見ない写真へ
宮本百合子



 どんな写真がとれただろうかしら。まだ見ていない。それなのに、その写真に添える文章を書くというのは何だか変である。

 きっと濡縁がうつっていることだろう。濡縁のある庭というと特別な趣でもありそうだが、ここに繁茂しているのは八ツ手と青木である。窪川鶴次郎さんが、うまく樹を植え込んで上げるよと自信ありげに約束してくれたが、実現しないうちに梅雨も上ってしまいそうだ。

〔一九三七年八月〕

底本:「宮本百合子全集 第十七巻」新日本出版社

   1981(昭和56)年320日初版発行

   1986(昭和61)年320日第4刷発行

底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房

   1953(昭和28)年1月発行

初出:「文芸」

   1937(昭和12)年8月号

入力:柴田卓治

校正:磐余彦

2003年915日作成

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