漂著石神論計画
折口信夫



1 柳田先生の民俗学的研究上、一大体系をなす石信仰。今新な回顧の時に達した。

2 諸国海岸に、古代より神像石カムカタイシの存在した事実。

3 神像石の種類。

 a 定期或は、臨時に出現するもの。

         ┌イ、海岸。

 b 常在するもの┤ロ、海岸から稍隔つた地。

         └ハ、海中の島又は、岩礁。

4 神像石の様態。

 a 唯の石であるもの。

 b 神の姿を、想見せしめる程度のもの。

5 この論は、此を出発点として、漂著ヨリ神信仰の中、石神の件を考へる。

6 3のイ・ロ・ハは、海岸に出現する形が、最、普通であり、正確なものである。此が、浜を遠ざかる程、村の生活が、山手に移つた事を示す。ロ・ハは、遥拝信仰発達の一過程であるが、其多くは、神幸の儀式を行ふ前の、足だまりとなる地点であつた。

7 「遥かの沖にも、石はあるもの。エビス御前ゴゼの腰掛け石」の唄。

8 腰掛け石と、影向石と。

9 五郎投げ石・力持ち石。

10 村岡五郎──相州の巨人伝説。

 a 曾我。

 b 鎌倉。

11 石つぶて。

12 おひし。

 a 生石

 b 大石

13 一夜、忽然出現。

14 石を以てする神出現の証──地蔵。

15 石出現の夜の行事。

16 石と、成年戒と。

17 印地打ちと、成年戒と、石の洗礼と。

18 石の旅行性(自力ならぬ)・植物旅行性。

19 石の人による旅行。

20 石の分霊観。

21 人にとられると同時に、大きくなる。

   育て主を待つ。之が極ると、急に大きくなる。

              ┌翁

 a 大きくなる者──育み人┤

              └少女──後、夫婦

 b 小さいまゝの者

22 育み人有勢な場合。

 a 少彦名──つき物

 b 天日矛の石及び珠──夫婦

23 より石と、巫女と。

24 玉の歌。

 a 魂関係

 b より来る玉

25 玉は石か、貝か。

26 装身具以外の玉。

27 玉がしはを、石とする説。

   玉を盃に入れること。

28 海祇の玉献上と、降服。

29 玉の大きくなる事。

30 世襲の玉と、その増殖した物を伝ふる家系。

31 玉を貰ふ事が、魂を貰ふことになる。──みたまのふゆ。

 a 定期 歳暮

 b 臨時 みたま賜ふ

32 玉その物から、魂を托する物。みまのからに変化。

33 玉よる磯。

34 やぼさ──みまのより処。

35 対馬正式。

36 壱岐のやぼさ

37 やぼさから、鬼塚へ。

38 鬼塚と、より神と。

   より神と称する物。

 a 建て物──海

     ┌イ、巫女の憑り神

 b 民俗┤ロ、盲僧の役神

     └ハ、陰陽師

39 神功皇后の石。子負の原の鎮懐石。

   壱岐の鎮懐石(石を栓として置く)。

40 石数増殖。

41 石成長。

42 鎮懐石の意義と、成女戒と。

43 鎮懐は、鎮魂の一方面であること。

44 鎮懐石の他処より来る事。

45 望夫石の問題。

46 親友中山太郎さんの考証。

47 人や動物の石になり、植物の石になること。

48 三宝絵詞・今昔物語では、動物の過去生を説いて、経を聴く為の仮身だと説く。未来生を説くよりも、此時代の仏的色彩が出てゐる。

49 此と共に、未来転生を説いて、神道(仏法一派として)に入る事を言うたに違ひない。

50 犬は固有種の少数の外は、猫と同じく、外来のもので、猫よりは遥かに、早かつたらしい。

51 異郷の叡智を受けた、敏感な生物。

52 人に犬姓を与へた、播磨風土記の例(ノリつげだらう〕首)

53 常世長鳴鳥式の智慧。

54 沖縄の各由来記には、犬の神になつた話が多い。それは、石になつたことである。

55 いづれ、仮死の状態を考へるのだらう。

56 常世の所属たらしめる為の洗礼には、石の形を経過せしめる。

57 大国主の赤猪石。

58 出雲の国造の、猪形の石につけて、菱根池に水葬せられたこと。

59 岡となる。大丘──石。

60 蚕の化成した、日女道ヒメヂヲカ

   石と山との関係。

61 猪の石。

62 犬その他のとてむ

63 印南郡益気ヤケ里斗形山あつて、石橋がある。

   天との通路だ。天の八十人上下した。

   此は、動物以外の第二義式化成。

64 よみの国へ行く巌窟。

65 彼岸国からの印象。

   かし石の穴の雫の、柱石となつた事。

底本:「折口信夫全集 3」中央公論社

   1995(平成7)年410日初版発行

底本の親本:「『古代研究』第一部 民俗学篇第二」大岡山書店

   1930(昭和5)年620

初出:「民俗学 第一巻第一号」

   1929(昭和4)年7

※底本の題名の下に書かれている「昭和四年七月「民俗学」第一巻第一号」はファイル末の「初出」欄に移しました。

※複数行にかかる中括弧には、けい線素片をあてました。

入力:門田裕志

校正:仙酔ゑびす

2007年48日作成

2007年63日修正

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