秋の日曜
中原中也



私の部屋の、窓越しに

みえるのは、エヤ・サイン

軽くあがつた 二つの気球


青い空は金色に澄み、

そこからきのこの薫りは生れ、

娘は生れ夢も生れる。


でも、風は冷え、

街はいつたいに雨の翌日のやうで

はじめて紹介される人同志はなじまない。


誰もかも再会に懐しむ、

あの貞順な奥さんも

昔の喜びに笑ひいでる。

底本:「中原中也詩集」角川文庫、角川書店

   1968(昭和43)年1210日改版初版発行

   1973(昭和48)年830日改版13版発行

入力:ゆうき

校正:きりんの手紙

2019年927日作成

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