(辛いこつた辛いこつた!)
中原中也



辛いこつた辛いこつた!

なまなか伝説的存在にされて

あゝ、この言語玩弄者達の世に、

なまなか伝説的存在にされて、

(パンを奪はれ花は与へられ)

あゝ、小児病者の横行の世に!


奴等の頭は言葉でガラガラになり、

奴等の心は根も葉もないのだ。

野望の上に造花は咲いて

迷つた人心は造花にすがる。

造花作りは花屋を恨む、

さて、花は造花程口がきけない。


造花造りの羽振のよさは、

あゝ、滑稽こつけいなこつた滑稽なこつた。

それが滑稽だとみえないばかりに、

花の言葉はみなしやらくさい。

舌もつれようともつれまいと

花に嘘などつけはしないんだ。

底本:「中原中也詩集」角川文庫、角川書店

   1968(昭和43)年1210日改版初版発行

   1973(昭和48)年830日改版13版発行

※題名を一行目の文言から取った扱いは、底本が採用しているスタイルにならいました。

入力:ゆうき

校正:木浦

2013年123日作成

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