのか」
「あつしも近いうちに一度坂田屋を覗く積りでゐましたよ」
「誰かお前を呼出した者でもあるのか」
「手代の喜三郎といふ良い男ですよ、手紙もよこし、本人も來ましたが、『どうも私は殺されさうな氣がして仕樣が無いから、一度坂田屋を覗いて下さい──』といふんでせう」
「フーム」
「よくある冗談だから、あつしはまだ行つてやらなかつたんです、そこで親分を呼出さうといふ惡戯でせう」
八五郎はすつかり呑込んだことを言ふのです。
「惡戯か本氣か知らないが、俺のところにも、助け舟を呼んで、二人から手紙が來たよ、どつちも坂田屋のものだが、手代の喜三郎では無いやうだ」
「へエ? すると、坂田屋の者は三人も殺されかけてゐるわけですね、──親分へ手紙をよこしたのは、誰と誰です」
「坂田屋の内儀と、伜の柳吉だよ」
「へエ、驚きましたね、相生町の坂田屋といふと、本所でも評判の物持だが、その家がまるで死神に憑かれたやうなものですね」
「兎も角行つて見よう、こいつは容易ならぬことかも知れない、──ところでお前へ來たといふ手紙は?」
「これですよ」
八五郎はでつかい煙草入から取出して平次に渡しました。
八つに疊んで先を曲げた半紙を開くと、中はかなり達者な帳面字で、
とかなりはつきりしたことが書いてあるのです。
「この手紙をいつ受取つたんだ」
「昨夜ですよ、二三軒飮み廻つて、家へ戻つたのは子刻近かつたでせう、叔母さんが、手紙が來てますよと言つてくれたのを、階子段の途中で聞いて、今朝目がさめてから、受取つて讀むとこれでせう、もう間に合やしません」
「誰が持つて來たんだ」
「使ひ屋だつたさうですよ、吉原の女郎衆の色文から選り出したのが、この凄いやつで、尤も、天地紅の色文だつて、中味は大抵無心状に極まつてゐるから、凄くないことはありませんがね」
八五郎の話には、また無駄が入ります。
「妙なことがあるものだな」
平次は考込んでしまひました。相生町の坂田屋から、三人の人間が、しかも同じ日に助けを呼んでゐるといふのは、どう考へても容易ならぬことのやうな氣がするのです。
「親分のところへ來た手紙は、どんなものです」
斯うなると八五郎の好奇心も相當のものでした。考込んでしまつた平次の前へ、手を出したり引込めたりして居ります。
「これだよ」
平次は紙入に挾んで置いた、二枚の紙片を取出して、八五郎に渡しました。
「こいつはあつしに讀めませんよ、喜三郎のはまともな日本の文字だけれど」
八五郎は煙たい顏をして、小菊に書いた女文字を、ためつ透しつするのです。
「それだつて日本の文字だよ、變體假名交りの草書だけれど、オランダや天竺の文字ぢやねえ」
「へエ、厄介ですね」
「女文字の方は相生町の坂田屋の内儀の手紙で──今夜といふ今夜、私は命を狙はれて居ります、なにとぞ親分樣の御助けを、と書いてある」
「へ、成程ね、さう言はれると、さう讀めないこともありませんね」
「もう一枚は──大福帳を千切つた東山半紙に、──助けてくれ、私は今夜殺される、──とたつたそれだけ、端つこに、相生町坂田屋伜柳吉と走り書きしてあるが、ひどくあわてたらしい」
「使ひは?」
「内儀の方は、小僧が格子から投り込んで行つたが、伜の手紙は宵の口に、お勝手の入口へ、石つころを載せてあつた相だ」
「で?」
「俺も八丁堀の笹野の旦那のところへ呼ばれ、御馳走になつた上、いろ〳〵相談を持かけられ、戻つたのは亥刻過ぎだ、お前でも居れば、直ぐ相生町まで飛んで貰ふところだが、こんな手紙には惡戯が多いから、醉つた勢で寢てしまひ、今朝になつて、妙に氣になり出したといふわけさ」
「へエ?」
「今朝になつて、妙に氣になつてならねえから、朝の仕度もそこ〳〵に飛出したのよ、お前のところへも、變な手紙が舞込んでゐると聽くと、こいつは一度覗いて見るのも無駄ぢや無からう」
「死神に憑かれたのが三人、今頃は手遲れになつたか、それとも首尾よく錢形の親分をおびき出して、手を拍つて笑つて居るか」
「そんなことなら宜いが」
「おや、向うから來るのは、石原の親分のところの、お品さんぢやありませんか」
「成程、お品さんだ、大層急いでゐる樣子だが──」
平次に取つては大先輩の御用聞、石原の利助が中風で寢込んでしまひ、その娘のお品が氣性者で、出戻り乍ら二十四五の良い年増盛りを、なり振り構はず、子分達を引き廻して、父親の利助の十手を守り通して居る姿だつたのです。
「ま、錢形の親分、丁度宜いところで」
川岸端を急ぎ足で來たお品は、平次と八五郎の姿を見ると、足を停めて、さすがに胸を押へました。
「こんなに早くから、何處へ行くんだ、お品さん」
「明神下の、親分のところへ、──現場に家の若い者も來て居ますが、錢形の親分さんを呼んで頂き度いと、手代の喜三郎がたつて言ふものですから」
「それぢや、相生町の坂田屋に、何んか間違ひでもあつたのか」
「よく御存じで、──伜の柳吉が殺されましたよ」
「あゝ矢張り」
八五郎は下手な八卦が當つたやうな顏をするのです。
相生町四丁目、竪川に臨んで、坂田屋はなか〳〵の繁昌した酒屋でした。主人の兵左衞門は、五十を越したばかりですが、心の病の持病があつて、寢たり起きたり、奧は若くて美しい後妻のお濱が采配を振ひ、店は叔父と言つても、遠縁の掛り人惠之助と、働き者の手代の喜三郎に任せて、手堅い商賣と、古い暖簾の誇を持ち續けて居ります。
「おや、錢形の親分が」
遠くから、手代の喜三郎が見附けると、ザワザワと店中が賑やかになり、叔父の惠之助が外へ飛んで出ました。
「親分さん、飛んだ御手數で、でも、よくお迎へが間に合つたことで」
薄禿げの四十前後、精力的な感じのする中年男です。
「其處でヒヨツクリお品さんに逢つたのだよ」
平次は巧みに誤魔化してしまひました、三つの手紙のことは、人に知られたくなかつたのでせう。
「では、どうぞ此方へ」
惠之助は、何が何やらわからずに、店の外を廻つて、裏の方へ案内しました。かなり大きい母屋ですが、家族が多いので、殺された伜の柳吉と、案内して居る叔父の惠之助は、二人だけ母屋に廊下で續いた離屋に寢んで居ります。
「今朝、雨戸を開けてくれた下女のお時の聲に驚かされて、二階から降りて來ると此有樣で─」
惠之助が自分の口から斯う説明するのです。離屋の階下は六疊と二疊の二た間だけ、二疊には大きい押入が附いてゐてそれが納戸代りに使はれて居る樣子です。
その奧の六疊の、裏に向いた腰の低い窓は明いて、それを背にして、若旦那の柳吉は、まだ赤に染んだまゝ死んでゐるのです。
二十三になつたばかり、それは良い男でした。色白の細面で、女の子に騷がれさうなのは瑾ですが、こんな男が思ひの外の激情家にある型です。身扮はキチンとして、袷も羽織も清らげに、傍に置いた紙入は、その頃でも贅澤にされた縫ひつぶしの紺の大ぶりなもの、中に小判五十兩と、二三兩の小粒の入つたまゝなのが氣になります。
紙入の下には、八つに疊んだ眞新しい手拭と、一と折の懷ろ紙。
「まるで、旅にでも出かける裝束ぢやないか」
平次がさう言つたのも無理のないことでした。
死骸の傷は、右の首筋を深々とゑぐつたもので、見事に大動脈を切つてあり、前にのめつて居たのは、後ろから突きのめしたか、それとも背中に窓の敷居が當つたためでせう。
「錢形の親分、匕首の鞘は疊の上に落ちて居ましたが、中身は見えませんな」
死骸の番をして居た、石原の子分がさう言ひます。此時はもう、後のことを平次に引繼いで引込思案のお品は歸つてしまつた樣子です。
「鞘には血の跡は無かつたのか」
「この通りで」
子分は鞘を取出して見せましたが、念のため懷紙で拭いて見ても、それには血の跡もありません。
「お前さんは、同じ離屋に寢泊りして居て、階下で人一人殺されるのを、知らなかつたといふのか」
平次は眞つ正面から惠之助の表情を見つめました。
「何んにも存じません、私は目ざとい方ではございませんが、それでも、喉を掻き切られて死ぬまでには、少しは聲を立てるとか、物音をさしたことゝ思ひますが──」
惠之助は自分の不爲なことを、大した潤色もせずに言ふのです。
「死骸は、最初から仰向になつてゐたのか」
「へエ、その座布團の上に顏を埋めて、俯向になつて居りました」
さう言へば柳吉の前には、存分に血を吸つて蘇芳に漬けたやうな、木綿物の座布團が一枚あります。
「これを一番先に見つけたのは?」
「下女のお時でございます、呼んで參りませうか」
平次がうなづくのを見て、惠之助はお勝手の方へ行きましたが、その間に八五郎は、何やら平次にさゝやかれて、何處ともなく飛んでしまひました。
「私に用事があるといふのは、お前樣けえ」
三十二三の、それは勇敢な山出しでした。
「若旦那が死んでゐるのを見附けたのはお前だつてね」
「その通りですよ」
「時刻は?」
「明るくなると、私は家中の雨戸を引くだ、もつと寢かしてくれなんて言つたつて、承知しねえことにして居るよ」
「で?」
「離屋へ來ると、向う側の雨戸は開いて、窓の下に若旦那樣が、血だらけになつて死んで居るでねえか、膽をつぶして大きな聲を出すと、二階から番頭さんが降りて來たゞ」
番頭といふのは、言ふまでもなく叔父の惠之助です。
「番頭さんは朝は早い方か──もつと寢かして置いてくれなどといふのは、まさか番頭さんぢやあるまいな」
「頭の禿げた、よく肥つた中年者は、大喰ひだから、朝寢坊にきまつて居ますだよ、二階から降りる時だつて、帶ひろ解けて、眼やにだらけで」
「よし、わかつた、お前は番頭さんとは餘つ程仲が惡さうだな」
「冗談におらを口説くから、あの助平野郎は大嫌ひだよ」
「これ〳〵何を言ふんだお時」
廊下から默つて居られなくなつて聲を掛けたのは、その噂の惠之助でした。
「まア、宜い、おかげでお前さんは下手人でないとわかつたやうなものぢやないか」
「へエ?」
平次の言葉を、惠之助は呑み込み兼ねた樣子です。
「夜中に人を殺した人間が、眼やにだらけになつて、樂寢をして居るものか、──惡口を言はれるのも、何んかの役には立つぜ」
「へツ、そんな事で」
叔父の惠之助は擽ぐつ度い顏をして默つてしまひました。
「ところで、昨夜、一番後で、若旦那の姿を見たのは誰だ」
平次は問を改めました。
「私かも知れませんよ、亥刻(十時)近くなつて、雨戸を閉めに來ると、窓を開けたまんまで、その窓際に凭れた若旦那が、薄寒いのに後ろから月の光を浴びて、灯もつけずに考へ事をして居ましたが、私が、窓の戸を閉めませうかと言ふと、後で俺が閉めるから、此まゝにして置いてくれといふから、默つて母屋へ引返してしまつたゞ」
「それつ切りか」
「それつ切りだが、樣子に變なところがあつただよ、若い人が灯もつけずに、薄寒い窓で考へ事をして居るのも變だし、今朝になつて見ると、窓の外に若旦那の草履が揃へてあるでねえか」
「その草履はどうした」
「草履には血が附いて居たし、その草履の側にも、血の附いた紙切が落ちて居たやうに思ふけれど、少し目を離してゐるうちに、誰が片附けたか見えなくなつただよ」
「その紙切の中をお前は見なかつたか」
「手紙か何んかだよ、見たつて私には讀めやしません」
「そいつは惜しかつたな」
平次はひどく口惜しがりました。
「尤も、小僧の佐吉どんが見たかも知れません、あの子はたつた十六だけれど、物の本が好きで、四角な字も讀めるから」
「そいつは有難い、早速小僧の佐吉を呼んでくれ」
平次は救はれたやうな心持でした。その血染の草履と側にあつた、手紙らしいものを見さへすれば、事件が苦もなく解決するやうな氣がしたのです。
「親分さん」
不意に聲を掛けたものがあります、それは少し骨張つては居るが、蒼白い若い男、
「手代の喜三郎ですよ」
此時戻つて來た八五郎がそつと囁いてくれます。
「相濟みません、私は怖かつたんです」
「どうしたといふのだ、皆んな話して見るが宜い」
「窓の外にあつた草履と、血の附いた紙片を隱したのは、この私でございます」
「何を言ふのだ」
平次もさすがに驚きました。手代の喜三郎は容易ならぬことを打ち明けようとして居るらしく、緊張し切つて、ワナワナ顫へてさへ居るのです。
「惡いことで御座いましたが、若旦那の書いたものを、この私が隱してしまひました、この通り、思ひも寄らぬ怖ろしいことが書いてあつたのでございます」
「どれ」
平次は喜三郎の差出した、一枚の半紙を取上げました。その端つこには不氣味な血がにじんで居り、文面もひどく亂れて居りますが、
と讀めるではありませんか。
「草履は此處にございます、血が附いて居りますが、新らしい草履で、若旦那はこれを履いて逃出す氣だつたに違ひありません」
手代の喜三郎は斯う言ひ切つて、安心したやうにホツと太息をつくのです。
「それぢや詳しく聽かう」
平次は多勢の人を追つ拂つて、手代喜三郎とたつた二人になつたのを見極めると、新しい問を進めました。
「どんなことを申上げれば宜いでせう親分」
喜三郎は神經質らしく小鬢を掻いたり、襟を直したりして居ります。蒼白いお店者で、いかにも弱々しく善良さうでさへあります。
「お前は何だつて、八五郎のところへ行つたり、今晩殺されるかも知れないなどと、物騷な手紙を出したんだ、──一方殺された若旦那はあべこべにお前に殺されるかも知れないと言つてゐるぜ」
平次は遂に訊くべきことを訊かうとしたのです。この謎が解けないうちは、柳吉を殺した厄介な謎は永久に解けさうにもありません。
「私は、若旦那に殺されかけて居りました」
「何?」
「二度も三度も、私は殺されかけました、若旦那に頼まれた土地のやくざ者に取卷かれて、命辛々逃出したり、物置の中で、上から重いものを落されたり」
「それはどういふわけだ」
「若旦那は、大旦那の眞實の子ではなく、遠い御親類から貰はれた人ですが、後添の御内儀と仲が惡い上、近頃大旦那に逆らつてばかり居りますので、明日は親類の方々を呼んで、その席上で離縁になることに決つて居りました」
追ひ出される前の若旦那の柳吉が、何を企らんだか、平次にも想像が出來ないことはありません。
「で?」
平次は熱心に先を促しました。この手代の打明け話が、餘程面白かつた樣子です。
「若旦那はそれを、私とお内儀さんのせゐだと思ひ込みました。私はこの家の遠縁で、お内儀さんと血の繋りがあるので、お内儀とぐるになつて、お孃さんを手に入れ、この家の跡取にならうとして居ると思ひ込んだのでせう」
「──」
「若旦那は取引先の義理で近頃この家に入つた養子ですが、私は白雲頭からの奉公人で、お孃さんのお葉さんとは主從とは言つても幼な馴染も同樣、自然親しくも口をきいて居ります。主從の義理と、友達のやうな親しさと、男と女の間の戀心とは、みんな違つたもので御座います。若旦那はそんな事までは氣が廻らず、一途に私を怨んで、明日はいよ〳〵親類會議を開いて、自分が追ひ出されるときまると、日頃の氣象では何をやり出すかわかりません。今夜一と晩の恐ろしさに、私は八五郎親分にあんな手紙を差上げてしまひました」
「──」
「私は若旦那に殺されるやうな氣がしてならなかつたのです。で、店二階へ一人で寢るのが怖さに、小僧の佐吉に頼んで、一と晩だけ、同じ部屋で一緒に寢て貰ひました、裏の佐吉の部屋です、これは當人の佐吉に訊いて下さればよくわかります」
手代の喜三郎は、重荷をおろしでもしたやうに、ホツと肩を落しました。若旦那の柳吉が何を書かうと、裏の小部屋に飛込んで、小僧の佐吉と一緒に一と晩を過したとわかれば、この男は下手人の疑から除外されることになるでせう。
「その小僧の佐吉は?」
「十六になつたばかり、眠いのと食べたいだけの年頃ですが、不思議に目ざとい子で、昨夜も私が少し腹加減が惡くて、お下へ行つた時も、眼をさまして、聲を掛けて居りました」
「あとで、その佐吉とかいふ小僧さんに逢つて見よう、ところで、若旦那は窓の中で自分で首筋を切つて死んでゐるのに、窓の外から庭へかけて、ひどく血がこぼれてゐるのはどういふわけだらう」
平次は先刻からそれを氣にしてゐたのです。縁の下の草履に血が附いてゐたばかりでなく、庭石も垣根も、犬小屋も羽目板も、まことに斑々たる血で、故意にブチ撒きでもしなければ、こんなに血がこぼれる筈はありません。
「私もそれに氣が附いて居りました、今朝早く若旦那の死んでゐるのを見附けたときから、此通りでございます、ことに、犬小屋に居た筈の白犬が、綱を切つて飛出し、血だらけになつて居りました」
「その犬は何處に居るんだ」
「何處かへ行つてしまつたやうで、ちよいとお待ちを願ひます、癖の惡い犬ですから、見附けて參りませう」
喜三郎はそんな事を言つて、外へ出て行きました。
「ね、親分」
その間に八五郎は、平次の側ににじり寄つて、耳に口を持つて來ました。
「何んだ、何んか面白いことがあつたのか」
「面白いことばかりですよ、第一、此家のお孃さんといふのは、そりや大變」
「何が大變なんだ」
「十八になつたばかりといふのに、なか〳〵の確りもので、若旦那の柳吉は、手代の喜三郎に殺されたに違ひない──とはつきり言ふんです」
「フーム、たつた十八の小娘が、そんな大膽なことが言へるのかな」
「逢つて見て下さい、きりやうは大したこともないが、妙に鋭いところがあつて、磨ぎすました刄物のやうな娘ですよ、そのくせ滅法可愛らしいところがあつて、あの娘に惚れると、怖いことになりさうですね」
八五郎は一とかど女を知り拔いてでもゐるやうなことを言ひます。
「いろ〳〵うるさい事がありさうだな、兎も角、一應皆んなに逢つて見るとしようか」
平次も此邊で、定石通り運んで見る氣になつたのです。
主人の兵左衞門は二三日は容態が惡い上、養子の柳吉の變死で、すつかり興奮してしまひ、朝から内儀のお濱と、娘のお葉が附きつ切りで介抱して居りました。平次はわけを話して二人の女を遠ざけ、ほんの一寸だけといふ條件で、寢たまゝの病人と相對したのです。
「この通りの不體裁なところをお目にかけて相濟みませんが、何分少しのことでも、動悸がひどくなりますので」
兵左衞門はさう言つて、僅かに枕から顏を上げました。蒼黒いむくんだ顏を見ただけでも、これはなか〳〵の容體といふことが、素人の平次にもわかります。
「飛んだ人騷がせで、お氣の毒でしたね、──早速二つ三つ訊かして下さい」
「へエ、へエ、何んなりと、私の存じて居ることなら」
「養子の柳吉さんを、今日は親類會議を開いて、離縁することになつて居たさうですね」
「へエ、それに相違ございません、今日親類方に寄つて頂く筈でしたが」
「何んか氣に入らないことでもあつたので?」
「氣に入らないことばかりで御座います。死んだ者の事を惡く言ふやうですが、金費ひが荒い上に、酒呑みで、勝負事が好きで、それに、私の家内、柳吉の爲には母親になるお濱との仲がうまく行きません」
「それ丈けのことで」
「それから一番いけないのは、店の金を三百兩ほど持出して、私にも相談をせずに、實家の仕事に融通してしまひ、その仕事も縮尻つてしまつて、取り返す當ても無くなつてしまひました。これは商人の養子として、一番愼しまなければならないことで御座います」
「成程、さう言ふものですかね」
「養子の柳吉を贔屓にして居るのは、娘のお葉位のもので御座います、許婚の仲ではあるが、あれは妙に氣が合ふ樣子で」
「そのお孃さんは、昨夜、此室を動かなかつた相ですね」
「私の看病には、娘が一番で、これは家内もうまく行きません、氣分のひどく惡い時や、一と晩寢つかれない時は、氣の毒だが、娘に看病して貰ひます、昨夜も宵からひどく氣持が惡くなつて、夜の明けるまで、娘を側から離しませんでした」
「いや、よくわかりました、ではお大事に」
平次はそんな事で切上げる外は無かつたのです。
病間を出ると、薄暗い廊下で、誰やら小手招きして居ります。それに誘はれるやうに、そつと納戸に滑り込むと、其處には若い娘が、世にも緊張した顏をして、平次を待つて居るではありませんか。
「お孃さん?」
「内證で申上げ度いことがあるんです、聽いて下さるでせうか、錢形の親分」
お葉は少し息を彈ませて居ります。十八といふにしては、やゝ小柄ですが、表情にも仕草にも、子供らしい破綻はなく、いかにもませた感じです。きりやうは決して良い方ではなく、淺黒い顏と、大きい眼が印象的で、赤い唇の曲線が、妙に情熱を感じさせます。
「お孃さんは、昨夜は旦那の病間で、一と晩過したんでせう」
「え、何處へも出られなかつたんです、父の病氣も惡かつたけれど、私が逃出さうとするのを氣取つて、母さんが動かさなかつたんです」
「逃げる?」
「え、私と柳吉さんは、昨夜、此家を逃げ出す約束だつたんです」
「それは、本當か、お孃さん」
平次も大方は察し、喜三郎の言葉にもそれは匂ひました。前後の樣子を考へると、娘の飛躍的な言葉も、決して出鱈目とは言へません。
「明日の親類方の寄合で、あの人は追出されるにきまつて居ます、私が何んと言つても通ることではございません、──坂田屋の身上はどうでも宜いが、お前とは別れ度くない、二人で此家を逃出して、木更津の叔母さんを頼つて行き、暫らく成行を見よう──といふことになりました。父はたつた一人娘の私を捨て切れる筈も無いし、精々半年か一年の辛抱で何うかなることだらうと思ひ、二人はそつと旅仕度をし、夜中に家を逃げ出す約束でした、それを感附いた樣子で、母さんはどうしても、父の病間から出してくれず、氣を揉みながら、夜を明してしまひました。するとあの騷ぎです、肝心の柳吉さんは殺されてしまつて──」
張り詰めた氣もゆるんだか、お葉はシクシクと泣くのでした。氣象者らしい娘が、意氣地もなく居崩れて、それはいかにも哀れ深い姿です。
「それで、いろ〳〵の事がわかつたが、柳吉を殺したのは、喜三郎に違ひないと、お孃さんは言つた相ぢやないか」
「申しました、全くそれに違ひないのです。──あの人は怖い人です、母さんの遠縁で、この家の跡取をねらひ、柳吉さんを追出しにかゝりましたが、私がどうしても柳吉さんを諦らめないので、たうとう柳吉さんを殺してしまつたに違ひありません。あの人を縛つて下さい、親分」
お葉は必死と絡むのです。身體は二三尺離れて居りますが、此小娘の意志の力は相當で、グイグイと平次を引摺つて行きます。それは泣き濡れた眼でも、可愛らしい唇でもなく、この娘の持つて居る、人並すぐれた全身的の氣力とも言ふべきでせうか。
「親分さん、何んか御用で?」
内儀のお濱は縁側に膝をつきました。三十そこ〳〵の磨き拔かれたやうな年増で、かりそめのポーズも、なか〳〵に氣のきいた美しさです。
「若旦那の柳吉さんは、お孃さんとしめし合せて、昨夜此家を逃出す氣だつた相ですね」
ズバリと言つてのけると、
「私もそれを心配して、一と晩あの娘から眼を離さないやうにして居りました」
内儀は驚く色もなく、斯う自然に答へるのです。
「私の家へ、あんな手紙を屆けたのは、どういふわけでした」
小菊に書いた、SOS、これは冗談や惡戯では濟まされません。
「最初、娘と柳吉と、二人で逃出す相談があるとは氣がつかず、柳吉の樣子が變なのと、何んとなく果し眼だつたので、明日の親類方の相談の前に、私が殺されるのかと思ひまして、──親分さんのところへ、人騷がせな手紙などを差上げて、後悔いたしましたが」
お濱はしをらしく首を垂れるのです。
それから平次は、小僧の佐吉を搜して、漸く物置に居るのを見附けました。
「ちよいと、聽き度いことがあるが」
「へエ、どんなことでせう」
十六の中僧と言つて良い位、あまり賢こくは無ささうですが、身體は相當です。
「お前は昨夜、番頭の喜三郎さんと同じ室に寢たんだつてね」
「へエ、──まだ宵のうちでしたが、今夜はイヤな事があるから、氣の毒だが此處へ泊めてくれと言つて、自分の夜具と布團を運んで來ましたよ」
「夜中に起きなかつたのか」
「私は起きませんが、番頭さんはお腹が惡いとかで一度起きたやうです、でも、私は一度目を覺したけれど、直ぐ眠てしまつて、床へ戻つたのは知りません」
「夜中に犬は吠えなかつたか」
「氣がつきませんよ」
「あの犬は癖が惡い──と番頭さんは言つて居たが、そんなに癖が惡いのか」
「外の者にはよく吠えますが、若旦那と番頭さんと私にはよく馴れて居ます」
「何處に居るんだ、お前は知らないか」
「夜は繋いで置くんですが、今朝は犬小屋には居なかつたやうです、それに綱も變つて居たやうです」
「犬を縛つてある綱が變つて居たのか」
平次は何やら考へて居ります、が、丁度その時、
「錢形の親分、──妙なものが見附かりましたが」
番頭の喜三郎は、事あり氣に飛んで來たのです。
「?」
「裏の荒物屋の生垣に、これが絡まつて居た相です」
「匕首ぢやないか」
「しかも血と泥に塗れて」
手に取つて見ると、長々と紐のついた匕首で、刄には斑々たる血が附いて居り、紐も所々血に塗れて、三尺ほどのところでフツと切れて居るのです、
「あツ、今朝犬を繋いでゐたのは、その紐ですよ」
小僧の佐吉は素つ頓狂な聲を出します。
「こいつは一體どういふわけでせう親分」
その後ろから長んがい顎を出したのは八五郎でした。
「曲者は、若旦那を殺した後で、血のついた匕首を、犬を縛つた紐に結んだわけだ」
「どうして、そんな事をしなきやならなかつたんでせう」
八五郎は尚ほも追及しました。
「得物を隱したかつたのかな、犬を繋いだ紐に結んで置くと、犬は何處かに持つて行くに違ひない、──それにしても鞘を取つて置いたのはどういふわけだ」
この謎は平次にも解け相もありません。
「親分、素人量見ですが、私も考へたことがございます、申しても宜しいでせうか」
番頭の喜三郎は恐る〳〵顏を出しました。
「宜いとも、思つたことがあるなら、遠慮をせずに話してくれ」
「それでは申しますが、若旦那は、お孃さんと夜逃げの約束をしたが、何時まで待つてもお孃さんが來なかつたので、お孃さんが心變りをしたものと早合點し、明日の親類方の御相談のことも考へて、フラフラと死ぬ氣になつたのぢやございませんか」
「?」
「その證據は、匕首は若旦那の品で、犬を縛つてある紐も、太くて丈夫なのを止して、細くて引けばすぐ切れさうなのと變つて居ります、それから──」
「?」
「若旦那を殺した下手人が外にあれば、刄物なんか、隱したければ自分で持つて逃げるか、すぐ前の竪川に投り込めばすむことです。刄物──が死骸の側に轉がつて居れば、すぐ自殺とわかつてしまひますから、よく馴れた白犬の紐を變へ、自分の首筋を斬つた苦しい中から、匕首を犬の首の紐に結んで追ひやつたのぢやございませんか」
喜三郎の智惠の逞ましさに、平次は少しお株を取られた樣子です。
「若旦那がどうして、そんな細工をしなければならなかつたのだ?」
「私を下手人にし度かつたのでございませう、若旦那は私が憎くてたまらなかつたのです、──この家を追ひ出されるのも、私のせゐだと思ひ込み、坂田屋の身上も、お孃さんのお葉さんも、私に奪られるに違ひないと思つたことでせう、──私は最初は若旦那に殺されるに違ひないと思ひました、あの眼の色は容易でなかつたのです」
喜三郎はホツと大きく溜息を吐きました。平次の叡智を征服した、この男の智惠の逞ましさに、八五郎も小僧の佐吉も、あつけに取られて聽いて居ります。
後ろの障子が動いたやうです。チラリと人の影がさしました、娘のお葉も、其處で默つて聽いて居たに違ひありません。
平次はそれつ切り本所を引あげてしまひました。八五郎は不服らしい顏をして居りますが、若旦那の柳吉が自害したのだとわかると、誰を縛りやうもありません。
「あれで良いのですか、親分、あつしには腑に落ちないことばかりですが」
時々は思ひ出したやうに、平次に訊ねましたが、
「いや、──時節を待つ外はあるまいよ」
平次の應へにも妙な含みがあります。
それから暫く經つと、相生町の坂田屋で、新しく養子がきまつたといふ噂が傳はりました。その養子──行く〳〵は娘のお葉の婿になるのは、手代の喜三郎だつたことは言ふまでもありません。
「親分、大變なことを聽き込みましたよ」
八五郎が飛込んで來たのは、それから又一月も後のこと、世の中はもう晩春──初夏といふすが〳〵しい時分のことです。
「どうしたんだ、八」
「こいつは本物の大變ですよ、坂田屋の婿にきまつて、いよ〳〵祝言といふ前の日、あの手代の喜三郎は毒を呑んで死んでしまひましたぜ」
「何んだと?」
平次にもそれは豫想外でした。富貴と美人と一緒に手に入れた喜三郎が、祝言の前の晩自害するといふことは、どう考へたところで承服の出來ないことです。
「行つて見よう、そいつは何んか曰くがありさうだ」
「果報過ぎてフラフラと死ぬ氣になつたんですね、親分」
「人間は果報過ぎて死ぬものかな」
「さうでせうか」
二人が相生町の坂田屋につくと、店は重なる不幸にごつた返して居りましたが、店を入ると、もう一度、娘のお葉が、チラリと姿を見せて、何處かへ隱れてしまひました。
「これは、錢形の親分、飛んだお騷がせをしますが、今度は間違ひもなく、喜三郎が自分で毒を呑みましたんで」
迎へた番頭の惠之助は、苦笑ひをして居ります。
「兎も角も、佛樣を一と目見たいが」
「へエ宜しう御座いますとも、どうぞ此方へ」
喜三郎の死骸は入棺して内儀のお濱が線香などをあげて居りましたが、平次と八五郎の姿を見ると、ツイと縁側へ出てしまひました。
「死ななきやならない事でもあつたのかな」
「飛んでもない、明日はお孃樣と、祝言ときまつた喜三郎が、死ぬ氣になる筈はございません、昨夜風邪の氣味だと言つて呑んだ玉子酒に鼠捕りが入つて居た樣子で」
「?」
「主人がやかましくて、此家ではそんな物騷なものを買つた覺えはありませんので、いろ〳〵藥屋で調べましたところ、二た月ばかり前に、喜三郎が自分で石見銀山を買つたことがある相です、多分それを、風邪藥と間違へて呑んだことでせう、何しろ明日祝言といふので、氣持も上吊つて居りましたから」
「傍には誰も居なかつたのか」
「お孃樣が、何彼と明日のことを相談して居たやうです、花嫁花婿と言つても、内輪のことですから、遠慮はありません」
「そのお孃さんの見て居る前で死んだことだな」
「へエ、まア、そんなわけで」
「そのお孃さんに逢ひ度いが」
「先刻、親分さん方の顏を見ると、あわてゝ、二階の御自分の部屋へ行つたやうで──」
「それ行つて見ろ」
平次と八五郎は二階へ飛び上りました。いきなり障子を開けると、正面の長押にブラ下がつた、絢爛たるもの、それは娘のお葉が、自分の扱帶で首を吊つて居た姿だつたのです。
取おろして介抱すると、幸ひ早く手が廻つたので、間もなく息を吹き返し、不思議さうに四方を見廻して居ります。
「お孃さん、心配することは無いぜ、二人の許婚に死なれて氣を落すのも無理もないが親孝行でもして、百までも生きる工夫をすることだ──それぢや俺は歸るよ、宜いか、お孃さん、死ぬ氣なんかになつちやいけないよ」
平次は驚いて飛んで來た繼母のお濱にお葉を引渡すと、八五郎を促して、本所の往來へ、呑氣さうに踏出すのです。
× × ×
「親分、これで宜いんですか、ね、親分」
八五郎は後から追つかけます。
「宜いんだよ、解つて居るよ」
「喜三郎は本當に自害したのでせうか」
「いや、そんなことがあるものか、喜三郎は殺されたのだよ」
「へエ?」
「誰にも言ふな、最初若旦那の柳吉は、手代の喜三郎に殺されたのだ。犬の綱に匕首を結んだのは、喜三郎の細工だよ、小僧の佐吉と一緒の部屋で寢て、夜中に拔出して仕事をしたのさ」
「へエ」
「首尾よく俺を言ひくるめた積りで居たらしいが俺は潮時を見て居たのだ。が、あの娘は我慢が出來なかつた、喜三郎と祝言する事を承知して油斷させ、いよ〳〵祝言の前の晩になると、切羽詰つて風邪藥と鼠捕りを摺り換へ、喜三郎を殺して柳吉の仇を討つたのだ」
「へエ、あの娘がね」
「あの娘は氣象者だ、それ位のことはやり兼ねないが、俺が坂田屋へ行つたのを見ると、さすがに氣がとがめて、死ぬ氣になつた」
「それぢや、あのまゝ許してやるわけで」
「許しやしないよ俺は──この錢形平次は何にも氣が附かなかつたのさ、柳吉の死んだのは自殺、喜三郎の死んだのも果報負けの自殺」
「お葉が首を吊つたのは?」
「許婚が二人死ねば、若い娘はそんな氣にもなるだらうよ」
「へエ、呆れたものだ」
「呆れついでに一杯つき合へ、今日は幸ひ少し持つて居るよ」
平次はさう言つて、懷の中の小錢を鳴らすのです。それを投らずに濟んだのが、反つて嬉しさうでもあります。
底本:「錢形平次捕物全集第五卷 蝉丸の香爐」同光社磯部書房
1953(昭和28)年5月25日発行
1953(昭和28)年6月20日再版発行
初出:「オール讀物」文藝春秋新社
1953(昭和28)年4月号
※題名「錢形平次捕物控」は、底本にはありませんが、一般に認識されている題名として、補いました。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:門田裕志
2015年5月6日作成
2017年3月4日修正
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