鐵橋橋下
萩原朔太郎



人のにくしといふことば

われの哀しといふことば

きのふ始めておぼえけり

このまちの人なになれば

われを指さしあざけるか

生れしものはてんねんに

そのさびしさを守るのみ

母のいかりの烈しき日

あやしくさけび哀しみて

鐵橋の下を歩むなり

夕日にそむきわれひとり

(滯郷哀語篇より)

底本:「萩原朔太郎全集 第三卷」筑摩書房

   1977(昭和52)年530日初版第1刷発行

   1986(昭和62)年1210日補訂版第1刷発行

入力:kompass

校正:小林繁雄

2011年625日作成

青空文庫作成ファイル:

このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。