私の愛読書
宮本百合子



 愛読という言葉の普通の使いかたとは違うけれども、非常に感銘をもってよみ、人類の歴史の精髄を学んだ二つの本をあげます。

 エンゲルス著「家族・私有財産及国家の発生」

 同     「空想から科学へ」

 前者は、題名がこの卓抜で美しい社会の歴史の内容を語っております。後者は、人間社会に、何故貧富の差が生じたか。その社会的な不幸をなくしようとして、優れた人々がどんなに努力して来たか。そして、この人間らしい努力は、だんだん空想的な方法から科学的な理解と方法とを発見して来て、今日、私どもの将来に幸福建設の可能を示すものとなって来た歴史の、不抜な歩みを物語っている書物です。

〔一九四六年五月〕

底本:「宮本百合子全集 第十七巻」新日本出版社

   1981(昭和56)年320日初版発行

   1986(昭和61)年320日第4刷発行

底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房

   1953(昭和28)年1月発行

初出:「サンデー毎日」

   1946(昭和21)年55日号

入力:柴田卓治

校正:磐余彦

2003年915日作成

青空文庫作成ファイル:

このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。