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「新青年」一九二六年一一月
国枝史郎



 惣太物をはじめとして甲賀氏は近来の作にユーモアを織り込もうとしうして織り込んで居りますが、私見をもってすればこのユーモアまだまだ洗練されて居りません。甲賀氏従来の特色は非常に複雑な筋を立てれを明快に率直に解剖するにあったようですが、その明快と率直とが洗練されていないユーモアのため濁されて居るように思われます。でユーモアをもっと洗練して貰うか乃至ないしは一時引っ込ませて貰いいのが私の希望であります。切角せっかくの甲賀氏の作がその洗練されていないユーモアのために安手に感じられるということは如何にも残念です。あえて苦言を呈します。

底本:「国枝史郎探偵小説全集 全一巻」作品社

   2005(平成17)年915日第1刷発行

底本の親本:「新青年」

   1926(大正15)年11

初出:「新青年」

   1926(大正15)年11

入力:門田裕志

校正:Juki

2014年410日作成

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