駅長
宮沢賢治


ことことと行く汽車のはて

温石いしの萱山の

上にひとつの松ありて

あるいは雷にうたれしや

三角標にまがへりと

大上段に真鍮の

棒をかざしてさまよへり


ごみのごとくにあきつとぶ

高圧線のま下にて

秋をさびしき白服の

酒くせあしき土木技手

いましも汽車を避け了へて

こなたへ来るといまははた

急ぎガラスを入りにけり

底本:「新修宮沢賢治全集 第六巻」筑摩書房

   1980(昭和55)年215日初版第1刷発行

入力:junk

校正:土屋隆

2011年514日作成

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