『姥捨』あとがき
太宰治



所收──「葉」「列車」「I can speak」「姥捨」「東京八景」「みみづく通信」「佐渡」「たづねびと」「千代女」


 この短篇集を通讀なさつたら、私の過去の生活が、どんなものであつたか、だいたい御推察できるやうな、そのやうな意圖を以て編んでみた。ひどい生活であつたが、しかし、いまの生活だつてひどいのである。さうして、これから、さらにひどい事になりさうな豫感さへあるのである。

 卷末の「千代女」は、私の生活を書いたものではないが、いまの「文化流行」の奇現象に觸れてゐるやうにも思はれるので、附け加へて置いた。

昭和二十二年早春

底本:「太宰治全集11」筑摩書房

   1999(平成11)年325日初版第1刷発行

初出:「姥捨」ポリゴン書房

   1947(昭和22)年610日発行

入力:小林繁雄

校正:阿部哲也

2012年17日作成

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