医者と病人
夢野久作


 死にかかった病人の枕元でお医者が首をひねって、

「もう一時間も六カしいです」

 と言いました。

「とてもこれを助ける薬はありません」

 これを聴いた病人は言いました。

「いっその事、飲んでから二、三日目に死ぬ毒薬を下さい」

底本:「夢野久作全集7」三一書房

   1970(昭和45)年131日第1版第1刷発行

   1992(平成4)年229日第1版第12刷発行

初出:「九州日報」

   1923(大正12)年1118

※底本の解題によれば、初出時の署名は「香倶土三鳥」です。

入力:川山隆

校正:土屋隆

2007年721日作成

青空文庫作成ファイル:

このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。