新頌
北原白秋

海道東征


海道東征


第一章 高千穗


男聲(獨唱竝に合唱)


しき、蒼空あをぞらと共に高く、

み身しき、皇祖すめらみおや

  はるかなり我が中空なかぞら

  きはみ無しすめら産靈むすび

  いざ仰げ世のことごと、

  あめなるやたかきみあれを。


りき、綿津見わたつみしほわかく、

しき、この國土くにつち

  はるかなり我が國生くにうみ

  おぎろなしあめ瓊鉾ぬぼこ

  いざ聽けよそのこをろに、

  大八洲おほやしまあがるとよみを。


皇統みすまるや、あまらす神の御裔みすゑ

しき、日向ひむかすでに。

  はるかなり我が高千穗、

  かぎりなし千重ちへ波折なをり

  いざげよ日のただ

  海山うみやまのい照る宮居みやゐを。


しき、千五百秋瑞穗ちいほあきみづほの國、

皇國すめぐにぞ豐葦原。

  はるかなり我が肇國はつくに

  きはみ無しあまつみわざ

  いざたせ早や東へ、

  光宅みちたらせ王澤みうつくしびを。


第二章 大和思慕


女聲(獨唱竝に合唱)


大和やまとは國のまほろば、

たたなづく青垣山あをがきやま


ひむがしや國の中央もなか

とりよろふ青垣山あをがきやま


うるはしとこもる、

天降あもるその磐船いはふね


かなしよ鹽土しほつち老翁をぢ

きこえさせその大和やまとを。


大和やまとはもききうるはし、

その雲居くもゐもひはるけし。


うるはしの大和やまとや、

うるはしの大和やまとや。


第三章 御船出


男聲女聲(獨唱竝に合唱)


その一

日はのぼる、旗雲のとよの茜に、

いざ御船みふねでませや、うまし美々津みみつを。


海凪ぎぬ、陽炎かぎろひひがしに立つと、

いざ行かせ、ぐはしその海道うみつぢ


海凪ぎぬ、朝ぼらけしほもかなひぬ、

ともぎ、大御船おほみふね御船出みふなで今ぞ。


その二

あな清明さやけ、神倭磐余彦かむやまといはれひこ、そのみことや、

あなゆし、もろもろの皇子みこたちや、その皇兄いろせや。


でませや、おほらかに大御軍おほみいくさ

まだくらし、はるけきは鴻荒あらきへり。


みめぐみ皇祖すめみおやかくみましき、

ただしきを年のむたやしなひましぬ。


神柄かむがらや、幾萬いくよろづとしりましき、

みひかりや、かつかさね、しましぬ。


にぎたま、またやはせ、ただにやすらと、

あらたま、まつろはぬいざことむけむ。


大御稜威おほみいつらすと御船出みふなで成りぬ、

日の皇子みこや、御鉾みほことり、かくちましぬ。


その三

日はのぼる、旗雲の照りのあかねを、

いざ御船、出でませや、あか日向ひむかを。


海凪ぎぬ、滿潮みちしほのゆたのたゆたに、

いざ行かせ、照りぐはしその海道うみつぢ


海凪ぎぬ、朝ぼらけしほもかなひぬ、

ともぎ、大御船おほみふね御船出みふなで今ぞ。


第四章 御船謠


男聲(獨唱竝に合唱)


その一

御船出みふなでぞ、大御船出おほみふなで

御伴船みともぶねこぞりさもらへ、

御伴みともびとこぞり仰げや。

りとよめ科戸しなどの風と

聲放て、東に向きて。

大御船おほみふね眞棍まかぢしじぬき、

照りわたる御弓みゆみゆはず

あな清明さやけ、神にします、

あなまばゆ、皇子みこにします。

はろばろや大海原おほうなばら

はてなしや青水沫あをみなわ

りとよめ大き國民くにたみ

大君おほぎみに、

この神に、

たたごと

壽詞よごと申せや。


その二

荒海の、

荒海の潮の八百道やほぢの、

八潮道やしほぢの、

潮の八百會やほあひに、ハレヤ、

とどろ速開津姫はやあきつひめに、

朝開あさびらき、朝のみ霧の

遠白とほじろに、

すゑしづ

しづまらせ、

み眼すがすがとませとぞ、

きこしめせと申さく

船謠ふなうた


その三

ヤァハレ

海原うなばらや青海原。


ヤァハレ

青雲あをぐもやそのそぎたち

そのきはみ、こをば。


我が海と大君おほきみらす、

我がそら皇孫すめみまらす。

ヤァハレ

潮漚しほなわのとどまるかぎり、

舟のの行き行くきはみ。


ヤァハレ

島かけて、八十嶋やそしまかけて、

大海おほうみに舟滿ちつづけて。


見はるかし大君おほきみらす、

四方よもつ海皇孫すめみまらす。

ヤァハレ

國土くにつちや、大國土おほくにつち


ヤァハレ

國のかべそのそぎたち

その極み、こをば。


我が國と大君おほきみらす、

我が土と皇孫すめみまらす。

ヤァハレ

青雲あをぐものそぎ立つきはみ、

白雲しらくも向伏むかふすかぎり。


ヤァハレ

谷蟆たにぐくのさわたるきはみ、

馬の爪とどまるかぎり。


見はるかし、大君おほきみらす、

四方よもつ國皇孫すめみまらす。

の國は廣くと、

けはし國たひらけくや。

遠き國はつなうち掛け、

もそろよと、

もそろと、

國引くと、引き寄すと。


あなおほら、大君おほきみらす、

あなをかし目翳まかげしおはす。


しや、しや、彌榮いやさか

とどろとどろ、彌榮いやさか


第五章 速吸と菟狹


その一

男聲獨唱


海原うなばらや青海原、

海道うみつぢみちびきや、早や槁根津日子さをねつひこ

速吸はやすひ水門みとになも、その珍彦うづひこ


童聲或は女聲合唱(童ぶり)


龜の甲に搖られて、

しほの瀬に搖られて、

かぶりかうぶりあま

さをやらな、いまゐれ、

波かぶりかぶるに、

み船へと移らせ、

名をのれ早や早や、

み船へまゐるは

やつこぞとそれまをす。

國つ神とひこごむ。

潮みづく國つ神、

海豚いるかよな、

遠眼とほめ鋭眼とめさかしな、

ぶりぶりおもしろ。


その二

男聲女聲(交互に唱和竝に合唱)


菟狹うさはよ、さすしほ水上みなかみ

豐國とよくに行宮かりみや

ああはれ足一騰宮あしひとつあがりのみやとよ、行宮かりみや


足一騰宮あしひとつあがりのみやは、行宮かりみや

青の岩根に一柱ひとはしらす。


足一騰宮あしひとつあがりのみや參出まゐづると、

大わたの龜や、川のぼりる。


足一騰宮あしひとつあがりのみや大御饗おほみあへ

たてまつる、はるか雲居に。


足一騰宮あしひとつあがりのみや菟狹津彦うさつひこ

あしたさもらふ、ゆふべさもらふ。


足一騰宮あしひとつあがりのみやたぎや、

足一つあがり、雲のす。


 ええしや、をしや、

 ええしや、をしや。


第六章 海道囘顧


その一

男聲女聲(交互に唱和竝に合唱)


かがなべて、日をよるを、海原うなばら渡り、

かがなべて、た歳を、宮うつらしき。

  ああはれ、その幾歳いくとせ

  ああはれ、その行き行き。


年ごとに、御伴船みともぶね、いやかずえぬ、

つぎつぎに、御從みつきびと、またいや増しぬ。

  ああはれ、また春秋はるあき

  ああはれ、そが海山うみやま


その二

月のや、足一騰宮あしひとつあがりのみや

一年ひととせや、筑紫つくし崗田をかだの宮。


多祁理たけりとも、阿岐あきの宮、

たづたづや、七年ななとせや。あはれ。


吉備きびにして、また八年やとせ、高嶋の宮、

大和はも遠しとよ、高千穗よ遙けしと。


その三

かがなべて、日をよるを、海原うなばら渡り、

かがなべて、としを、宮遷らしき。

  ああはれ、その幾歳いくとせ

  ああはれ、その行き行き。


滿ち滿つや、みたくはへ、早やかく成りぬ、

あめしたことむけむ、とき今成りぬ。

  ああはれ、えしや、

  ああはれ、今ぞときや。


第七章 白肩の津上陸


その一

男聲(獨唱竝に合唱)


青雲あをぐも白肩しらかた、その津に、

たけびぞ今あがる、御船みふねてぬ。

  いざのぼれ大御軍おほみいくさ

  いざ奮へ丈夫ますらをとも


浪速なみはやに騷ぐ味鳧あぢがもや、そのを、

追ひ押しに押しのぼり、みたてめぬ。

  いざのぼれ大御軍おほみいくさ

  いざ奮へ丈夫ますらをとも


その二

日下江くさかえ蓼津たでつ、その津に、

雄たけびぞ今あがる、大御軍おほみいくさ

  いざのぼれ、大和は近し、

  いざ奮へ丈夫ますらをとも


浪速なみはやうしほなしさかのぼると、

我が行かば何はばむ、長髓彦ながすねひこ

  いざのぼれ、大和は近し、

  いざ奮へ丈夫ますらをとも


第八章 天業恢弘


男聲女聲(獨唱齊唱竝に合唱)


しき、蒼雲あをぐもうへに高く、

高千穗や槵觸峯くじふるたけ

  はるかなりその肇國はつくに

  きはみなしあまつみわざ

  いざ仰げ大御言おほみことを、

  かしこきやさや御鏡みかがみ


くにありき、綿津見のしほわかく、

光宅みちたらし、四方よも中央もなか

  はるかなりその國生くにうみ

  かぎりなし天つ日嗣ひつぎ

  いざ繼がせことさすもの、

  勾玉まがたまとにほひつづらせ。


みちありき、いにしへもかくぞ響きて、

つらぬくや、この天地あめつち

  はるかなりその神性かむさが

  おぎろなしみつるぎ太刀たち

  いざ討たせまつろはぬもの、

  ひたにち、しかもやはせや。


雲蒼し、かみさぶといやとこしへ、

照りぐはし我が山河やまかは

  はるかなりその國柄くにがら

  ゆるぎなし底つ磐根いはね

  いざ起たせ天皇すめらみこと

  神倭磐余彦命かむやまといはれひこのみこと


神と大稜威おほみいつ高領たかしらせば、

八紘あめのしたひといへとぞ。

  はるかなりその肇國はつくに

  はても無しあまつみわざ

  いざらせ大和やまとここに、

  雄たけびぞ、彌榮いやさかを我等。

建速須佐之男命


建速須佐之男命


枯山の卷


第一段

をを、をを、

をを。

神ぞれ、おらび哭く

くらき神、

神性かむさがや、霹靂はたたがみ

猛猛たけだけし、ひと柱、

しや、須佐之すさの男命をのみこと

建須佐之男たけすさのを

速須佐之男はやすさのを

ひたぶるや、益良神ますらがみ

あらぶる荒御魂あらみたま大童おほわらはべ

雄叫び、

泣きいさち、

たたら踏み、

ゑはららかすや、

き、放つ湯津爪櫛ゆづつまぐし

美豆良みづら振り亂り、

拳たたき、

掻い垂らす、胸前むなさき

振り分つ八握髭やつかひげ

鳴りとよむ御統みすまる御珠みたま、頸珠、

手纒たまきひぢまきや、

ゆらかす足玉の緒もゆらに

搖り立て、

搖りすさべば、

凄まじ、この生みはての神、

さながらや、海阪うみさか昂騰あがり

押し移る

神立雲かんだちぐも

早手風はやて、飛ぶ電光いなづま

とどろ立つあをみづち

閃めく掻爪かきづめいらちを、卷きなだれて

覆す鱗魚うろくづの大降り雨、

かく歎けば、

かくおらべば、

泣きくたし、泣きはやれば、

うちくらむ世のことごと、

降りくたすそのことごと、

海河も泣き涸らすと、

しとど垂る長霖雨ながつゆや、ああ、

光無し、時無し雨、

日も無し、

はも無し、

ただこほし、ははの國、

ただ遠し、堅洲國かたすくに

おほにただ、おほに泣きこもりぬ。

第二段

をを、をを、

をを。

神ぞ居れ、おら

くらき神、

おどろしき神性かむさがの、

ひたぶるの人性ひとさがの、

しゑや、しや、善き惡しき、

ただ歎く暴風雨おほしけの神、

霧立つや八雲立つ

出雲の子ら、

大族おほうから國造くにつこ祖先神みおやがみ

しや、建速たけはや須佐之男命すさのをのみこと

この命ぞ、

に見る空のさきざき、

眼に見る國のまほろば、

たたなづく青垣山は

青山の石根いはね、木の立、

神弱り、泣きくたすと、

神さぶと、枯山と泣き枯らすと、

息長おきなが息嘯おきその風と

雨呼ばひ、おらび、泣きこもれば、

日をべて、べて、かく歎けば、

おほにただおほくらむ。

かくなれば、世の神神、

をを、神神、

清明まさやけき、ひとしほに和御魂にぎみたま

あきらけく、いつくしき、

常そよぎ、してふる神、

山と精靈いきすたま

大山津見、

鹿屋野比賣かやぬひめ二柱の神、

そが持ち分けて生みませる神、

もろもろの生きの産巣むすび

大地おほつち草分くさわき、木の神久久野智神くくのちのかみ

末ずゑのわかれの神、

澄みわたる神境ひもろぎや、

齋槻ゆづき湯津眞椿ゆづまつばき

葉廣熊白樹はびろくまがし

嚴橿いつかしや、白檮しらかしや、處女檀をとめまゆみ

ああ、黒檜くろび、雲かかるさるをがせ、

雪のの白樺や、

水上みなかみの石楠の神、

ひひらぎや、ひらきそよご、

しみみ立つ馬醉木あしび、黒木、

磐村いはむらの犬大羊齒、

沼邊には茅萱ちがや、葦、髮がやつり。

もろもろの鏡葉や、

霞針かすみばりほそき葉の神、

落葉木や、

若萠わかもえの光る木の芽、

ごも杪欏へご

そを何ぞ、泣き枯らすもの、

日に奪ひ、夜に奪ひ、雨ふらせば、

ありとあるたちのことごと、

ありとある色のことごと、

きほひ無し、こやたわむと、

すべしなし、立ちも滅ぶと、

盡き、素力もとぢから盡き、

ああはや、匂失せぬ。

第三段

をを、をを、

をを。

神ぞれ、おらく、

くらき神、

しや、わらべ速須佐之男はやすさのを

大天おほあめや高天原、

日はらせ、大日おほひる孁貴めのむち

さもこそや夜之よるの食國をすくに

らせ、月よ月讀つくよみ

海原うなのはらはえらさじ、

ことさせ、は聽かじ、

神柄かむがらぞ、あらぶる神、

膽太きもぶとまなじり裂くと、

言擧ぐと、泣きいさち、

あらがふと、おぞえ吼え立つ。

かく、吼え立てば、

大海よ、滄海原あをうなばら

引き引きにひず退しぞき、

潮干るや、干潟泡立ち、

沸き立つや、さそりなすもの、

菊石きくめなす、むなぎなすもの、

えらや、飛ぶはねたつ

八劍やつるぎの蜥蜴草食み、

始祖鳥みおやどり荒き齒にふ。

青水泥あをみどろひどらが沼、

わだかまるぬめりうはばみ

憚らず

曠野あらぬ巨牛おほうし

畏るなし

まがつ狼。

をを、をを、をを、

かく經れば、降りつづく雨をもちて、

蛆沸き、あざれ、蒼蠅さばへなす神神のおとなひ、

萬づ四方よもつ神の災、

高津鳥の災、

ふ蟲の災、

あぶらなす、逆吐ゑづき、嘔吐たぐり、

生み、あやめ、疼き、によ

もろもろのよこしま

曲り、朽ち、え、死ぬる物のけがれ

常無く、火の氣無く、

耀かず、はらひ了へず、

した心澱み、

まず、さやり、

はなひり、おこさやり、

ゑぐしく、いらだたしく、

苦しく、息づかしく、

瘡病くさつつみ、掻きたはると、

しこつ神、追ひ挑むと、

ことごとや世のことごと、

きたぎち、

泣き、言問ひ、

擧り泣き、泣きなづみて、

ああはや事起りぬ。

第四段

をを、をを、

をを。

神ぞれ、おらく、

くらき神、

果しなし、泣きいさつと、

海岸うなぎし上高岸かみたかぎし

巖窟いはやなす岩戸、沙面すなも

腹這ふ大海膽おほひとで

紅殼べにがらや、生死殼なましにがら

錆釘さびくぎのここだくの釘

その根、幹疎もとあらにうち埋めて、

開き葉の高張りや、

大葉蘇鐵、

をを、をを、

をを、

滴るや長雨ながめしづき、

水松布みるめなす美豆良みづら雫き、

苔むすや、ももただむき

細螺しただみみたまい這ひ、

疊菰はかまれ裂け、

小鈴落ち、脚結あゆひ紐解け、

はららぐと、その短裳みじかも

空見ず、ただ歎けば、

海見ず、ただ歎けば、

しや、伊邪那岐大神いざなぎのおほかみ

埓も無し、建須佐之男たけすさのを

みまし

ことさす國はらさず、

何もかも泣きいさちる。

父の御神みかみりたまへば、

伊邪那美いざなみよ、が母、

ははせば、

堅洲國かたすくに

こほし、まかりゆかずば、

ただくと泣く。

ゑや、愚かや、

な住みそ、さば、此の國原、

行け、まかれ、

神柄かむがらぞ、もとな流浪さすらへ、

神やらひやらひたまふと、

ああはれ、建須佐之男たけすさのを

眼もしらみ、追ひやらはれ、

泣き涸らし、はた、わらひぬ。

大陸序曲


路傍にねむる
戰爭畫報を見て


ひた疲れ、ああ、このごと

路のはしにねむる人、

いのちなり、赤きに、

こんこんとうち伏しぬ。


正しきはまじろがず

天地あめつちおもてふらず、

戰士いくさひと守護神まもりがみ

身をさらし、ひげこごる。


なべて見よ、この姿、

晝ももここに無し、

祖國のみ、民族の

血と肉と、一つのみ。


まつろはず、まことなき

滿蒙のかの匪賊。

憤る、憤るもの、

力なり、ためらはず。


戰へば勝つ人も

無し、小床をどこ無し、

せめて今、つつむと

ひきかぶるものも無し。


涙せよ、この姿、

晝ももここに無し。

ここにあり、土のうへ、

ひたぶるにねむる人。



狙ひ



しづかなり夏空、

軍の眞上まうへ

おそろしく形無きもの

風をはらむつかのま。


敵なりや、をさな

生物いきもの

現れ、また現れ、

視野はとほる。


響無し、聲も無し、

氣息のみ

輝やかし時秒のみ

滿ち、いきるる

ひたおもて、つち


軍はあり、草をかつぎ

山のごとしづもる戰車、

睛眼せいがんにひたと向ひ、

だ放たず。


そのはじめ、天地あめつち

つくられてあらたに、

俟つありき、何ごとかの

いつの動き。


どとと射つ我か、彼か、

このたまゆら、

勝つ者の正しき狙ひ

神のみぞ知ろしめすらむ。



熟眠



かげはありおほき戰車、

据われり休らひのあひだ、

道のべ、

響なす蒼蠅さばへのみ

たかたかる。


ねぶたし、ただ

疲れはてて、

空も無し、仇も無し、

いくさ小止をやみ。


命なり、張り滿つる

五日いつか六日むいか

も無し、朝も無し、

飮まず、食はず。


我射ちぬ、彼射ちぬ、

しかも大暑、

何ごとのしらすぞとも

知らず、射ちぬ。


強しとも弱しとも

誰かかむ。

ねぶたし、ただにまぶた

重く垂り


もぐりて、深くもぐりて、

兵なり、我ら、ねむる。

戰車よ、鐵の戰車、

しばしを、

ああ、しばしを光蔽へ。


ねぶたし、

ただに眠ると、

何も無し、我も無し、

ひた土にぬか押しあて。


眞晝ぞ、ただむなしき。

ゑたりや、饑うるともいざ、

生きむとも死なむとも

將た思はず。


ねぶたし、ただねぶくて

早やらずいくさも、彈丸たま

ねぶたし、眠らしめて

つかのま母の聲聽かしめ。



突撃



突撃、

突撃するもの、

突くなり、突きまくり、

ひた刺し、刺しつらぬき、

銃床逆手さかてもろに

飛び入り、はたきのめし、

はたくや、たたき斃す、

これのみ、ただこれのみ。


突撃、

突撃するもの、

ひたぶる、ひたぶるなり、

生死しやうし無し、よこしま無し、

戰ひ、戰ひれ、

突き刺し、たたき斃し、

聲のみ、息あるのみ、

我あり、跳ぶあるのみ。


突撃、

突撃する時、

ただ見る、命ある、醜き、

顏ゆがめ、まなこひらき、

恐れに、きもへし消え、

わななき、わななくもの。

敵なりや、彼なりや、

將た知らず、

斃れに、ただ斃れぬ。

響きて、ひと斃れぬ。

清明古調


白須賀
遠州濱名郡白須賀


白須賀は昔の宿しゆく

ただ白し、ものさびて、

そのしとみ、はひり戸、

なべてみな同じ障子。


ただわびし、軒竝のきなみ

同じ型、

出で、はひる人すらや、

同じ影。


音も無し、なにひとつ、

埃づくものも無し。

草屋のみ、

弱き日あたりたる。


いづこぞ遠江灘、

潮見坂ほどちかくて、

薄ら曇る低き空を

風も來ず。


冬ながら、そのたむろ

ほのなごむ家がまへ、

ここ過ぎて、きびしとも、

おもほえず、寒しとも。


白須賀は舊街道、

朱の鷄冠とさかふりたてて

軍鷄しやもれども。

そは暮のひとあかりのみ。



神苑
明治神宮西參道


かすけさや、この日なかの

ふかき木のしづく。

開けよ、聲を雉子きぎす

の霞に。


たふとさや、神苑の

光る橿若葉かしわかば

しづけさや、くろくる

こもごもの青と緑。


とどめじ、塵ひとつ、

玉の砂敷きならして、

清々すがすがし、參道の

うねるこみち、こを行かばや。


芝生や、緩るきなだり、

寶物殿、

白きはこもる夏の

花のえご、香の一本ひともと


よく觀よ、にぎたま

吾が幼子をさなご

龜の子の搖る影を、

ひれ、さざなみ。


しづもれよ、晝間嵐ひるまあらし

うつつながら、

ほのぼのと雲は立ち、

神と人息吹いぶきかよふ。



雪朝



清明さやけさや、この雪、

ふりおける雪につみ、

木々につみ、

燈籠にしろくつみぬ。


神垣かみがきや、このあした、

石走いはばしる水の音の

うちひびき、

氷柱つららみな新なり、日の光に。


この雪に跡つくる、

兎なり、跳び跳びて。

すがしきは笹の芽

毛のにこもの、をさなし。


滿ち滿つかたじけなさ、

何事もかしこくて、

息づきぬ、

國のの山高きに。


神ながら、この道に

ああ我や言ふすべなし、

大皇子おほみこれまして

春まさに雲ぞあがる。


拍手かしはで

拍手かしはでぞ、ただ。



白樺



すがしきは雪に立つもの、

白樺の林よ、げに

しろき木肌こはだ

そは眞處女まをとめ


かすけさよ、雪のたに

すぐち、ほそき幹の

雪よりも光帶びて。


日は曇り、しろき眞晝、

聲も無し、このかがやき、

風も無し、色ひといろ。


しづけさよ、興安嶺、

ひえびえとけむる梢、

鷹すらも一羽飛ばす。


何すとか、ここに住む

白系露西亞、

貧しきはきよらかに窻ひらきて。


白夜はくやともほのあかる

空ひととき、

白樺の林よ、げに

光る神々。

煙霞餘情


丸彫



丸彫まるぼりに我をる。

この眼のやいば


丸彫まるぼりのこの木彫

細かくも、に荒くも。


丸彫まるぼりのこのもしさ

我彫らむ、みづからを皆。


丸彫まるぼりのてづつなさ、

觸れつつも、この己れ。


丸彫まるぼりよ、息つめて、

息かけて、いとほしと。


丸彫まるぼりのうるはしさ、

こを見よと我思ふ。


丸彫まるぼりきざむもの、

我ならず、何かある。


丸彫まるぼりりあげて、

その白き手に獻げまし。



道の手



ふるさとや、わが母の

この山の手、

昔見しさながらを

ただしづかに。


けたり櫨若葉はじわかば

池も見えて、

壁赤き山のいへ

ひとつふたつ。


築石や、棚畑や、

ふかき晝を

日の照り、

時うつる、この片岨かたそば


影はあり、獨

よきわらはべ

おもざし、我かとも、

いま見上げつ。


鷽鳥うそどりよいづくにか

鳴き、くくみて、

色、匂、さまわかず、

風なるか、空なるかも。


北のせき、南のせき

この道の手、

我は見る、我が昨日きのふ

をさなごころ。



こさめひたき



色はあり、聲にのみ、

こさめひたき、

雫のみこまかなる

この朝あけ。


花はあり、影にのみ、

ひとりしづか、

にほひのみ寂びたもつ

杉よ檜。


巣はかかる、高くのみ、

ウメノキゴケ、

氣色けしきのみ、母鳥おやどり

姿、ぶり。


うつつあり、しろくのみ

濡るる光、

卵のみ、おそらくは

四つかいつつ。


色はあり、聲にのみ、

こさめひたき、

雫よ雫よと、

ただ幽かに。



臺南旅情



ものさや、老酒ラオチウや、

瓜子クエチイはとり食めども、

にほひなし、晝はまだ

彩燈の切子硝子。


あだなりや、

雲に行く日のまぼろし、

ゆゑわかず、うつつなし、

女童めわらべは言問へども。


梅雨つゆぐもり

影にのみ、﨟たけて、

低くのみ

烏秋アアチウの飛びたわむと。


濡れがちや、

朱のびや、

むね碾瓦いしがはら

赤嵌樓せきかんろう


瓜子クエチイ瓜子クエチイは眼の下のちひ黒子ほくろ

齒にあてつつ、

齒にあてつつ、

おろかしく美しく時は過ぎぬ。


註。瓜子(西瓜のたね)烏秋(臺灣烏)

赤嵌樓(蘭人の所謂プロヒレンチヤ城なり)


鴛鴦



飛ぶとりとしも、幽かだに

思ひかけずておろかさよ、

こずゑの雪に鴛鴦をしどり

たつる羽音はおとを觀しや君。



白鷺



雪のおもてに白鷺の

影ほの青き春の晝、

うつつはそよぐ風さきに

たたずむもののせつなさよ。



千鳥



月に觀しの色ならで

氷は薄し水のうへ、

つかれば泛ぶ羽ながら

あまりにしろし我が千鳥。

紀元二千六百年頌


交聲曲詩篇
大陸の黎明


第一章 序曲


天地あめつちひらけしはじめ、成りませる神々

神々を、

 (たたへまつれ、いざや。)


天照あまてらす大御神おほみかみ皇祖すめらみおや

皇祖すめらみおやかくぞ、

 (たたへまつれ、いざや。)


ことさすなかくに大八洲おほやしまこの國土くにつち

 (讚へまつれ、いざや。)


天壤あめつちきはみなき、天津日嗣あまつひつぎ、ここに

 (讚へまつれ、いざや。)


げにいへとおほひます八紘あめのしたくがを海を。

 (讚へまつれ、いざや。)


大きなり、彌榮や、天つ御業みわざ

げにたかし、はややは大御軍おほみいくさ

 (讚へまつれ、いざや。)


おお、今ぞ、大やまと、雲居あがり、

おお、今ぞ、大き御代、照りわたらせ。

 (讚へまつれ、いざや。)

 (讚へまつれ、いざや。)


第二章


種子たねありき、神産かみむすび玉とるもの、

かくりき、在りて生き、つつみぬ。


土なるや、おほくが蒙古モンゴルの底ひふかく、

こもらひぬ、あらがねいはほとのひまうづもれ。


時ありき、日も知らず、星もかず、

ただ在りき、かく在りて千五百萬ちいほよろづの歳。


驚けよ、この命、くしびに若し、

めあげよ、かくりてかくまたけし。


世々ありき、人は興り、地に滿ち滿ちき。

國興り、た滅び、またありき。


つちふるや、なるすな、嵐とたけび、

みなぎるや、おほき水、あめかたぶけぬ。


なほ在りき、生きのいのちかをすと、

つありき、つひにむそが黎明しののめ


海を越え、空をおほひ、とどろ來るもの、

地響ぢひびきや、おとぜてつばさつもの。


誰ならず、日の御裔みすゑ久米くめ大伴おほとものち

神々の我が跫音あのと大御軍おほみいくさ


つありき、大きくが、今かがやけり、

さ緑や、はてしなくよみがへるもの。


種子たねありき、神産かみむすたまるもの、

命なり、いきづくとぶきそめぬ。


第三章


聞け大陸の黎明しののめに響くは何ぞ嚠喨と、

とどろと進む地響ぢひびきの敢て押し行くいきほひを。


海を越えたる百萬の大御軍おほみいくさの雄叫びは

旗雲高くさしのぼる日にこそ勇めまのあたり。


沙漠の嵐吹きすさぶ北は蒙古もんごる滿洲まんぢゆ里亞りや

見よ、長城の嶮にして八達嶺は雲しづむ。


てんより來る大黄河、長江の水さかしまに、

ひた攻めのぼるつはもの勝鬨かちどきすでに年りぬ。


神助の凪にふねてて月落ちかかるバイヤス灣、

椰子の葉蔭に枕ぎて夢むは誰ぞ海南島。


ああみんなみしほ黒く、呼べばこたへむ波の涯、

俟つある民の歡びに結びて誓ふ共榮圈。


思へ、とどろく跫音あしおと大御軍おほみいくさくところ、

物ことごとくよみがへり、あかねさす日ぞ滿たむ。


第四章


大いなり、今にして現人神あらひとがみ、かくおはせば、

かぎりなき大御稜威おほみいつかくあらせば。

 (彌榮いやさかや、八紘あめのした一ついへ

  彌榮や、大き亞細亞アジヤ、南の海。)


あらたなり、早や目覺め、湧きあがるもの、

どよめきはあめに滿ちつちに滿ちぬ。

 (彌榮や、この大き朝とどろき。

  彌榮や、この大き朝とどろき。)


天雲あまぐものあをくたなびく大きくが

かくいにしへやはしたまひき。


聲はあがる彌榮
紀元二千六百年壽詞


聲はあがる、彌榮いやさか

とどろきはいやあがる、彌榮いやさかとぞ。


大君おほきみは神にしす、

大御稜威おほみいつ神としす。


畏きやあま日嗣ひつぎ

幾足日いくたるひ幾千歳いくちとせしろしめす。


青雲や、肇國はつくにや、大やまと、

神倭磐余彦天皇かむやまといはれひこのすめらみこと


かくらし、かくしき天皇すめらみこと

八紘あめのしたいへよげに、一ついへと。


聲はあがる、彌榮いやさか

とどろきはいやあがる、彌榮いやさかとぞ。


 現神あきつがみ今にしす、

 大御稜威おほみいつ日のごとす。


 ただあかあまつみわざ

 押し照るや大きくが、南の海。


 おほらかや、大みことかのごとす、

 八紘あめのしたげにいへと、一ついへと。


 ぎまつれ、大やまと。皇國すめらみくに

 仰げいざ、けふこの日、大みいくさ


聲はあがる、彌榮いやさか

とどろきはいやあがる、彌榮いやさかとぞ。


紀元二千六百年頌
朗誦詩



 りあがるりあがる國民の意志と感動とを以て、盛りあがる盛りあがる民族の血と肉とを以て、個の十の百の千の萬の億の底力を以て、今だ今だ今こそは祝はう。紀元二千六百年、ああ遂にこの日が來たのだ。


 蕩々たうたうたる空、藹々あいあいたる土、洋々たる海。和風おのづからにして、麗光十方にく。日の天にあるかくのごとく、民の仰いでうるほふかくのごとく、悠久二千六百年、祝典の今日が來たのだ。


 ラヂオは傳へる式殿の森嚴しんげんを、目もあやなる幢幡どうばん、銀の鉾射光ほこ・しやくわうたまを。嚠喨りうりやうと鳴りわたる君が代の喇叭らつぱ金屏きんべうの前に立たします。


 聖天子せいてんし、澄みに澄みとほる靈氣、聲ひとつせぬ五萬の呼吸、崇高すうかうなるこのひと時。靴音である。畏みに畏む總理大臣の靴音がする。奉る朗々たる壽詞よごと。湧きあがる湧きあがる 天皇陛下萬歳。


 皇禮砲はとゞろきわたつた。帝都は彩光に輝き、港灣は滿艦飾した。宮をあげてのせう篳篥ひちりき浦安うらやすまひ。國をあげての日章旗、神輿みこし、群衆。祝祭は氾濫し、ああ熱情は爆發した。轟けと、轟けとばかりに叫ぶ大日本帝國萬歳。


 光あれ、輝きあれ、大日本。神國日本の姿はここにある。仰げよ萬世一系の皇統、たる皇謨くわうぼは無限にす。ああ、八かう肇國てうこく青雲せいうんは頭上にある。


 かの正しきを養ひ、かがやきを重ね、めぐみを積む。皇祖皇宗はこの徳におはし、神ながら道に蒼古さうこに、あやに畏き高千穗の聖火は今に燃えいで盡くるを知らぬ。(火だ、まさしく民族の祭典の火だ。)思へ、天業てんげふ恢弘くわいこう黎明しののめ、鎭みに鎭む底つ岩根いはねの上に宮柱みやばしらふとしき立てた橿原かしはら高御座たかみくらを、人皇第一代神倭磐余彦かむやまといはれひこ天皇すめらみことを、ああ、大和やまとは國のまほろば、とりよろふ青垣あをがきとびは舞ひ、朗かにおほらかに草も木も言祝ことほうたつた。


 ああ、我が民族の清明心、正大、忠烈、武勇、風雅、廉潔の諸徳。精神は一貫する。傳統は山河と交響し、臣節は國土にふ。大義の國日本、日本に光榮あれ。


 ひらけ。世紀は轉換する。躍進更に躍進する。興隆日本の正しいすがた、この體制に信念あれ。


 いにしへ、あだなすは討ちてしやみ、まつろはぬことむけやはした。砲煙のとどろき、爆彈の炸烈する、もとより聖業の完遂にある。大皇軍おほみいくさくところ必ず宣撫の恩澤めぐみがある。げにやくまなく御稜威は光被する。鵬翼萬里、北をおほひ、大陸をつつみ、南へ更に南へびる。曠古未曾有の東亞共榮圈、ああ、盟主日本。


 りあがるりあがる國民の意志と感動とを以て、盛りあがる盛りあがる民族の血と肉とを以て、今だ今だ今こそは三唱しよう。聖壽の萬歳を、皇國の萬歳を。紀元二千六百年の今日、祝典は氾濫する。熱閙ねつたうは光とあがる。進め一億、とどろく皇禮砲のもとより進め。大政翼贊の大行進を始め。行けよ皇國の盛大せいだいへ向つて、世界の新秩序へ向つて、人類の福祉ふくしに萬邦の融和に向つて。一齊にとどろかす跫音あしおとを以て、個の十の百の千の萬の億の、靜かな底力を以て。


後記


新頌


『新頌』は紀元二千六百年記念として最近に刊行された。創作年月は『海豹と雲』以後、今日に及んでゐる。

 詩風は『海豹と雲』の延長であり、概ね蒼古調である。私は曾てかう思惟した。

「古代の膽を捉へることは、あながち古語死語を漁ることではない。生々躍動した古代感情のリズムをこそ素手に捉へることである」と。

 この所念よりして、この神ながらの道に立ち、かの蒼古に溯つて之を求めようとしたのである。而も現代の感覺を以て。

 私はここに於て、これまでの全詩集を、この中の交聲曲詩篇「海道東征」に總括し、我が大成を所期した。この「海道東征」こそは、紀元二千六百年頌として日本文化中央聯盟の囑に應じて成した記念作であり、日本民族の物せる國民詩曲として、また信時潔氏の作曲と相俟つて、革正の先聲を掲げたものと信じ得る。この交聲曲は東京音樂學校の演奏により五百人の合唱を以て公開せられ、ビクターに於てまた十二吋盤八枚にわたり吹き込まれた。さうして英獨の譯詩と共に、世界の樂匠たちにその寄するところになる祝典樂曲の返禮として海外へ贈られ、また放送せらるることになつた。望外の幸である。因みにこの詩篇は神武天皇讚歌三部作の中の一つである。

「建速須佐之男命」の自由體長篇は、古事記を現代の感覺と角度とを以て新に解釋しようとした計畫の中の一試作であり、その一部である。私は同じくこの道を溯り、かの蒼雲を我が蒼雲と戴くであらう。

海豹と雲    初版  昭和四年八月  アルス版(絶版)

白秋全集第四卷 詩集 昭和六年一月  アルス阪(絶版)

底本:「白秋詩歌集 第二卷」河出書房

   1941(昭和16)年219日発行

※「後記」は「白秋詩歌集 第二卷」に対するものであるが「新頌」の見出しのつく部分のみを本文末に付記しました。

※「艪」と「艫」の混在は底本通りにしました。

入力:岡村和彦

校正:川山隆

2011年210日作成

2011年36日修正

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