絶句四章
萩原朔太郎


色白の姉に具されて。今日もまた昔談や。

 あれいま。逍遙うんじて歸る山路。

 遠音に渡るかほととぎすの。


つみとりてそぞろ心や

      くちづけさはに

 願ふは君が髮ぐさ飾るやさし七草。


あかつきや破れし鐘樓に。肩ねびし人と登りぬ

 見よ君。指ざす方に日は出らめ。

 ああかの野路こそいと戀ひしや。


行きずりの小草の中に。床し小扇

      誰がすさみぞや

 これ優しぐさ『秋の恨み』と。

底本:「萩原朔太郎全集 第三卷」筑摩書房

   1977(昭和52)年530日初版第1刷発行

   1986(昭和62)年1210日補訂版第1刷発行

入力:kompass

校正:小林繁雄

2011年625日作成

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