初めて蓄音器を聞いた時とすきなレコオド
宮本百合子



一、私が生れて始めて蓄音器と云うものを見聞いたのは、もう十四五年前、父が英国から土産に買って来たものでした。大きな銀色の朝顔型のラッパ、耳を澄ますと、スースー、スースーと云う針の音。小さい弟達と三人で、熱心にラッパを見つめ、今考えれば、さほど芸術的でもなかったらしい沢山の唄をききました。

二、パストオラル・シムフォニー。オールドリフレーン。フィフス・シムフォニー。概してピアノや絃楽、交響楽を好んでききます。

〔一九二二年六月〕

底本:「宮本百合子全集 第十七巻」新日本出版社

   1981(昭和56)年320日初版発行

   1986(昭和61)年320日第4刷発行

初出:「新家庭」

   1922(大正11)年6月号

※「1初めて蓄音器を聞いた時、2わたしのすきなレコオド」は、との問いへの答え。

※底本の「解題」(大森寿恵子)は、この作品名を「仮題」としています。

入力:柴田卓治

校正:磐余彦

2003年915日作成

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