草舍にて
三好達治



めじろ めじろ

めじろ

冬の端山を渡りくる

めじろの群れのおしやべりは……


 それはまるで夏の日の日の暮れ方、とある街角をくる風鈴賣りの、あの毀れ易い硝子の器を百も吊るした、人の肩に擔はれてくる小さな輕い華やかな店さきの、音樂! その商品の一つ一つが互に囁きあつてゐる、ひそやかなれども騷がしい、いつも一つのものでありながら、けれども單調といふのでない、即興歌のより集り。


フランシス・ジャムは病めりと

ここまでも遠きたよりは聞えけり

めじろなく相模の端山

底本:「三好達治全集第一卷」筑摩書房

   1964(昭和39)年1015日発行

底本の親本:「定本三好達治全詩集」筑摩書房

   1962(昭和37)年330

初出:「四季 四一號」

   1938(昭和13)年11

入力:kompass

校正:榎木

2017年1226日作成

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