あとがき(『明日への精神』)
宮本百合子



 今日の私たちの生活にとって、明日というものは、世界の歴史のなかで考え得る最も複雑な内容で予想されるものとなって来ている。きょうからあしたへのうつりが、ただ夜から朝へのうつりかわりだと感じているひとは、もう一人もいないだろうと思われる。明日をよく迎えたい心は、今日の生活を一層切実に愛し、そこから学べるだけのものを隈なくとって、明日へつづく自分たちの二度とはない生命を花咲かせたい願いをもたせる。

 私たち女のその願いの熱い脈搏が、ここに集められたもののなかに響いていて、その自然な響きが又ほかのいくつかの胸の裡に活々とした生活への脈動をめざまさしてゆくことが出来るとしたら、ほんとうに歓ばしいと思う。

   昭和十五年九月

〔一九四〇年九月〕

底本:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社

   1981(昭和56)年530日初版発行

   1986(昭和61)年320日第2版第1刷発行

底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房

   1953(昭和28)年1月発行

初出:「明日への精神」実業之日本社

   1940(昭和15)年9月発行

入力:柴田卓治

校正:磐余彦

2004年215日作成

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