序(『伸子』)
宮本百合子
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この小説は、大正十三年の九月から十五年の九月までの間に、一部分ずつ改造に掲載されたものだ。
書き始めてから、終るまでの間に足掛三年経って居る。其故、擱筆当時に見てさえも、最初の部分は、旧作の感があった。其後、全体を一纏めにする為にひどく時間をかけたし、印刷にかかってからも手間どり、今は事実上旧作になった。然し、この作品は自分の生活と密接な関係のあったものだし、作の上に年輪のように発育の痕跡が現れて居る点、自分は愛を感じて居る。
昭和二年十一月二十三日
底本:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社
1981(昭和56)年5月30日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第2版第1刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房
1953(昭和28)年1月発行
初出:「伸子」改造社
1928(昭和3)年3月発行
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2004年2月15日作成
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