脚
吉川英治
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「彦太承知だの」
「む、行く」
「二十日の寄合いにゃ、きっと、顔を出してくれや。村の者あ、おぬしが力だ。腕も弁もあるしの、学問だって、青梨村じゃ、何というても、彦太だもんのう」
大庄屋の息子と、老百姓が二、三名と、それを焚きつけてる郷士の伜とが、こっそり籾蔵から帰って行った。
彦太は、家の裏口を見張りながら、時候ちがいの冷露で、黒い枯れッ葉になった桑畑へ消えて行く人々を、見送っていた。
この子四ツじゃに
糠より軽い
軽いはずだよ
稗糧と夫婦の坊子じゃもの
坊子にゃ出ぬ乳も
運上にゃしぼる
藁で髪ゆい、縄帯しめて──
痩せた畑を、小作の子が、聞き覚えの味噌煮唄をどなって通った。彦太は、この痩地と百姓との宿命を、呪うように、腕ぐみしていた。日が暮れても、たね油の灯が燈せない村だった。
「いッそ、鍬を捨てて、馬口労か、木挽かになろうとしても、役銀をとられるし、油屋、酒屋も株もの、川船で稼げば川運上、雑魚を漁っても、網一つに幾らの税だ。──とても食えぬと、他領へ逃げるにも、もし捕れば打首。子を生めば胞衣金、死ねば寺金。──一体、どうしたらいい百姓だ」
と考えた。
飢えて死ぬより、強訴だ、一揆だ!
と今、囁いて行った人々の言葉だの、もがいている眼つきだのが、ひしと、心を噛む。
「どうしても、二十日には、顔を出さねばならないかな。俺が出れば、弱音はふけぬ。自分の火が、村を何十ヵ村も、火にしてしまうが──」
彦太は、自分の熱っぽい性格が怖かった。
一人の犠牲で、何十ヵ村の飢えが、救えるものならいいが、この真田伊賀守の領土では、繭糸一揆だの、千曲川の運上騒動だの、また、領主がお庭焼の陶器に凝って、莫大な費用の出所を、百姓の苛税に求めたので起った須坂の瀬戸物一揆だのと、彦太がもの心ついてからでも、数えきれぬ程、むしろ旗が騒いだが、一つも、成功した例がなかった。
人国記にもいわれてる通り、由来信州人は、智慾は旺なるも、争気に富み、郷党和せず、という欠陥があるのと、痩地の十万石で、貧乏財政をやりくりしてる藩役人は、狡策に長け、一揆の対抗には狎れきっているし、そういう方面でも、兵法の家筋だった。だから、騒いだ後は、いつも、千曲川が赤くなるほど、首謀者の首が、並べて斬られ、結局、百姓は又、何も得るところはなく、
坊子にゃ出ぬ乳も
運上にゃしぼる
と、味噌煮唄でもうたって、欝憤をやるだけのものになってしまう。
近年は、その真田伊賀守の家臣で、佐久間修理という名が、百姓たちの怨嗟の的だった。修理は、号を象山といい、学者で、砲術家で、経世家だと聞えている。一頃は、目付役兼検見方として、千曲川を改修し、山には檜を植林し、低地には、林檎苗を奨励した。又、温泉の利用だの、火薬の製法だの、葡萄酒の作り方などをも、才学にまかせて試みた。それはいいが、定例の助郷のほかに、毎日、植林その他、無給仕事に、お助けと称して一家の働き手を徴発される百姓たちは、食えない上に、食えなくなった。
その佐久間象山が、やっと、藩命で京坂の方へ、派遣されたので、百姓たちは、疫病神でも追ったように、
「佐久間ばらい」
といって、祝ったくらいだったが、間もなく、その象山の献策とかで、藩の松代では、大砲だの小銃、弾薬、科学器械などを、金もないのに買いこんで、毎日、千曲川では、調練兵が、どかん、どかん、ぶっ放していた。
当然、その金は、百姓の上へ、税となってかかって来た。百姓たちは、四斤砲一発、いくらという値を知ってから、どかあん、という音を聞くと、自分たちの膏血がぶッぱなされるように、気がひけた。
武器の購入は、年々、莫大な額だった。国事御多端の秋──という諭令が出たが、どう多端なのか、尊王攘夷ということばや、京都江戸あたりの騒がしいくらいな事は、耳にもしてるが、百姓たちには、その必然性が、認識できなかった。
で──飢え死にするよりは、と何度も苦い経験のある一揆を、又ぞろ、繰返すらしい不穏さが、何十ヵ村の同じ痩せ村にうずいていた。
彦太の家は、割に、戸数の少ない村の小庄屋だったが、遺伝的に、血の気の多い人間を代々生んでるので、萎縮してる百姓たちからは、事があると、頼られ、反対に、藩からは、睨まれていた。
「親父が亡くなって、まだ、百日も経たねえだから──」
と、彦太は、それを理由に、廻状がきても、寄合いに出なかったが、もう、退ッぴきならないものが、彼へ迫っていた。そして、顔を出せば、三代前の祖父のように、狂的に、火となって、闘うだろう事は、自分の血液が予感しているが、さて、その祖父のやった犠牲が、どれ程後の百姓を生かしたかと考えると、二の足をふまざるを得なかった。百姓は今も飢え、今も苦しい。
「はて、おらは、この生命を、そんな無駄には捨てられぬぞ」
彦太は、迷っていた。
その時、表の土間口で、
「彦よ。おるか」
「誰だあ」
「おらよ。中野宿の茂作よ」
「お。上がらっしゃい」
「うんにゃ、上がるめえ、迎えに来たのじゃ。延徳沖の酒屋の息子な、要助どんじゃ。七年ぶりで、故郷へ帰えったで、一目会いたいといわっしゃる。来られるかの」
「ほっ、要助が、──そうけ。──長う会わんの、おらたあ、腕白友達じゃ、行くとも、すぐ行く」
もう星が出てるが、野良に出ている者は、まだ帰らなかった。彦太は、広い、真っ暗な家を、空っぽにして、出て行った。
幼友達の要助は、中野宿の川魚茶屋で、酒の支度をして、彼を待っていた。
彦太は、会って、驚いた。
「ほッ、おめえ、侍になったんか」
「む、ずっと京都にいたが、今度、佐久間先生のお供を兼て、松代藩へ用事があって帰郷したよ。達者かい、彦太」
「ふーム」
彦太は、うめいて、急に、対等な口がきけなくなった。この地方で、てッぱ屋と俗にいう、馬口労相手の居酒屋の伜が大小、袴、髷や言葉つきまで、見違えるようになっている。彦太は、羨望と、反抗と、それから自恥を感じた。
「よく二人で、この中野宿の道場へ、毎晩通ったもんだったけな。あの、棒振り剣術の先生は、まだやっとるか」
「おるが、この頃は、中風で剣術どころでねえでの。片手に鍬、片手に鎌で、箸を持つ手は、百姓にはねえだ。何んせい、こッぴどい運上やら、助郷やら」
「相変らず、年貢の愚痴か。村は、変らんなあ」
「佐久間修理が悪いというこった」
「象山先生は、達観の士だ。百姓たちには、あのお方の偉さがわからん。それは、時勢が分らんからだが」
「そうかの。おめえ、象山びいきになったか」
「む。……ウム。……それや拙者も、村にいた頃は、無智の仲間じゃったから、象山先生の馬面が、癪で、石を抛った事もあるが、上方へ参って、分ったな。今度、高島秋帆先生の砲式を入れるために帰国されたのじゃ」
「あんな、大砲など、莫大な金をかけて、どうするつもりだ。やくたいもねえ」
「ははは。今に、わかる」
「今に──今にといってれば、一揆が起るぞ。百姓は、もう絞る血もねえで」
「一揆」
と、要助は憫笑するように、
「おぬし、やる気か」
「おらあ、やりともねえが」
「台所喧嘩、よい程に、やめんか。──今はそんな場合じゃない。外夷と内憂と、日本は、重大な秋だ」
「日本──外夷──」
彦太の頭は、信州の何ヵ村だけの死活でいっぱいだったが、そういわれると、自分の眼界と知識が、要助とは、格段にかけ違っている気がして、
「そうかなあ」
と、屈してしまった。
英、露、仏など、各国の黒船に、日本が好餌として沿海を窺われている事実や、それを攘てという朝廷の攘夷派と、幕府の開港策とが、対立してる事や、志士、各藩の動向──水戸学の運動化──それから、支那の阿片戦争と日本の場合との比較までを──約二刻も、彦太は、要助から、たてつづけに聞かされて、頭へ詰めきれない程、充血を持って、外へ出た。
「──そうかなあ」
彼は、漠と、感動し、漠として、百姓以外の天地と生存を考え、青梨村の家へ、帰るまでに、
「自分が生きるにも、人を生かすにも、百姓では駄目だ」
と、己れへ結論を与えた。
そして、馬も鶏も、生きるにたえないような痩地を見わたして、
「要助は、台所喧嘩じゃといいよった。それも、そうかな。領主も食えんので、百姓を食う。海から、外夷が日本を食おうとするなら、大砲もなけれゃなるまい。──飢えて死ぬより、一揆なら、一揆で首をチョン斬られるより、外夷と戦って死ぬ方がましだぞ。第一、男らしい。第二には、家名も挙る」と、呟いた。
「犬も飯を食うだろうに、江戸って所は、何処を曲がっても、野良犬が多いなあ。これだけの犬の食物があれゃ、俺の村は、一揆など起さずに済むが」
と、彦太は思った。
その野良犬と、町廻りに、何度か脅かされながら、真っ暗な問屋町を、彼は、探して歩いた。そう夜半という程でもないのに、どこ一軒、灯りの洩れている家はない。今こえて来た狭い橋の下から湧くのであろう、腐った汐の匂いがいっぱいにする闇だった。
「あ。此処ここ」
幼少の時、一度見た記憶がある。戸を卸した六間間口の艾屋の軒下に、すばらしい大釜が看板に据えてあった。釜で覚えていたのである。
彦太が、立ちどまったのは、その釜屋艾のすじ向い──弁当仕出し屋の政右衛門の店口だった。
「今晩は──」
幾度も、戸をたたいて、どなった。
「青梨村の彦太でがす。伯ッ様、信州の彦太でがすよ。開けてくんなさい。今晩はっ」
寝たにしても、このくらい叩いたら──と思っていると、程経て、
「どなた様で──」
見当違いな、土蔵の金網窓に、灯影がゆらいで、首の影が二つ、
「押し込みの御用意でもねえようだな」と、囁き合ってから、
「唯今、お開けしますから、お待ちなすって」と、答えた。
主人の弁政は、奥で、妾あがりの後妻と、寝酒を酌んでいたが、呆れたように、
「えっ、信州の甥野郎が来たと。あの、彦太のやつ、とうとう、出て来てしまったのか」
彦太は、店の若者について、もう襖の内に立っていた。丸ッこい顔に、羞恥を湛えて、そこへ、ちょこなんと畏まった。三十近くにみえるが、まだ二十四歳で、小肥りで背が短かった。百姓縞の下に、稽古着を着、紺のもんぺをはいているのである。初めは、にやにや笑っていたが、坐ると、大きな口を真面目にむすび、伯父の顔いろを、団栗のような眼でじっと見ていた。
厄介なやつだ──
そういわんばかりに、弁政は、山国から風で飛んで来てそこへ座ったような朴訥な甥を、いつまでも黙って、眺めていた。頭髪を、使いからしのハタキみたいに束ねて後ろへ下げた態や、稽古襦袢を近頃の壮士風に襟元から見せてる態や、百姓とも浪士ともつかない稚気満な恰好に、思わず吹き出したくなったが、
「──む。出て来たのか、とうとう」
おかしさを抑えて、わざと苦りきッた。
彦太は、思いつめた野望と、羞恥とを、脂肪でぶつぶつしてる顔へ、赤く燃やして、
「へい、出てめえりました。伯ッ様のお手紙にゃ、江戸へのぼる事アなんねえという御異見でしたが」
「来たはいいが、──いいがだ。──てめえ一体、田舎の家は、どうして来たのか」
「田地も、馬も、家財も、金に代えて、ここに七十両程、持って来ましただ。伯ッ様の手紙も、よく分りますだが、何せい、思い止まれねえでがす。わしは、誓って、侍になって家名を興すと肚を堅めましたもんでな。どうか伯ッ様、わしを、侍にしてくんなさい」
「馬鹿ッ」
「へい」
「おおたわけの見本だぞ、てめえは」
「…………」
「いくら、山国で、ぬうと、陽あたりよく育ちやがったとはいえ、馬鹿さ加減にも、程があら。そんな世間か、江戸はな、浪人や無職者で、押し合ってるんだ。お上でも、持て余して、越中島の寄せ場へ、無宿人を集めたり、台場人足で、仕事をこさえたり、浪人徴募ってんで、ごろ浪人へ飯をくれて京都へ向けたり──」
「ま。あなた」
後妻のお村が、気の毒そうに、遮ったが、弁政は耳の蠅でも追うように首を振って、
「──いいか、そういう江戸だぞ。それでも、夜は、八刻といや、戸を卸し、御用党とか、攘夷党とか、浪士の押込みに、ふるえ上がってる不景気さだ。勿体ねえ、てめえなんざ、田舎に、じっとしてりゃ、庄屋の小旦那で、炉ばたの地酒でも食らってるか、茶のみ話に、稲の穂の勘定でもしてりゃいい身分。それを打ッちゃって、江戸へ来る。──けッ、馬鹿も底の知れねえ牛蒡野郎だ」
「伯ッ様。ちょ……ちょっと、それは違いますだ」
「何が、違う。去年から、おかしな手紙をよこすと思ったら、侍になりてえ? ……。笑わかすな、何だ、てめえの頭は、襦袢は」
「これや、国境で、藩の者に捕まると、いけねえで、変えたのでがす。わしが、村の近くで、てッぱ酒売る家の息子で、要助って者も、上方へ行って、立派な侍になったで、わしにもなれねえ事は」
「人真似かあ、てめえの発心は」
「心外でがす。田舎も、伯ッ様の考えてるようなもんではなく、一揆か、飢え死にかの境でがす。わしら、村にいる以上、そんな家の声を聞けば、犬死と知りながらも、どんな事、仕出来さぬとも限らねえ性質でがすし、それで、百姓衆が、救えるもんならいいが、何度やっても、揚句は裏切者が出て、正直者が、獄門に梟かるだけのもんで、領主は領主、百姓は百姓、これや元々、痩せ地の上の台所喧嘩でがす。そんな、一揆のお先棒にかつがれて、河原で首をぶち斬られるよりは、侍になって、自分も生き、人も生かす工夫をしてえと思うのでがす。侍にならなけれゃ、その力は、持てねえと思いますで」
感情が先に走って、彦太は、いいたい事が、いえないのだった。鼻を熱くして、拳でぼろぼろ流れる涙をこすった。お村は、義理の仲だし、弁政も、江戸人の通癖で、口ではくそけなしにしてるが、肚の中では決してそうでない事を読んでるので、
「ま、ま。話は明日にして、彦さん、どてらを上げるから、脚絆だの、そんな物、脱いでおしまい、それに、お腹も減ったろうし、支度のできる間、銭湯へでも行っといでなさい。店の者をつけて上げよう。──誰か、彦さんに、町の湯を、教えておあげよ」
無理に、立たせて、彼を湯へ出してやった。
彦太は、弁政の店の帳場へ坐った。
故郷の家産一切をまとめて来た七十余両は、そのまま、伯父の手へ預けて、帳付けだの、若い者の手伝いをしていた。
田舎の食えないと、江戸の食えないとは、根本的に違ったものであることに、彦太は驚いた。
弁当の空き殻には、白い飯が、ろくに箸もつけず、残って来るし、料理屑は、どんどん捨てるし、これじゃ、野良犬が殖えるはずだと思った。
「どうして、これで江戸が不景気か」
彦太には、判らなかった。
問屋町辺の町人生活は、彼の眼で眺めると、松代藩の武士や、お城の生活よりは、よほど贅沢で放漫だった。この中にこそ、……と思ったが、誰も、そんな話にふれる者はなく、河岸の者や、附近の町人が集まると、黒船がどうの、尊攘党がどうのと、昂奮した。時々には、近くに、時事を諷した落首が貼られたり、瓦版の呼売りが、京都の志士の暗躍や、市井の押込み沙汰などを、触れ廻った。
「小塚ッ原で、京都の梅田雲浜、頼三樹三郎、橋本左内、その他、京都の志士が、首を並べて、斬られるそうだ」
そんな、噂もあって、彦太は、胸が躍った。そうした若い人達が、新しい社会を興すために、幕府顛覆を目企んでいることも、少し分ってきた。百姓の食えない事が、結局、藩主の所為である前に、幕府の制度がさせている事であるのも分った。
「要助がいったのは、ほんとなのだ。そして俺が、侍になって、自分も生き、人を生かすと決めた方針にも、誤りはないぞ」
彦太は、帳場の暇を見て、撃剣を習いに通った。
楓河岸に、伊能一雲の子、伊能矢柄が住んでいた。一刀流で人格者だった。
「出精すれば、上がる質だ。飽まずに、やんなさい」
代稽古が、いった。
彦太は、多少田舎で下地があったし、何でも、侍になろうという気ごみが、竹刀にも燃えてるので、伊能矢柄にも、愛された。
弁政は、女房のお村に、
「どうだ、あいつ、思いとまる風はないか」
時々、訊ねた。
「思いとまるどころですか、伊能先生の道場へ通って、この頃は、まるで侍気取り、弁政には、浪人が帳場をしてるって人がいってるくらいですよ」
「しようがねえな」と、苦笑した。
しかし、弁政は、甥のそうした熱心さが、可愛くもあった。
「何とか、してやらなければなるまい」
「御家人株でも買っておやんなさいな。侍の株は、この頃、値も下落っているし、売りたい方は、ザラだって事ですよ。何でも、二本差せさえすれば、本人も気が済むんでしょうから」
「心当りへ、頼んではあるのだが」
「割下水の御隠居などは」
「笹本様なら、顔はひろい」
「きょう、さらいの撒札が来てるんですよ。彦さん連れて、行ってみましょうか」
「あんな、がさつ者を連れて行ったら、御連中が、眉をひそめやしねえか」
「いつまで、あの人も、田舎者じゃありませんよ。私に任しておいて御覧なさい」
伯父によばれて、彦太は、畏まった。
「何か、御用ですか」
「お村と一緒に、お旗本笹本金十郎様のお屋敷へゆくのだ。稽古着など、下に着てねえで、きちんと支度をしろ。事によったら、侍の株を、御周旋して下さるかも知れねえ」
「有り難うございます。それがかなえば、わしも──」
彦太は、もう希望をつかんだように、胸をわくわくさせ、伯父夫婦へ、額をつけて、礼をいった。
「礼は、はやい。店の大事なお花客だし、先はお旗本の御隠居、どじをするなよ」
「はいっ」
彦太は、堅くなって答えた。
芽柳が、南割下水のゆるい流れと人通りの少ない往来に添って、並木になっていた。
「ここが本所か」
彦太は、大川からこっちへは、初めて来たのだった。お村は、
「この辺、晩になると、夜鷹が出て、彦さんなんぞ、通れない所だよ」
と、教えた。
「夜鷹って、何ですか」
「ホホホ。まだ、知らないの」
訊き返す間もなく、お村は立ちどまって、顎をしゃくった。
広い宅地と、それを囲む塀や木立や、そして厳しい錆を持った冠木門に、彦太は、
「ここか」
と、唾をのんだ。
六尺でもいそうな袖門の潜りを、お村が、気軽に入って行ったので、彦太は、はらはらした。そして、玄関の前までくると、奥の方で、三味線の水調子が聞えたので、又意外に思った。
式台の下には、粋な女下駄や、日和や、駒下駄や草履が、いっぱいに並んでいた。取次について、長い一間廊下を、書院まで通ると、
「おう、小網町の内儀か、めずらしいのう」
音声の高い──年五十がらみの面長で人品のいい老旗本が、正面の脇息からそういって、
「きょうは、社中が寄って、渫いやら、新曲の評をし合うているのじゃ。ゆるりと、遊んでゆけ」
「いつも、お弁当の御註文をいただきながら、店の者まかせに、御不沙汰ばかりを」
「ま。商売の話はよせ」
「ほんに、皆様も、お揃いのところで」
「弁政の夫婦は、金溜め屋じゃという評だぞ。お前も、社中になって、ちと、芸事にでも金を撒かんと、わしが、御用党になって押込むぞよ」
「ま、殿様、御冗戯ばかりを」
すると、旗本隠居の笹本金十郎を取り巻いて、ずらっと、書院いっぱいに居並んでいた男女が一斉に、手を打って、
「ようよう、お村さん、わちきなどもす、覆面して、当世流行りの押借りと出かけやすぜ。なあ、みんな」
「繰込もうじゃござんせんか、今夜あたり」
「この同勢で──」
と、一人が、俳優の声色もどきで、
「御時勢よそに不埒な金持、軍用金の調達申しつける、嫌と申さば──てな事で、一つ、畳へ刀を突き立てるんでげすな」
「ははは、その事その事」
蓮ッ葉な女達の笑い声も交じった。
仲の町の老妓らしいのや、辰巳の羽織かと思われる仇ッぽいのや、堅々しい奥様風や、町娘や、雑多にいた。
男たちの方は、なお、階級が区々で、武士もいれば、本多髷の旦那もいる。又、銀鎖の莨入れでヤニさがっている唐桟縞のゲビた町人、町医者や、指のふしの太い職人ていの男も、げたげたと、憚りなく、笑っていた。
次の間には、緋もうせんが敷いてあって、見台と、華やかな座蒲団が二つ、細棹の三味線が一挺、その前においてある。
「旗本? これが旗本の?」
彦太は、あっけにとられていた。
すると、その笹本金十郎が、
「お村。うしろへ連れて来たのは、誰じゃ」
「申し遅れました。うちの人の甥で、彦太という者でございますが、折入って、殿様に、お願いがあって、連れて参りました、どうぞ、よろしゅう……」と、お村のことばが終る頃、彦太は、気がついて、頭を下げた。
金十郎は、のみこんで、
「破歌の入門か」
「いえ、その方は、からきし、不器ッちょな人間でございまして──」
「ム、そうか。後で聞こう、後で聞こう」
気軽に、うなずくと、金十郎は、男女の中から、畳屋寅右衛門の顔を拾って、
「日本堤。一つ唄らんか」
寅右衛門は、煙管で、自分の座から三人目の男をしゃくって、
「薪梅さん、どうかお先へ」
すると、その男は又、向う側に、羽織袴でいかめしく座っている武家へ、辞儀を送って、
「出淵様。いつぞや、御家中の岡村の旦那から伺いますに、其角の句を読み入れた新作をお作くんなすって、それを藤七が節付けしたってお話じゃござんせんか。そういうものを一つ伺わせて戴きたいもんで」
「いやあ、あれはまだ、お耳に入れるほどでない」
「御謙遜でげしょう。のう、みんな」
「それは、聞きたい」
金十郎も、一緒に和して、
「出淵氏、所望じゃのう」
「唄うは苦手、身ども、どうも声が悪うて」
「どういたしまして──」
と、側にいる老妓が、
「姫路侯のお留守役は、お留守居役中での渋い喉だそうで、平清や両国あたりでは、専ら評判でござんすが。ねえ、小秀ちゃん」
「御卑怯ですよ」
自分の持ちものらしい若い妓に、出淵は、突きだされて、年がいもない顔を赤らめた。しかし、内心は得意でもあるらしく、
「然らば」
と、次の間の見台の前へ坐った。
「役不足でござんしょうが」
と、老妓が、側へ坐って、細棹を膝へのせ、糸をあわせた。
姫路侯の留守居役、出淵惣次は、くちびるを舐め、そして、眼をつぶった。成程、老妓がいったのは、世辞ではなく、多年酒席に洗練されきった、さびのある美音だった。
わがものと思えば軽し
傘の雪
恋の重荷を
肩にかけ
彦太は茫然として留守居役の顔を見ていた。さしも粋な破歌も、細棹の調べも、彼の耳には、一種の物音に過ぎなかった。頭の中には、田舎の痩せた田地と百姓の影が映っていた。そして松代藩の江戸の藩邸にも、留守居役はいる筈だと思った。
「──出来ましたあっ」
ぱちぱちと、人々は手を叩いた。
それから、畳屋の寅右衛門だの、誰だの、彼だのが、交わる交わる、唄自慢をし合って、日の暮れるのを知らない。
彦太には、後で聞いた知識だったが、旗本隠居の金十郎を中心にしてるこの社中は、江戸の破歌を革命して、歌沢という低徊趣味な小唄を興そうとして、ひどく凝り固まっている連中だった。職業、貴賤をとわず、ふしの工夫と、喉のしぶいところを、競い合って、仲の町や、柳橋や、辰巳へもうひろまっていることを、得意にしていた。
灯がともると、酒宴になった。弁政の折ですませる日もあろうが、きょうは、平清から板前が出張って、贅沢な向付や熱い椀を膳にして配った。
彦太は、自分の置場をもちあつかって、
「伊能先生の道場へ行かなくっちゃなりませぬで、わしは、一足先に……」と、お村へささやいた。
お村は、帰りそびれて、酌された盃を幾つも前にならべていた。
「じゃ私は、皆さんがおひらきになった後で、殿様へ、あの事をお願いしておくから」
といった。
彦太は、もうどうでもいい気がした。門の外へ出て、芽柳の上の夕星を仰いで、ほっと、生き甦ったような心地だった。すると、樹蔭から、白壁みたいな顔に猥らな笑みをもって、にやにや、近づいてきた女が、
「ちょいと」
彦太の袂を、手に巻きつけた。
彦太は、びっくりして、
「なんだっ」
「ね……いいんでしょう」
「なにが、なにが」
「あそんで……さ」
頑固な彦太の腕が、いきなり、夜鷹の胸をつきとばした。袂が綻びて、ばくばく口をあいているのも知らずに、彼の逃げ飛んでゆく脚は、後も見なかった。
雪の江戸が、朝の一瞬によごされて、騒いだ。
「井伊掃部頭が──御大老が、桜田で、水戸の浪人たちに、やられたってえぞっ」
弁当殻を集めてきた店の若い者が、昂奮して、帳場の彦太へも、小僧へも、奥へもどなった。
彦太は、憂欝な眼をあげて、雪に埋った三月の往来をぼんやり眺めた。
弁政は、脚絆をかけて、店口で草鞋をはきながら、
「彦太、行って見ねえか」
彦太は、首を振った。
「行っといでなさいまし……」
急激に、社会はうごいて行った。首が集まれば、世間は、この状態が、どうなるか? という話題だった。大老殺害の記憶が消えないうちに、又、坂下門に、白昼、安藤対馬守の兇変があった。次の年には、もう大和や上方は、戦だという、つきつめた噂が、江戸を暗く蔽った。
久世様お留守居屋敷、上弁七十人
浜町様、仕出し、椀だね十七人
清風亭へ、月ざらい弁当百二十人
彦太は毎日、そんな文字を帳面へなすりつけていた。無口が彼の性格になりかかって、店の者は、彼の人間が変って来たといった。
「はやく、どうかしてやらなくちゃいけねえ。預かってる七十両を、俺が、融通でもしちまったように思ってるんじゃねえか」
「そんな事はありませんよ」
お村と弁政も、彦太が、帳場から往来ばかりじっと見ている眼に気づいて、時々、心配はしているらしかった。
帳場格子に、肱をついて、彦太はまったく往来ばかりじっと見ていた。夜こそ淋しいが、昼間は、無数の脚がそこを通った。──摺りきれた浪人の草履、女の白い踵、袴の折目正しい白足袋、裾模様、と思うと──あだな左褄、物売りの疲れた足。
それから、野良犬、野良犬、野良犬。
「地べたが流れてゆく──世の中が移ってゆく──。して俺は」
発作的に、彦太は、帳場の中から突っ立ったりする事があった。だが、この紛雑した世相のどこへ一体自分を投げこんだら正しいのか、彦太には、見当がつかない。
帳面で見ると、高値い仕出しの料理や、贅沢な重箱物が、船宿や、妾宅や、ばくち場や、およそ享楽的な集合所へ、どんどん出ている。何が不景気で、どこが戦だか、数字は、反対を示している。
「一体、世の中ア、どうなるんだ?」
口癖にいうその言葉を、地震に狎れた感能とひとしく、江戸の半面は、享楽してるようにも見える。
で、彦太も、嘆め息みたいに、時々、独りいうことがあった。
「一体、どうなるんだ! この世間は」
伯父の弁政も、お村も、一緒になって、腹を立てた。
「今になって、嫌だなんていわれちゃ、私たち夫婦が、何といって、割下水の殿様へ、顔向けがなるえ。それじゃ、笹本様へ、まるで、からかい半分にお願いした事になるじゃないか」
「彦太。てめえは、余り話が長びいたので、すねたんじゃねえか。一度、ひきうけたからにゃ、黙っていても、骨身を砕くのが俺たち夫婦の性分なんだ。御家人株なんざ、売り手は腐る程があるが、先へゆく程、値は下落る様子だし、又、先の家がらや、娘があるなら娘も、出来るだけいい筋をと、殿様も、念を入れて探して下さるからこそ、長くもなったんだ。──それをてめえ、有り難えと思わず、欝いで、さアあったという段になってから、じぶくるなんざあ吾儘すぎるッてもんだぞっ。俺たち夫婦を、板ばさみにして、腹癒せする気かっ」
二人の言い条である。
彦太は、平謝りに謝った。その話は、時間と無言のうちに、解消されて、伯父夫婦も忘れ去った事だとばかり思っていた。
ところが、伯父夫婦と、割下水の笹本との間に、話は、すっかり進んでいて、急にきょう、例の道楽者の社中である船宿の薪梅で、取引をしようというのだった。その士格の売主は、小普請目見得格で小牧甚三郎という御家人、一人娘があるから、聟の形式をもって継いでくれれば、万端都合がいいという。──そして、こっちの身がらは、一切承知だし、株の値段も、最初は百二十両を希望していたのを、弁政夫婦が、こぎつけて、纒ったら、七十五両に負けようとまで、内談はできているのだった。
「うんか、嫌かは、家付の娘をてめえが見ての上だが──」
と、弁政は、ここで、りきんだ。
「自慢じゃねえが、掘出し物だ。別嬪だ。それに、歌沢の社中で、糸もいける。まあ、見てからにしろ、なあ彦太」
四囲の事情は、彦太のためらいを許さなかった。彦太は、肚をきめた。
「伯父さん、見なくっても、ようございますから、何分──」
「それがいけねえ、承知なら、機嫌よく、小牧の父娘に、会ったらいいじゃねえか」
で──彦太は、連れて行かれた。
娘は、お縫といって、二十二だという。彦太は、単純に、美人だと感じた。しかし、七十幾両の金が、美人の娘の前で、垢くさい御家人の父親と、取引される時、彼は、顔をそむけた。
帰り道に、伯父と別れて、彦太は、撃剣の師である伊能矢柄の道場へ寄った。きょうは、稽古よりも、師の矢柄に、直接、訴えてみたい気持だの疑問を、いっぱいに抱いていた。
しかし、彦太は、例の訥弁で、師の前に坐ると堅くなってしまった。矢柄は、彼が近く御家人の跡目をついで、士格になるという事をおよそ聞くと、
「それはよかった。腕では、もう立派に武士だけのものはある。大小を帯びて、大小に恥かしい貴公ではない。そう、謙遜せんでもよいわ。何か、祝おう」
と、いった。
彦太は、空しい気持で帰った。入家の日どりや支度が、伯父夫婦の手ですすめられた。彦太は、帳場から往来を見ながら爪を噛んだ。
「俺の生きる所は、娘付きの御家人の屋敷でもなし、江戸でもなし、他にあるぞ」
じっと、うごく地面を見た。緋ぢりめん、福草履、八幡黒の鼻緒、物乞いの黒い足──野良犬、野良犬。──絶えまなく、雑多な人間の脚は時を織っている。
「まちがいはない、この人間達の脚を、一度、焼ッ原から、出直させるこった」
彦太は、信念の唇を噛んだ。
「俺の体を、役立てる仕事は、千曲川のお刑置場へ坐るほかに、慥に、もっとしていい事があった。──七十両は、どうせ今に、路頭に迷う父娘へ涙金をくれたと思え」
入家の日が来た。
彦太は、聟殿だった。
派手ッぱりな伯父夫婦は、その一夜のために、神田祭りみたいな金づかいをした。割下水の笹本隠居を初め、社中の祝い物は、根太も土台も腐りかけている古い御家人屋敷へ、積みこまれた。師の伊能矢柄や、同門からも、柳樽が届いた。
「めでたい」
と、みんないった。
娘付きで、祖先からの士格を売った老御家人も、
「いよっ、めでとうござる」
と、抜け歯の間から、ほざいた。
彦太だけは、浅ましいものへそむけるように、顔を伏せていた。そして、無駄に消費される酒だの、祝い物だのを、今でもかすかに残っている彼の百姓気質が、勿体ないものだと感じていた。しかし、それを贈ってくれた人々の好意も、伯父夫婦の派手な散財も、気の毒とは、ちっとも思わなかった。
「どうせ今に、炎の中へ、捨てられる物だ」
そう考えていたからである。
酔う者は、酔いつぶれ、帰る人々は、帰った。聟である彦太と、花嫁である家付きの娘とは、当然、一室へはいった。
「悪い気持じゃないなあ」
彦太は、生れて始めて、ひっそりした深夜の灯と金屏風とに囲まれて、女性と向いあうのだった。
家付きのお縫は、灯のそばに、凍った寒椿みたいに、じっと、俯向いていた。彦太は、こんな美しい襟あしを見たことはなかった。
生涯、この家に、踏みとどまる気のない彦太は、肚をきめた最初に、売物の士格の添え物に過ぎない娘には、当然、良夫としての行為は避けようと考えていた。今夜の席にいる間も、その考えは、変らなかった。
だが、彦太は、彼女のにおいと襟あしが誘うものに、勝てなかった。
ふいと、気が変った。
「代価が払ってあるのだ。親と同意でないわけはなし、俺が去れば、又、後の男へ、土蔵付き売家で、売りに出る娘。何を、憐れがることがあるものか。──割下水の柳の下から袂をひっぱる女と思っても、不徳じゃない」
でも、彦太は、体がふるえた。
お縫は、俯向いてる上に、さらに、花嫁の重げな髪を、うつ向けた。
「…………」
彦太は、彼女の手へ、手を触れた。
何もいえないのである。
すると、お縫は、とうとう顔を、畳までくッ付けてしまった。そして、蚊の泣くような声で、
「ゆ、ゆるして下さいまし、父の、苦境を救いたいばかりに、こ、こんな御縁を結びましたが、私には、さる御直参の御次男で、言いかわしたお方があるのでございます……」
「えっ?」
「ほかに、女子をお持ちなさろうとも、決して、苦情がましい事は申しませぬ故、あなた様を、あざむいた罪は、ゆるすと、仰っしゃって下さいませ。ゆるさぬと、仰っしゃられたら、私はここで、自害するよりほかございませぬ」
畳へつけた顔の下に、懐剣を持って、すすり泣くのだった。
「ウーム、成程っ」
毎日、往来の脚を見ていた彦太も、江戸が、ここまで墜ちて来ているとは、考え及ばなかった。
戸外では、野良犬の群れが、さかんに吠えだした。その中で、人間らしい物が──呼び売り屋が──精いっぱいで呶鳴りだした。
「──さあっ、大変じゃっ、見たか、聞いたか、たった今出た瓦版じゃ、瓦版じゃ。大和五条の天誅組が、下火と見えたら又しても乱が興った。平野国臣や、沢主水正、そのほか、京方の志士浪人ばら、生野の銀山に旗挙げしたとある! うっかりしたら江戸へも飛び火じゃぞっ! 詳しいことは読んでお知り──さあっ、瓦版じゃあ、瓦版じゃ」
彦太は、裏の戸をしずかに開けた。
草履が足にさわる。
後ではまだ、すすり泣きが聞えた。彼は、戸の外から、低声でいった。
「もう、泣かなくともいい。俺は、急に先がいそがれて来た。何年かのうちには、鉄砲かついで、西の方から、逢いに来よう、小網町の伯父貴へも、割下水へも、同じようにいっといてくれればいい。……じゃ、お寝み」
閉めると、暁闇の頭上に、星だけが白かった。彦太は、塀をのりこえた。
きゃッん!
野良犬が、彼の脚もとから、横っ跳びに走った。すると、辻から、その犬へ蹴つまずきそうに駈けてきた町役人の提灯が、
「こらっ、呼び売り屋、待てっ。──不埒な奴め、又、御禁止の瓦版を売りおるなッ。──待たんかッ、こらっ!」
犬も迅い。
呼び売り屋もなお迅い。
「ははは。ははは」
彦太は、おどけ絵画の影絵でも見るように、腹をかかえて見送っていた。
底本:「柳生月影抄 名作短編集(二)」吉川英治歴史時代文庫、講談社
1990(平成2)年9月11日第1刷発行
2007(平成19)年4月20日第12刷発行
入力:門田裕志
校正:川山隆
2013年1月14日作成
2013年9月28日修正
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