往復帖
宮本百合子



   要件(婦人部会へ)


 四月二十六日(金)

一、出版プランについて

(A)婦人のための問答集 二冊

  これはもう出版部とお話がついているのでしょうか。

Ⓑ労働組合における婦人組織。

  これを第二次に出したく思います。

 内容。日本、各国、国際労働会議における各国婦人組織。

  誰が執筆者によいでしょうか。

Ⓒエンゲルス、「家族、私有財産、国家の発生」

  これは党出版部から出したいが、計画についておききでしょうか。

Ⓓ選挙の結果について は もし私が書くのでしたら 読売に書いたもの、婦人公論に書いたものを中心にして小さいパンフレットにしたらどうでしょう。それに、各職場からの働く婦人の感想、働く男の人たちの婦人代議士に対する感想をも集めて合わせてまとめたいと思います 新しいいいヨロン集でしょうと思いますが。

  どうか御賛成でしたら この職場の声を集めることをお願いいたします。どなたが、お集め下さるでしょう。『働く婦人』でやりますが、すこしおくれます。

(二)『前衛』にアメリカからのメッセージへの答えを(婦人部の)のせるそうです。原稿まわしました。

(三) 記者会見へのトピック何かありましたら、どうぞ。


 五月十五日

(一)、大町さんのアイサツの写真は不成功で残念でした。

  あれはこの次のキカイには、もっともっと明るくはっきりした写真をつけないと本来の目的を果さないと思います

二、ポスター写真については、慎重に考えないと大失敗です。とりかえしつかない。費用をちゃんとかけて、例えば「目黒区三上町一〇〇田村茂」に連絡する、

三、全日本婦人大会の招待状が、関協婦人部へ来たかどうか長島さんにきいて下さい。もし、来ていたら、十七日には出席して

(一)労働組合婦人部は、神近、深尾の如き人々のおもちゃではないこと。深尾の文化的戦犯性(ファシズム謳歌者であったこと)

(二)新聞では、進歩党婦人代議士が 老人は二食でよい、と云った。そういう婦人代議士を、組合婦人部として支援し、空虚なデモに動員されることは、出来ない。

  デモをすると新聞に出ていたが、それのために組合婦人部を私用することは国民が認めない、とはっきり抗議すること。

  いかに総同盟婦人部がおとなしくてもまさかこれをよろこびはしまい、と。

  招待状が来ていたら長島さんに必ず出てもらって はっきり云ってもらうこと、

  組合婦人部の解消のようなことですから。どうか、抗議の要点も明瞭におつたえ下さい。

  必ずお願いいたします。

○大町さんの写真のこと対策へおっしゃって下さい。思っているより重大であることをよく云って下さい。

○全日本婦人大会について、のプリントは各新聞社にまわしたでしょうか、

  吉田玉緒、宮古 鷲沼(毎日)その他は当日ちゃんと出席してくれるよう、よく連絡をとって下さい。

○十七日には 必ず 槇氏、大町氏は御出席下さい。


 五月二十一日

 この次の婦人部会の議題に願います。

一、農民委員会の婦人に関する研究

  (前回出来ませんでした)

二、総同盟組合婦人部の活動を具体的に調査研究して、よい素質の組合婦人でも、共産党が正しいのは分っているが、会合はあっちがよいからと出席する理由を発見すること、そして、技術上学ぶこと。

三、新日本婦人同盟(市川対原田さんたちの件)早く婦人民主クラブと連絡ある活動をしたいと思います。全く統合してはしまわなくても。そのために 原田さんのグループ、大町さん槇さん宮本どこか特別の相談会をおもち下さい。その結果、婦人民主クラブの方は、下ごしらえしましょう、この前、みんながヤッキで反対したそうだが今回加藤さんは、ああいう会さえこしらえかけたのだから反対するケンリを失ったわけです。

  羽仁その他の人には話せば分ります。

  原田さんは初めはその希望でした由(私は欠席したけれども)

○恐縮ですが、この間の全日本婦人大会の模様かいつまんでノート下さいまし、これからのやりかたのために。


 六月七日

 次の婦人部会への議案

一、婦人部員の再編成について。

 宮本百合子は出席がわるくてすまないと思います。只今もっている仕事は左の通り。

 (一)文化部員

 (一)新日本文学会

 (一)放送委員会

 (一)出版協会文化委員

 (一)働く婦人編輯

 (一)日ソ文化レンラク協会

 (一)著作家組合

 (一)日米レンラク協会。

 どうか御察し下さい。

 右のうち整理出来るものは整理して居りますが、大体組織が出来かかり、或は出来たばかりで、或は放送委員会のように悪質な条件で、目下すぐどけません。

 婦人部会へは、これらの様々の仕事から反映して来る諸問題をとりあげて頂きたいと思うし、婦人部として私のつかい道はその点にあると思います。その点についてどういう繋りかたにして 婦人部で私を活用して下さるか 御協議下さい。婦人部として一番有効な形を考え出して頂けたら幸です。


 文部省婦人教育委員会の経過

一、前回五月下旬欠席しましたが、打合わせた通り左記のように局長あて意見出しました。

Ⓐ大日本婦人会の完全な解消と基金百万円の処置の公表

Ⓑ地方の社会教育局の構成の民主化

Ⓒ文部省自身組織するどんな婦人組織も不用。もし真に婦人を助けるつもりならば右二つを実行してあとは婦人の自発性にゆだねること

  この日、ミス・ウィードが松岡洋子を通ヤクとして出席。アメリカ流のクラブの組織について話し、御婦人連興味をもった由。

○目下その「クラブのつくりかた」のパンフレットほんやく中。出来上ったのを加藤しづえが書きなおし、来週月曜日ごろまでに届けるでしょうミス・ウィードに。その後又文部省の会合がありましょう

○ミス・ウィードは、私がそのクラブのようなものの提案をするようにということですが 私は絶対にことわりました、わたしはどんな場合にでも保守政府、文部省のギマンのカンバンにはならないから、と云って。ガントレット恒子 松岡、或は加藤しづえが提案するでしょう もし私がこの次出席すれば、質問の形でどこまでも文部省の介在をふせぐという役割をうけもちました。

○この次は出席しても、あとは、わたしの代りとして、大町米子さんをスイセンしたいと思います。大町米子さんは女の人たちが一般的に好意をもっていて仕事をなさりいいでしょうと思います。実現するかしないか分りませんが。大町さんとしても直接触れていらっしゃる方が簡単でいいでしょう。

○生活保護法

 寡婦年金(もっと広汎なものですが、名がわかりませんから仮称)

 厚生省で今回の議会に生活保護法案を出し 五人一ヵ月二百五十二円程度の救サイをするという案を出します。

  加藤しづえは、ヘッドコーターへ行って、こんな貧弱な法律はひどいから、もうすこしましにしろと云ったところ、では厚生省に、そのための委員会を催すよう、サジェストすると云ったがちっとも召集して来ない。ので、きのう厚生省へ行ったら、あなたの方で、どうかやれるならねがいます、とのことだったそうで、自分が中心になって人を集め 生活ホゴ法を改善した年金法のようなものを提出したい由です。

(一)生活ホゴ法について、党はどういう態度をとりますか

(二)加藤しづえのその委員会には 大町米子 柄沢とし子が加っています

(三)党でとり上げるにしろ、イニシアは加藤が自分でとったものと感じていることを十分念頭におく必要があるでしょう。

  きのうも「共産党の婦人部がどう思ったってかまわないけれども云々」という風に云っていました。つまりあの党の本質上、決して、心から提携する感情はないのですから、自分のイニシアをよこからさらわれた形になったらよくないでしょう(これは、もし党がこの年金法をとり上げる場合のやりかたについて、大町さんその他皆さんが、十分お含みおき下さった方がいいと思って。いきなり、そんなことは加藤なんかがやるべきことではない 党でとりあげるべきだ、と云う見解もおこり得ますから。現実には、しかし、もうあのひとが着手し動き出しているのですから。)念のために。

  更に

  加藤さんは、云わば「アメリカ面での日本婦人代表」めいた存在です。社交的に いかにも顕著な存在ですが、日本の実際には大した足場がありません。そのために、アメリカの目の下で、社交性を裏づける「何か一つ」をやらなければならないという焦燥があるということがわかりました。そのために、いろいろの婦人間の動きもするということがわかりました。

  これは、話している間に私の感じたことですが。──御参考までに


○ 婦人民主クラブ役員改選のこと

 来る六月十三日の会合で、多分役員改選が議題にのぼるでしょう

 今まで発企人のいすわり常任幹事でしたが幹事全体と地区の代表のような人でセンコウ委員を選んで そこからのスイセンコーホを、更に決定する方法です。

 私は再選されたにしろ幹事はやめます 必要なら、新聞『民主婦人新聞』の編輯か相談役にはなります。

 婦人部のかたその他適当と思われる方はなるたけそれぞれの地域で かたまって婦人民主クラブをこしらえて下さる方が、将来のためにいいでしょうと思います。


○総同盟について

 この間大町さんが、総同盟も単一組合となって、どちらの区別もなくなる、とお話し下すったように思います。総同盟は、自分たちの内部で丈単一組合化をやるので、他の系統の組合と合流した単一化になるのではないようです。従って、総同盟単一組合中の婦人部の問題はイゼンとしてあるわけです。お話のきき間違いかとも思って、一寸。

底本:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社

   1981(昭和56)年530日初版発行

   1986(昭和61)年320日第2版第1刷発行

初出:同上

入力:柴田卓治

校正:磐余彦

2004年215日作成

青空文庫作成ファイル:

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