二つの態度
宮本百合子



 心中の道行で、あっと云わせたい心持が、いつも毎も定った物許りで詰らない、一つ此でも遣って見よう、と云う場合と、其物語に共鳴し人生に非常に価値ある事件として、見る者を驚歎させようと思った場合とは、心の態度に於て、大きな差があると思います。けれども、新しい選択を始めた時、何故曾根崎心中に手がついたかを考える時、其は、現今の、女高師の全教師生徒の上にかかっている、本質的に最も重大な問題だと思います。

〔一九二一年三月〕

底本:「宮本百合子全集 第十七巻」新日本出版社

   1981(昭和56)年320日初版発行

   1986(昭和61)年320日第4刷発行

底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房

   1953(昭和28)年1月発行

初出:「婦人公論」

   1921(大正10)年3月号

入力:柴田卓治

校正:磐余彦

2003年915日作成

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