詩論 中原中也 Guide 扉 本文 目 次 詩論 Ĺarţ mes enfentş d'être en soi-meme! Paul Verlaine  芸術とは、喩へば金鉱発掘の如きものだ。金鉱を発掘する人は、親や妻子より遠く、山中に分け入るのだ。そのやうに、芸術とは、自分自身に忠実であることだ。  何を描くべきか?──描くべき何物もない! 芸術とは、自分自身の魂に浸ることいかに誠実にして深いかにあるのだ。即ち自分自身であるための誠実が自らなる基準となつて、折にふれて歌ひたくなるものの謂である!  自分自身であるといふことは、嘘をつかないことであり、自分自身であることは意志的であることである。  そして人が、自分自身であること、徒らに迎合的でないことではないか? かの造型性とは!  智識でも慈善事業でも其の他何物でもない、断じてない!  芸術とは、自我を愛することの、誠実であることの、褒賞である! 〝Ĺarţ mes enfentş d'être en soi-meme!〟 (生きるとは、自我を愛することである!) 底本:「新編中原中也全集 第四巻 評論・小説」角川書店    2003(平成15)年11月25日初版発行 ※底本のテキストは、著者自筆稿によります。 ※()内の編者によるルビは省略しました。 ※底本巻末の編者による語注は省略しました。 入力:村松洋一 校正:noriko saito 2015年9月1日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。