純銀の賽
萩原朔太郎



みよわがさいは空にあり、

空は透青、

白鳥はこてえぢのまどべに泳ぎ、

卓は一列、

同志の瞳は愛にもゆ。


みよわが賽は空にあり、

賽は純銀、

はあとの「A」は指にはじかれ、

緑卓のうへ、

同志の瞳は愛にもゆ。


みよわが光は空にあり、

空は白金、

ふきあげのみづちりこぼれて、

わが賽は魚となり、

卓上の手はみどりをくむ。


ああいまも想をこらすわれのうへ、

またえれなのうへ、

愛は祈祷となり、

賭博は風にながれて、

さかづきはみ空に高く鳴りもわたれり。

─八月三十一日─

底本:「萩原朔太郎全集 第三卷」筑摩書房

   1977(昭和52)年530日初版第1刷発行

   1986(昭和62)年1210日補訂版第1刷発行

入力:kompass

校正:小林繁雄

2011年625日作成

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