初夏の祈祷
萩原朔太郎



主よ、

いんよくの聖なる神よ。


われはつちを掘り、

つちをもりて、

日毎におんみの家畜を建設す、

いま初夏きたり、

主のみ足は金屬のごとく、

薫風のいただきにありて輝やき、

われの家畜は新緑の蔭に眠りて、

ふしぎなる白日の夢を畫けり、

ああしばし、

ねがはくはこの湖しろきほとりに、

わがにくしんをしてみだらなる遊戲をなさしめよ。


いま初夏きたる、

野に山に、

榮光榮光、

榮光いんよくの主とそのしもべにあれ。

あめん。

─一九一四、五、八─

底本:「萩原朔太郎全集 第三卷」筑摩書房

   1977(昭和52)年530日初版第1刷発行

   1986(昭和62)年1210日補訂版第1刷発行

入力:kompass

校正:小林繁雄

2011年625日作成

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