ゐろりの中の街
スチーブンスン
新美南吉訳



ゐろりの中に街がある、

かすかな足音きこえてる。

ランプがともり、靄がある、

庭の木などに壁などに。


靄のなかから火がもえて

てらし出される部屋がある。

屋根やご本も見えてゐる。

みんな真赤にてらされる。


ゐろりの中の街中の、

塔の下かげ行く兵士。

けれど私が見てるうち、

兵士も光も消えてつた。


かうと再び火がもえる。

ふたたび街をてらしだす。

ほうらこんどは谷もある。

ほうら兵士が又見える。


もえてるほだよ兵士らは、

どこまで行くの、聞せてよ。

ゐろりのなかの此の街は、

これは何なの、きかせてよ。

底本:「日本児童文学大系 第二八巻」ほるぷ出版

   1978(昭和53)年1130日初刷発行

入力:菅野朋子

校正:noriko saito

2011年14日作成

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