無題(十一)
宮本百合子


 自分で書いたことの意味が、十年もたって一層ほんとにわかって来る面白さ。十年前に自分は、これからが作家としてむずかしくなる、土台よ、しっかりその重みにこたえろ、という意味をかいた。

 そのときも、そのときとしてわかったところ一杯で書いている。だが、このごろ、そういうことの具体的な実際が一層わかって来た。重みにこたえる土台の上を踏んでみて、この十年にどのくらい、深くしっかり工事が出来たかな、とはかって見る。

底本:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社

   1981(昭和56)年530日初版発行

   1986(昭和61)年320日第2版第1刷発行

初出:同上

入力:柴田卓治

校正:磐余彦

2004年215日作成

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