「女人芸術」か「女人大衆」かの批判について
宮本百合子



「女人芸術」という名をかえることには大いに賛成です。しかし、「女人大衆」というのは、どうでしょうか。「女人」という字は、もう数年前、日本でブルジョア女性解放運動が盛んだった時分、「女も人なり」という意味で新鮮さが感じられた言葉だったろうと思います。

 けれども、現代のわれわれ、及び、これからこの雑誌をよむ人が「女人」という字に新しい力を感じるかと云うと、どうも逆らしく思う。「婦人大衆」としたらどうでしょう。粉飾なくていいではありませんか。「婦人」という字のわからない女はない。だが「女人」という文字をこのむ女には、われわれが清算しようと努力する過去の階級的遺物がきっとある。題を、スッパリ分りやすくすることによって、先ず雑誌の啓蒙的立場を明かにしようではありませんか。

〔一九三一年五月〕

底本:「宮本百合子全集 第三十巻」新日本出版社

   1986(昭和61)年320日初版発行

初出:「女人芸術」

   1931(昭和6)年5月号

入力:柴田卓治

校正:土屋隆

2007年1130日作成

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