小祠
宮沢賢治


赤き鳥居はあせたれど

杉のうれ行く冬の雲

野は殿堂の続きかな


よくすかれたる日本紙は

一年風に完けきと

雪の反射に知りぬべし


かしこは一の篩にて

ひとまづそこに香を浄み

入り来るなりと云ひ伝ふ


雪の堆のなかにして

りゝと軋れる井戸車

野は楽の音に充つるかな

底本:「新修宮沢賢治全集 第六巻」筑摩書房

   1980(昭和55)年215日初版第1刷発行

入力:junk

校正:土屋隆

2011年514日作成

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