諷詩
─人魚詩社の人たちに與ふ─
萩原朔太郎



友だちはひどく歪んだ顏をしながら、

しらみに向つて話をした。

『虱や、ご生だからたからないでおくれ、

私にしつつこくしないでおくれ、

おまへはほんとに不愉快だ』

そして痒いところへ手をやらうともしなかつた。

この友だちは聖人だ。

底本:「萩原朔太郎全集 第三卷」筑摩書房

   1977(昭和52)年530日初版第1刷発行

   1986(昭和62)年1210日補訂版第1刷発行

入力:kompass

校正:小林繁雄

2011年625日作成

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