三人と 二つの りんご
小川未明



「かずおちゃん、どうして なみだを だしたんだい?」

と、たろうさんが ききました。

「よしおさんと しげおさんが ひっぱったんだよ。」

「なんにも しないのに?」

と、きみさんが いいました。

「あそびに こいと いって、りょうほうから ぼくを ひっぱったのだ。」

「なあんだ、かずおちゃんが、いなかへ いって きて、めずらしいからだ。」

「いなかの おじいさんも いいけれど、とうきょうの おじいさんも いいな。」

と、たろうさんが いいました。

「おじいさんの ところへ、あそびに いこうよ。」

「ええ、いきましょう。」

 おじいさんの おうちは、ちかかったのです。三にんは かけだしました。

「おじいちゃま、あそびに きました。」

「よく きた。さあ おあがり。なんにも やる ものが なくて こまった。りんごが 二つ あるから、ちえだめしを して、よく できた ものに 一つ、あとの ふたりに はんぶんずつ やると しよう。」

「むずかしい もんだい?」

「いや、やさしい もんだいだ。おとうさんと おかあさんと、どちらが すきですか。」

 いちばん ちいさい かずおちゃんが、

「ぼく、おかあさん。」

と、すぐに こたえました。きみさんは、

「わたし、わからないわ。」

と こたえました。おとうさんに わるいと おもったからです。

「ぼく、どちらも すき。」

と、たろうさんが こたえました。

「みんな よく できた。」

と、おじいさんは わらいながら いいました。そして、いろいろと かんがえた のちに、

「かずおちゃんが いちばん よく こたえました。ですから、かずおちゃんに りんごを 一つ あげます。あとの ふたりには はんぶんずつ わけて あげます。」

と いいました。

底本:「定本小川未明童話全集 16」講談社

   1978(昭和53)年210日第1刷発行

   1982(昭和57)年910日第5刷発行

初出:「セウガク一年生」

   1939(昭和14)年3

※表題は底本では、「三にんと 二つの りんご」となっています。

※初出時の表題は「三人ト二ツノリンゴ」です。

入力:特定非営利活動法人はるかぜ

校正:Juki

2012年716日作成

2012年927日修正

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