巡禮紀行 萩原朔太郎 Guide 扉 本文 目 次 巡禮紀行 きびしく凍りて、 指ちぎれむとすれども、 杖は絶頂にするどく光る、 七重の氷雪、 山路ふかみ、 わがともがらは一列に、 いためる心山峽たどる。 しだいに四方を眺むれば、 遠き地平を超え、 黒き眞冬を超えて叫びしんりつす、 ああ聖地靈感の狼ら、 かなしみ切齒なし、 にくしんを研ぎてもとむるものを、 息絶えんとしてかつはしる。 疾走れるものを見るなかれ、 いまともがらは一列に、 手に手に銀の鈴ふりて、 雪ふる空に鳥を薫じ、 涙ぐましき夕餐とはなる。 ─一九一四、一〇─ 底本:「萩原朔太郎全集 第三卷」筑摩書房    1977(昭和52)年5月30日初版第1刷発行    1986(昭和62)年12月10日補訂版第1刷発行 入力:kompass 校正:小林繁雄 2011年6月25日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。