(洋)金の勘定を仕ずに来た
三遊亭円朝



 独逸どいつ名高なだかい作者レツシングとふ人は、いたつて粗忽そそつかしいかたで、其上そのうへ法外ばかに忘れツぽいから、無闇むやみ金子かねなにかゞくなる、「これなんでも下婢かひ下男げなん窃取くすねるに相違さうゐない、一ばん計略はかりごともつためしてやらう。とふので、レツシング先生或時あるとき、机の上へ金銀かねをバラ〴〵散らかしたまゝ、スーツと友達のうちへやつてまゐり、レ「此頃このごろ無闇むやみ金子かねくなつてやうがいから、これ〳〵ふ事にしてた、これたれが取るとふのがチヤンとわかるね。友「へーえ、それうまい事を考へたが、全体ぜんたい幾許いくら置いてたんだ。レ「ア、かね勘定かんぢやうずにた……それではなんにもなりませぬ。

底本:「明治の文学 第3巻 三遊亭円朝」筑摩書房

   2001(平成13)年825日初版第1刷発行

底本の親本:「定本 円朝全集 巻の13」世界文庫

   1964(昭和39)年6月発行

入力:門田裕志

校正:noriko saito

2009年619日作成

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