歌舞妓芝居後ありや
折口信夫



音羽屋六代の主 尾上菊五郎歿す。その日遥かに能登にあり。我また、

ワタクシほとけを持ちて、盂蘭盆の哀愁、愈〻切なるものあり。


亡びなきものゝ さびしさ。永久トハにして ナホしはかなく、人は過ぎ行く


自らツクる所の戒名 芸術院六代菊五郎居士と言ふと伝ふ。

もの思ふことカレの如く深く、之を表すこと彼の如くセツにして、なほ知識

短きこと斯くの如きに、人は、ほと〳〵哭かむとす。


酔ひ深く いとゞ五斗ゴトウの舞姿 しづかに澄みて、入りゆけるはや

底本:「折口信夫全集 22」中央公論社

   1996(平成8)年1210日初版発行

底本の親本:「かぶき讃」創元社

   1953(昭和28)年220

初出:「演劇界 第七巻第八号」

   1949(昭和24)年8月発行

※初出時の署名は「釈迢空」です。

※底本の題名の下に書かれている「昭和二十四年八月「演劇界」第七巻第八号」はファイル末の「初出」欄に移しました。

※初出時のルビは平仮名です。

入力:門田裕志

校正:酒井和郎

2019年730日作成

青空文庫作成ファイル:

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