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「新青年」一九二六年三月
国枝史郎



小酒井不木氏の作では新青年の「恋愛曲線」大衆文芸の「人工心臓」を挙げる。いずれも凄愴酷烈である。そうして社会性を持っている。江戸川乱歩氏の作では苦楽の「闇にうごめく」を挙げる。例にって瑰麗の文章である。そうして次号を待たせるだけの強い魅力を持っている。平林初之輔氏の評論には僕はいつも感心し、そうして敬意を払っている。新青年の「予審調書」も、処女作などとは思われない程、調った見事の作である。横溝正史氏の「広告人形」甲賀三郎氏の「ニッケルの文鎮」本田緒生氏の「街角の文字」(いずれも新青年所載)等は、玄人くろうとの手に成った尋常の作。

底本:「国枝史郎探偵小説全集 全一巻」作品社

   2005(平成17)年915日第1刷発行

底本の親本:「新青年」

   1926(大正15)年3

初出:「新青年」

   1926(大正15)年3

入力:門田裕志

校正:Juki

2014年410日作成

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