ペンとインキ
夢野久作
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ペン先がインキにこう言いました。
「お前位イヤなものはない。私がいくら金の衣服を着ていても、お前はすぐに錆さして役に立たなくしてしまう。私はお前みたいなもの大嫌いさ」
インキはこう答えました。
「ペンは錆るのが役目じゃない。インキはなくなるのがつとめじゃない。一緒になって字を書くのが役目さ。錆るのがイヤなら鉄に生まれて来ない方がいいじゃないか。インキがイヤなら何だってペンに生まれて来たんだえ」
底本:「夢野久作全集7」三一書房
1970(昭和45)年1月31日第1版第1刷発行
1992(平成4)年2月29日第1版第12刷発行
初出:「九州日報」
1923(大正12)年11月3日
※底本の解題によれば、初出時の署名は「土原耕作」です。
入力:川山隆
校正:土屋隆
2007年7月21日作成
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