磨かれたる金屬の手 萩原朔太郎 Guide 扉 本文 目 次 磨かれたる金屬の手 手はえれき、 手はぷらちな、 手はらうまちずむのいたみ、 手は樹心に光り、 魚に光り、 墓石に光り、 手はあきらかに光る、 ゆくところ、 すでに肢體をはなれ、 炎炎灼熱し狂氣し、 指ひらき啓示さるるところの、 手は宙宇にありて光る、 光る金屬の我れの手くび、 するどく磨かれ、 われの瞳をめしひ、 われの肉をやぶり、 われの骨をきずつくにより、 恐るべし恐るべし、 手は白き疾患のらぢうむ、 ゆびいたみ烈しくなり、 われひそかに針をのむ。 底本:「萩原朔太郎全集 第三卷」筑摩書房    1977(昭和52)年5月30日初版第1刷発行    1986(昭和62)年12月10日補訂版第1刷発行 入力:kompass 校正:小林繁雄 2011年6月25日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。