寡婦の除夜
内村鑑三



つききよし、ほししろし、

しもふかし、よるさむし、

いへまづし、ともすくなし、

としつきひとかへらず、


おもひはし西にしうみ

なんだこほ威海湾ゐかいわん

みなみしま船出ふなでせし

こひしき人のあとゆかし


人にははる晴衣はれごろも

軍功いくさいさほ祝酒いはひざけ

我にはりの侘住わびずまひ

独り手向たむく閼伽あかみづ


われむなしふしてひと

おとろへてくにさか

てい冥土めいどつまつく

せつ戦後せんごくにまつたふす


つききよし、ほししろし、

しもふかし、よるさむし、

いへまづし、ともすくなし、

としきてひとかへらず。

底本:「内村鑑三全集3 1894-1896」岩波書店

   1982(昭和57)年1220日発行

底本の親本:「福音新報」78号、署名(内村鑑三)

   1896(明治29)年1225日発行

※「月清つきゝよし」「星白ほしゝろし」(底本p.273-1)を「つききよし」「ほししろし」にあらためました。

入力:ゆうき

校正:ちはる

2000年112日公開

2005年926日修正

青空文庫作成ファイル:

このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。