訓導
宮沢賢治


早くもひとり雪をけり

はるかの吹雪をはせ行くは

木鼠捕りの悦治なり


三人ひとしくはせたちて

多吉ぞわらひ軋るとき

寅は溜りに倒れゐし


赤き毛布にくるまりて

風くるごとに足小刻むは

十にたらざる児らなれや


吹雪きたればあとなる児

急ぎて前にすがりつゝ

一列遠くうすれ行く

底本:「新修宮沢賢治全集 第六巻」筑摩書房

   1980(昭和55)年215日初版第1刷発行

入力:junk

校正:土屋隆

2011年514日作成

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