東大での話の原稿
一九五〇・十二月八日
宮本百合子



○一昨年十二月二十五日 新日本文学主催の文学者のファシズム反対講演会

東條 処刑

A級戦犯 釈放「安部源基」 1931年 満州侵略がはじまったころ、大泉、小畑をつかっていた男。

児玉よしを 台湾への□

二、その後 こんにちまで

一九五〇年は六月を境として 日本は重大にかわった

最後の十二月に 朝鮮戦線で 原爆を使用するかどうか。

〔欄外に〕

十二月一日から四日まで世界は、深刻な緊張におかれた、使用ないときまったことは、戦争技術上の問題もあろう。

だが、その技術に立ってつかわないことを世界がアッピールでしたのは〔以下数行欠〕

三、平和のためのたたかいは全く必要になって来た。だが

石川達三、風にそよぐ葦(四四四回)〔以下数行欠〕

〔欄外に〕

一方に追放解除の精神というものがある。レッドパージで全国の学生がたたかっていた十月 一万九百人の戦争協力者が解除された。

○十一月号の「人間」 座談会

 「笑いと喜劇と現代風俗と」

       岩田豊雄「海軍」

  獅子文六──このひとは「自由学校」┐

  辰野隆              ├

  福田恒存             ┘


福田恒存  諷刺、喜劇はジャーナリズムでも要求されているし 読者の要望もある。江戸時代の諷刺、喜劇はアブソリューティズムがあって、それに対する民衆の反撥があった。しかし、

「そういう要求から ほんとの喜劇は出来ないのではないか」

現代風俗の喜劇性は、どこに喜劇を感じるのか、そこが問題だと思う」

〔欄外に〕

エリカマンのペッパーミル(胡椒小舎)のフーシは疑問とされているわけです


獅子文六  そして、アメリカ女優に接吻をおそわる日本人は おかしい


辰野  悲劇と喜劇との境は きわどいもので。アメリカは朝鮮でも 無理しないで戦っている。ガダルカナルの時でも 飛行機は足りない、兵糧は足りない、兵隊は足りない。乞食の戦争。

「近代戦争からみると、日本は喜劇をやっていたようなものだ。そしてキ劇の犠牲になるようなことは 馬鹿馬鹿しい悲劇だったという気がしますね」

〔欄外に〕

乞食の戦争は わたしにとって一つも喜劇ではなかった。


獅子文六 「きけわだつみのこえ」なんかも 初め読んだときには感動をうけたけれども、やたらに あっちこっちでも騒がれて 映画にまでなって来ると、今度は「きけわだつみのこえ」が喜劇的になって来るのだ。どうも いまの日本というところは そういうところではないかと思う。

〔欄外に〕

わたしには どうして きけわだつみが喜劇になるのかわからない。それは獅子文六という方は喜劇を経験したでしょう

 〔以下四枚分欠〕


 きのうの読売に

各地人権擁護委員会に訴えられた人権蹂躙事件の五〇パーセントは警官の職権濫用であった。


 きょうの毎日に

 去年、五〇パーセントであった

廿五年八〇パーセントとある。

これは、権力そのものが人権蹂躙を許している幅のひろがりである。

追放を考えても すべて 人権蹂躙、


読売は 地方刑罰条令が「国会を通らずに地方自治体できめて、それをムヤミにつくることを非難している。

一、今案条例

一、売春婦取しまり条例

    一般の婦人のこまること、

 これはどこまでゆくか。


 毎日は云っている

「おそらく世界の文明国と云われる国々では、もう政治や思想ないしは行動についての人権の擁護は 当然の事実」であろうし そういう基礎的な人権は守られ、生命擁護もされているだろう

それにひきかえ日本では

「憲法にいう 人権さえみとめられていない



 「前期的 状態である」


したがって、基本的人権の最も基本的なところ 生命の安全に対する われわれ人権を守ること戦争をことわることこそ

日本の人民として

人権を擁護する第一歩だ。


大学が文化、科学に役立った人の像を立てる──だが そのもとになる人間の命を

記念像を建てさせよ。

〔欄外に〕

戦没学生記念像は 東大におくことをことわられた。

 一部過激学生の 反戦平和運動に利用されるからと云って。


  内田祥三

底本:「宮本百合子全集 第三十巻」新日本出版社

   1986(昭和61)年320日初版発行

初出:「宮本百合子全集 第三十巻」新日本出版社

   1986(昭和61)年320日初版発行

※複数行にかかる小括弧、中括弧等には、けい線素片をあてました。

入力:柴田卓治

校正:土屋隆

2007年1130日作成

青空文庫作成ファイル:

このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。